『xxx KISS KISS KISS』 矢崎仁司監督 インタビュー

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  • 2015.09.08

『xxx KISS KISS KISS』 矢崎仁司監督 インタビュー

国際的に高い評価を得た『三月のライオン』(92)をはじめ、寡作ながら映画ファンに語り継がれる作品を撮り続け、本格的に商業映画へ進出以降も日常の濃淡を細やかな筆致で描いてきた矢崎仁司監督。来年には小池真理子原作の『無伴奏』の公開も控える中、新作『xxx KISS KISS KISS』が9月5日より新宿K’s cinemaにて公開される。新鋭脚本家集団「チュープロ」の5人の脚本家との共同作業により書き上げられた5つの掌編を束ねた本作について、矢崎監督に話を聞いた。

(取材・文: 川端哲生)

 

 

趙方豪さんが亡くなられる前に「光を大事にするのもいいが、人を大切にしろ」みたいに遺言のように言われて。(矢崎)

 

———2006年の『ストロベリーショートケイクス』を境いに、それまでの映画製作のスタンスから変化されたような印象がありますが、何が契機になったんですか?

 

矢崎: ずっと自主制作でインディーズ映画をやってきて、ロンドンで『花を摘む少女 虫を殺す少女』を撮って帰国した頃、友人の長崎俊一監督に「一度、他の人の脚本でやるべきだ」みたいに言われたりもして、ちょうど同時期に魚喃キリコさんとの出会いがあって、原作がとても面白かったんです。タイミングが良かった。『ストロベリーショートケイクス』に関しては、原作をアップリンクの浅井氏に見せたら、次の日に「泣いた、映画にしよう」って電話があって。あの映画を境にプロとして商業映画デビューした感覚があるんです。それまでは1ヶ月以内で映画を撮るなんてことが頭の中にまったく無くて、ひとつの作品に最低一年くらい掛けて撮影していたので。それは光と場所を一番に考えていたからなんですけど、趙方豪さん(『三月のライオン』主演)が亡くなられる前に「光を大事にするのもいいが、人を大切にしろ」みたいに遺言のように言われて。その言葉が大きかったかもしれないですね。

 

———なるほど。それでも、前々作の『1+1=1 1』は、商業映画のフォーマットの作品ではなかったですね。

 

矢崎: そうですね。本来、僕はワークショップの講師みたいなことは好きではなくて、ニコラス・レイも「映画は教えられない」って言ってるし、断っていたんですけど、映画24区の社長の三谷氏に「1日だけならどう?」と言われて、それならということでワークショップをやったんです。そのなりゆきで「その俳優たちで映画を撮ってみないか」みたいな話になったんです。

 

———それは、やってみたら意外と面白かったということなんですか?

 

矢崎: いや、ワークショップ自体は苦手ですね。撮る目的でやるのであれば面白いんですけど。一般公募もしていたシナリオも、割とこじんまりとした話が多くて、それならゼロから書きたいということになって、映画24区のライターから1人選んで、武田知愛さんと一緒に作ったんです。あれは久しぶりの完全自主制作だったので、『1+1=1 1』をやったことが、『xxx KISS KISS KISS』に繋がってるなとは思います。

 

1

『儀式』

 

———来年公開の『無伴奏』が控える中で、5人の脚本家によるこの映画掌編集『×××』の成り立ちはどのようなものだったんですか?

 

矢崎: 「チュープロ」という脚本家集団の仲間達が、いくらシナリオを書いても映画にならないという思いを抱えてたみたいで、僕のところに話を持ちかけてきたのが最初でした。だけど、僕が監督をするならこのままでは撮れないということになって。これはシナリオとしての良し悪しの問題ではなくて、彼女達が書いてきたシナリオをうまく撮れる監督もいるかもしれないけど、監督に僕を選んだ時点で僕が撮るわけだから、その脚本の直しのやり取りを1年くらい掛けてやりましたね。

 

———撮ることを前提とした現場台本に直していったわけですね。それにしても、矢崎監督にそういう打診をすること自体が大胆ですよね。

 

矢崎: 「チュープロ」のリーダー的な存在が『1+1=1 1』の脚本を一緒に書いた武田さんだったことも大きいですね。いい関係を築けていたので。元々の企画書の段階のものは、どちらかと言うとテレビ向きのシナリオだったんです。何度読んでも漫画のような映像しか浮かんでこなくて、それを生の人間でやっていくにはこうした方がいいという話をしました。予算的な話はあまり言いたくないけど、シナリオに加えて製作費を持ってきたんですけど、それではとても撮れないっていうような予算で(笑)じゃあ足りない分は何とか集めましょうということになって。最終的には協賛してくれる方達も現れたので食費と交通費ぐらいの製作資金が集まったわけです。

 

———そういう条件下で、この企画のどこに魅力を感じましたか?

 

矢崎: 熱意ですね。月に1回のシナリオのやり取りでも彼女達はめげずに直してきましたから。低予算でやるとしたら、一緒に映画を作ってきた仲間でしか出来ないと思ったので、スタッフも石井勲さん(撮影)、大坂さん(照明)、目見田さん(編集)、田中さん(音楽)にお願いをして。脚本に共感した俳優さんたちも自前の衣装で駆け付けてくれて、クランクイン出来ました。

 

———住まいのある山梨でのオールロケだったですよね?

 

矢崎: 基本そうでしたね。去年の6月頭くらいまでは悩んでたんですけど、山梨にある自分の事務所に雑魚寝すれば何とか撮れるかもしれないなって(笑)とにかく動こう、止められるか俺たちをって感じで。

 

———脚本家の方々は現場にもいらしてたんですか?

 

矢崎: 撮影中はチュープロのメンバーがカチンコを叩いたり、朝昼晩とご飯を作ってくれたりしました。あくまで脚本家なので、現場に入るのは初めてで、出来ることは、ご飯を作ることくらいだったので(笑)俳優さん達には評判良かったですけどね。

 

———役者の方々がサンドイッチとおにぎりについて、口を揃えてコメントされていましたね。「インディーズ映画ならではの〜」みたいな言葉もありましたけど、そういうわけではないですよね?(笑)

 

矢崎: そうですね(笑)インディーズ映画の現場でも特殊だったと思います。運転免許を誰も持っていないので、リヤカーでおにぎりを運んで来たりしてくれましたね。

 

活字だったものが、生身の人間として動く瞬間ってすごく感動するので、それをモニターなんかで観てるのはもったいないんです。(矢崎)

 

———映画のラッシュをご覧になった時に、今までの自分の映画にはない画ばかりで、他の監督の作品を観ているように感じたそうですね。

 

矢崎: 基本的に現場で僕はモニターを観ないので、石井さんがどんな風に切り取ってるのは知らなくて、楽しみにしているんですよ。寄りを別に撮っておこうみたいな指示くらいはしますけど、僕は俳優の芝居を見ていて、カットは現場で考えたりもしますけど、撮ったものを現場では絶対に観ないんです。それはどの作品の現場でもそうなんですけど。

 

———ポスプロの段になって、編集室に入るまでは観ないわけですか?

 

矢崎: そうですね。編集をする前のラッシュまで観ないです。それがすごく楽しみなんです。要するにもう一本、別の映画を作るつもりでいつもいるので。撮影で1本映画が終わって、編集からは違う映画に向かう気持ちなんです。編集の時にもシナリオを持たないで、好きな画だけで物語をもう一度作る感覚で。

 

———一度リセットして、再構築するわけですね。

 

矢崎: シナリオ通りに編集していくと、説明的というか、このカットが必要だというのが見えてきたりするけど、僕は全カットを好きな画だけで映画を作りたいんです。だから逆にシナリオは邪魔になる。現場での僕の仕事は俳優の芝居を見ることで、しかもカメラの横で見ているので、それだけで楽しい。元々はフィルム撮影だったから、それが大きいんですけどね。観られるわけがなかったから。モニターを観てると騙されるんですけど、ふと俳優さん達だけを見ると、感情の距離が間違っていると解る。いわゆる現場の空気というのはモニターには映らないものだと思うので。今まで活字だったものが、生身の人間として動く瞬間ってすごく感動するので、それをモニターなんかで観てるのはもったいないんです。

 

2

『背後の虚無』

 

———話が逸れるかもしれないですが、フィルムを知らないデジタル世代には、そういう感覚が元々無い監督もきっといますよね。

 

矢崎: その人のやり方でいいと基本は思うんですけど、映画が小さくなる気がしますね。枠の中でしかものを見ないと。枠の外で芝居を見ることが大事だと僕は思いますね。

 

———今回、ラッシュで観たことのない画と感じたのは何故だったんでしょうか?

 

矢崎: 別々に書かれたシナリオを1本ずつ撮っていくということで、本当に1人の監督が撮ったの?って思われるような映画にしたいという気持ちはあったんですよ。それがきっと作用してるんだろうなと思うんですよね。普段だったら自分はしないことをやってみたいというか、「これが矢崎仁司?」って裏切りをしてみたかったんです。例えば、フェリーニみたいにしてやろうとか、ここは小津調でやってみようとか、今まで自分に表現のボールを投げてくれた監督達にボールを投げ返してみようかなって思いがあったんですよね。

 

———今、仰られたような「このシーンはあの映画のあそこっぽくしたいんだよね」という演出に驚いたという役者の方からの言葉もあったそうですが、こういう演出は今回の現場に限らないんですか?

 

矢崎: 僕の映画を愛してくれた観客を裏切ろうという気持ちはいつもあるんですよ。一番がっかりするのは「やっぱり矢崎さんだね」って言われることで、むしろ「今回の作品は嫌い」って言われたいと思ったりするんです。

 

———先人の模倣への抵抗感みたいなものがなく、明け透けなのも面白いと思うんです。

 

矢崎: そう思われたら思われたで面白いなって。「ここは小津カットでいこうか」とか「ここは成瀬っぽく目線を大事にしよう」とか、撮影の石井さんに言ったりしてましたね(笑)新作の『無伴奏』でもそんな会話をしながら撮ってましたから。ただ、この映画に関して1つあるのは、いつもだと絵画とかを一緒に観てルックを決めるんですよ。フェルメールみたいな光でいきたいとか、画集をみたりしながら。でも今回は5作品あるので、ルックを決めずに、全部違う感じにしようって思ったんです。

 

そもそもイメージに近づける作業が好きじゃなくて、僕の頭の中で考えたくらいのことを吹っ飛ばしてくれたら嬉しいと思うので。(矢崎)

 

———作品個々について伺いたいんですが、最初の『儀式』についてです。この作品の脚本を書いた武田知愛さんの印象は?

 

矢崎: とにかくタフで、めげない。書くものも面白いなとは思いましたけどね。直しについては、物語を優先している箇所をもっと人を描いてほしいというところがが中心でした。原作のある映画は、どうしても底辺に物語が流れているけど、折角、オリジナルなので、物語よりも生きている人が動くことによって物語になっていくものにしようって思いはありました。説明的だと分かりやすくはなるけど、分からないということが大事だと思うんですよ。

 

———「分からなさの重要さ」という考えは、保坂和志の小説に近いもの感じます。そういえば、保坂さんとは旧いお知り合いなんですよね?

 

矢崎: 大学の頃からの友達です。彼の書く小説は大好きで、いつか映画にしたいと思っています。

 

———矢崎監督が撮る「カンバセーションピース」とか観てみたいです。

 

矢崎: いいですね。彼の「書きあぐねている人のための小説入門」は勉強になるなって思うんですよね。あれこそ映画を志してる人が読むべき本だと思います。僕の机にはいつもあの本が置いてあります。『儀式』については、自分では絶対書かないシナリオだし、挑んでやろうというものを投げられた気がしたんですよね。撮影中、武田さんの書かれた本と映画がズレていって、僕はラストシーンに入れなくなったんですよ。部屋に入って仲直りする場面で、そこまで撮ってきた人物と別になってしまって撮れなくなってしまったんです。それで、俳優の2人(松本若菜、加藤良輔)には撮れないと正直に言ったんです。ごめん、撮れない。どうしようって。そしたら2人に呼ばれて、「こんな風にどうでしょうか?」ってアイデアをくれて、とりあえずそれでやってみようとなったんです。

 

———面白い展開ですね。どんなアイデアだったんですか?

 

矢崎: シナリオでは本当は携帯電話で延々話していたんですけど、2人が「家の中に入ってみませんか?」って。それでリハーサルをしたらいけそうだなってなって、じゃあ、中で弁当を食べたりしようってなっていったんです。あんな風に俳優さんに助けられたのは幸せだし、みんなが意見を言いやすい現場をいつも心がけてはいるんですが、『無伴奏』でも俳優さんはじめみんなに助けられましたね。まぁ、頼りない監督ですよ(笑)

 

———松本若菜さんは立ち姿の佇まいも良くて印象に残ってます。

 

矢崎: 加藤さん、松本さんは出会えて良かったなって思いますね。若菜ちゃんはこれがきっかけで『無伴奏』の池松壮亮さんのお姉さん役で出演してもらいました。

 

3

『さよならのはじめかた』

 

———続いて『背後の虚無』について。朝西真砂さんの脚本ですが、男同士の話で、巻き煙草が印象的です。

 

矢崎: 柿本さんには、三か月くらい前から、巻き煙草の練習をお願いしましたね。驚いたのは柿本さんは、この映画のためにオートバイの免許も取ってきてくれたんですよ。

 

———『太陽の坐る場所』に続いての柿本光太郎さんはいかがでした?

 

矢崎: すごく成長して、『太陽の坐る場所』から一段と良くなったと思います。いやー、本当にいい顔してくれたと。

 

———柿本さんは、「まず自分の思うように演じさせてくれて、そこから調整をしてくれる演出には安心感を持てます」と仰ってますね。

 

矢崎: たぶん僕は、演技よりもその人を撮りたいんですよ。「この芝居だったら他にいい俳優がいる」みたいな考えには興味がないんです。その人に出会ってその人とやるって決めた時点からその人を撮りたいと思うので。役とその人がズレたところで初めてOKが出るような感覚なんです。

 

———素晴らしい言葉ですね。そうすると当て書きもあまりしませんか?

 

矢崎: あまりしないですね。俳優をイメージしちゃうとスケジュールの関係で配役出来なかったりすると、キャストに失礼だと思うし、そもそもイメージに近づける作業が好きじゃなくて、僕の頭の中で考えたくらいのことを吹っ飛ばしてくれたら嬉しいと思うので。

 

———分かりました。次は『さよならのはじめかた』ですが、これは死生観を描いた話ですが、脚本家の中森桃子さんはいかがでしたか?

 

矢崎: 頑固でしたね(笑)最近知ったんですが、どうやら監督志望みたいで、それなら頑固なはずだって理解しましたね。観客にどうにでも取れる作品になっているけど、彼女としては、死への準備をもう少しきちんと描きたかったのかもしれないですね。申し訳ないけど、撮るのは僕なのでと最終的に納得してもらいました。「目には残るけど、自分は汚いものを見てるからプラマイゼロだ」っていう太宰治の「雪の夜の話」を混ぜるとカメラの眼が活きるんじゃないかなって思ったんですよね。

 

———老年夫婦を描かれることってこれまでには無かったと思いますが。

 

矢崎: そうですね。繰り返す日常っていうのをちゃんと撮ってみたいってのはありました。中丸新将さんも塚田美津代さんも素晴らしかったですが、涼香さんは内面の純粋さがそのまま出てるような個性がありましたね。日常ではあまり口にしない台詞でも、彼女なら言える、いや、彼女しか言えないって。

 

———監督と撮影の石井さんで作り上げたある風景のシーンが美しくて今も心に焼き付いていると塚田さんがコメントされてます。

 

矢崎: ラストカットの家庭菜園ですね。シナリオの段階では、妻の綾子が庭にいたんですよ。撮影中にも悩んで、決めかねて2パターン撮ったんです。優柔不断とも言えるんですけど(笑)悩むのが監督の仕事だと思ってるので、悩んでる時は仕事してると思ってくれと。さっき、小津カットといったのはこの作品で、年寄りの時間の流れ方と、そこに若い子が訪れた時にどうするかというのを石井さんと話したりしました。

 

真剣に遊ぶ感覚は久しぶりでしたね。あの当時、撮影所を持たない僕達は「街はセットだ」と思って撮影していたんです。(矢崎)

 

———続いて『いつかの果て果て』です。夜のシーンが多くて、不条理さのある話でした。

 

矢崎: シナリオは面白かったですね。ほぼ完成してるなとは思ったんですけど、ラストだけ違うってのがあって、五十嵐愛さんには、毎月それだけを言っていました。季節が変わって冬のシーンとかも本当はあったんですけど、実は、台風11号が来てしまって流れちゃったんですよ。で、残り3日で撮るために仕切り直して、エキストラを集めてリハまでやったシーンも切ってしまったんですよね。でも台風が来たのはラッキーだったのはあるかもしれないです。私もスタッフもかなりバテていたので、撮りきれなかったかもしれなかったので。

 

———それについて、五十嵐さんとはどのような会話がありましたか?

 

矢崎: 僕としては申し訳なかったですけど、画にすることを一義に考えようよということで、デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』の交通事故のシーンを見た時思いついたんですけど。死んでることに気付かないっていう映画を作りたいって思っていたんで、そのアイデアをここに持ってこようってことで、台風で書き直しを余儀なくされた段階で、相談して書き変えてもらいましたね。

 

———建設的なやり取りがあったわけですね。

 

矢崎: あとは現場で、ナイターで川原で照明をどうするってことになった時に懐中電灯を使う娼婦の話に発展していったんです。最初にシナリオ読んだ時からフェリーニっぽいなって思っていたので、スタッフにはそう話してたんですけどね。夜を撮るという意味で挑んでみたいなって。無国籍なイタリア系の映画になってもいいかなって思ったんです。

 

4

『いつかの果て果て』

 

———現場都合ながら良い方向に発展していったんですね。面白いです。最後は『初恋』について。関係性がシンプルで比較的、共感を得やすい内容の作品でした。

 

矢崎: 川野直輝さんも吉田優華さんも、本当に出会えてよかったです。大倉(加津子)さんの書いてきたシナリオの大筋はいいと思ったんですけど、物語に走らないためには、部屋に入った時の2人のやり取りが大事なんだっていう話を伝えたんです。例えば、突然台所にいって塩を持ってくるのは不自然だから、塩が必要なもの(すいか)を食べることにしようって考え方ですね。そのためにすいかを買いにいくのを避けるために、そこですいか割りをしようって膨らんでいったんです。

 

———やはりディテールを大切にされるんですね。

 

矢崎: もう少し説明的なラストだったんですけど、最終的に「散歩」という言葉に大倉さんが到達できたことが良かったって思いますね。

 

———ありがとうございます。商業映画にない自主映画の良さは何だと思いますか?

 

矢崎: 真剣に遊ぶ感覚は久しぶりでしたね。あの当時、撮影所を持たない僕達は「街はセットだ」と思って撮影していたんです。電話ボックスの赤が駄目だったら白のテープを貼ったり、地下鉄の電気が消えてたらわざわざ取り替えて堂々と撮ってた時代があったんです。低予算でやっている以上、縛られないで、放たれたエネルギーでやりたいことをやろうっていう。手弁当で来て、俳優さんの衣装も自前でやっていたので。

 

———最後にこの映画を観て頂ける方に一言頂けますか?

 

矢崎: 自分が観てても思うんですけど、非常に分かりやすい映画が多くて、分からなくても何か引っ掛かるっていうのが昔はあったんですけど、理解しようとするのを止めて感じてくれっていうことを示していかないと、観客の皆さんが理解したことで映画を観たことになるとしたらそれは勿体ないと思うので、思い切り感じに来てくれたらいいなって思いますね。

 

———今の新しい世代の監督にも一言あれば。

 

矢崎: いずれ商業映画を撮るとなったら、長い映画を撮れなくなるから、長い映画を撮る事を薦めたいですね。映画が1時間半から2時間っていう枠を壊していいと思うんです。『親密さ』の濱口竜介監督とかすごいなって思いますね。あと、今の映画に失われているのは「大らかさ」だと思うんです。昔の『次郎長三国志』みたいな。最近では『水の声を聴く』、『ローリング』、『お盆の弟』にその大らかさを感じましたね。大らかな映画には憧れますし、次回作では挑みたいと思っています。

 

5

『初恋』

 

作品情報 『xxx KISS KISS KISS』

 

 

監督: 矢崎仁司
脚本: 武田知愛(『儀式』)、朝西真砂(『背後の虚無』)、中森桃子(『さよならのはじめかた』)、五十嵐愛(『いつかの果て果て』)、大倉加津子(『初恋』)
出演: 松本若菜、加藤良輔、林田麻里(『儀式』)、柿本光太郎、安居剣一郎、樋井明日香(『背後の虚無』)、中丸新将、塚田美津代、涼香(『さよならのはじめかた』)、荻野友里、草野康太、海音(『いつかの果て果て』)、川野直輝、吉田優華(『初恋』)

 

2015年9月5日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショー

 

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