『私たちのハァハァ』井上苑子 & 真山朔 インタビュー

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  • 2015.09.10

『私たちのハァハァ』井上苑子 & 真山朔 インタビュー

クリープハイプのライブのために自転車で北九州から東京を目指す4人の女子高生を描いたロードムービー『私たちのハァハァ』が9月12日よりテアトル新宿を皮切りに全国公開される。『スイートプールサイド』、『ワンダフルワールドエンド』など常に「今」に寄り添いながら映画という表現を更新する映画監督、松居大悟が手掛ける本作は、自撮りベースのドキュメンタリー形式から、SNS的な表現も取り込みながら、劇映画へ伸びていく全く新しい等身大の青春映画。

今回、撮影時、共に現役女子高生だったという主演4人のうち、今年7月にメジャーデビューを果たしたばかりのシンガーソングライターで、劇中では弾き語りも披露する一ノ瀬役を演じる井上苑子と、オーディションを経て選ばれ、熱量の高くないファンという難しい役どころのチエ役を好演している真山朔の2人に話を聞いた。

(撮影: 朝岡英輔 / 取材・文: 川端哲生)

 

 

顔合わせの時に苑子がミスiD受けてるのは公開されてなかったんですけど、私は知っていて、知らないふりして挨拶したんです。(真山)

 

———『私たちのハァハァ』観させて頂きました。今年…、何番目かの感動でした。

 

井上・真山: 1番じゃないんですか!?(笑)

 

———(笑) これは高校生4人の話ですけど、撮影中は全員が現役高校生だったんですよね?

 

井上・真山: はい!

 

———4人のうち、今回は一ノ瀬役の井上苑子さんと、チエ役の真山朔さんの取材なんですが、お互いの最初の印象は? 共通点で言うと、年度は違うけど、ミスiDのファイナリストだったりしますよね。

 

井上: はい。あと関西生まれです。(真山)朔が和歌山で、私が兵庫です。

 

真山: 映画の顔合わせの時に此処(スペースシャワーTV本社)で初めて会ったんです。その時はまだ(井上)苑子がミスiD受けてるのは公開されてなかったんですけど、私は知っていて、知らないふりして挨拶したんです。「私、去年のミスiDってオーディション受けてたんです〜」って(笑)

 

井上: 私も自分は受けてないふりをして「そうなんですね〜」って(笑) その次の週くらいに発表になって、そこで初めてLINEで打ち明け合ったんです。

 

———お互い知ってたんですね(笑) キャストの仲がすごく良くて、絆が撮影後も続いている感じがあって。仲は最初から良かったんですか?

 

真山: 苑子は同じ関西出身なのもあって、気さくで喋りやすかったです。初めての映画の現場という緊張を解してくれる存在でした。

 

井上: 私は4人の中で1人だけ歳下だったので、最初は朔にも一応、敬語を使ってたんです(笑) でもいつのまに「朔は〜」みたいになってて(笑)

 

真山: 知らないうちに敬語もとれて、関西弁で「アホやん」って言われたりとか、とても歳下とは思えないくらい3人にツッコミを入れてくるみたいな感じになってて(笑)

 

井上: 朔は、こういうフワッとした雰囲気やから喋りやすいんですよ。でも本人も喋りますけどね。一緒に乗ってくれるんです。

 

8

 

———他の2人(大関れいか、三浦透子)とは?

 

井上: ほんまに友達みたいなんです。大関れいかとかはVineの動画のままで。あのままやんって思って。

 

———さっつんというキャラクター自体が大関れいかさんに近いですよね。文子役の三浦透子さんは唯一、演技経験も豊富でそのせいか、傍目の印象では落ち着いてる印象があります。

 

井上: そうですね。落ち着いてます。お姉さんです。何を話しても冷静に返してくれるんです。

 

真山: みんなでふざけてたら一緒にふざけてくれるんですけど、現場でスタートがかかったら役者さんで。他の3人が演技経験無いので、私とか特に素人同然の中、透子ちゃんが自然と引っ張ってくれました。

 

———三浦さん以外の3人の芝居も自然体で良かったですよ。

 

真山: 試写などで映画を観て下さった方達にもお芝居が自然って言われるんですけど、本当に大丈夫だったのかなって2人で話したりしてるんです。

 

井上: れいかはVineのプロなのもあるけど、性格がポジティヴなので、お芝居が良かったって言ってもらえると「私って意外と出来るじゃん」って考えられるんですけど、私達2人は結構ネガティヴで(笑)

 

———大関さん演じるさっつんが手持ちカメラを持ちながら、物語を引っ張る役ではあるけど、4人のキャラがそれぞれ立っていて、誰かが目立ち過ぎるというようなこともなくて。

 

真山: 本当にキャラクターのバランスはいいなって思います。

 

 

三浦透子は台詞をしっかり覚えてきたんです。私達もそれなりに覚えてきました。でも、大関れいかが全く覚えてこなかったんです! (井上)

 

———クリープハイプっていう実在のバンドを追いかけるファンの役ですけど、思い入れは元々ありましたか?

 

井上: クランクイン前はそれほどなかったんです。音楽雑誌を読むので、クリープハイプが人気があるのは知ってましたけど、何曲か聴いた事があるくらいで、特別な気持ちは正直無かったんです。でも、この映画のお話を頂いてから、もうずーっと聴くくらいのファンですね。

 

真山: 私は蒼井優さんが好きで、「憂、燦々」って曲が蒼井優さんが出演してるCMに使われていて、それで知ったんですけど、声が高くて特徴的で、尾崎世界観さんって男の方なんだって知った時は驚きでした。私も本当に代表曲しか分からなかったんです。でも私の演じるチエも4人の中でクリープハイプのことを一番知らない役だったので、ちょうどよかったんです。撮影中はずっと曲を流してたので、どんどんどんどん好きになっていって。

 

井上: ロケバス入った瞬間に、誰かが携帯で曲を流して、熱唱みたいな。

 

真山: 誰かがワンフレーズ歌い出したら、一斉にそれに乗っかる感じで。

 

井上: しかも大関は歌詞が適当なんですよ。歌詞間違ってるのにそのままずっと唄ってるから、しっかりしろって!(笑)

 

———井上さんはミュージシャンでもあるから、影響を受けたりしました?

 

井上: バンド形態でライブをすることもあるので、クリープハイプのステージを見させて頂くと勉強になるので、そういう影響はありました。

 

———真山さんは大森靖子さんのファンなんですよね。松居監督の『ワンダフルワールドエンド』はご覧になってました?

 

真山: 観ました。大森靖子さんの大ファンです。でも松居監督の『スイートプールサイド』がすごく好きで、それを監督されてる印象が強かったです。

 

3

 

———松居監督に実際に会ってみて、いかがでしたか?

 

真山: 若い!

 

井上: 若い!私は『アフロ田中』で知っていて、『アフロ田中』をアフロの人が撮ってるイメージでした(笑) 会う前は若さより髪のイメージが強くて。

 

真山: 映画監督さんって、私の中では40歳ぐらいの印象があって、松居監督はそれに比べてすごく若くて。こんなに若くしてすごいなって。

 

井上: 最初お会いした時とか、今でもそうですけど、ごもごもされるんですよ。それが好印象でした(笑)

 

———現場ではどんな演出をされましたか?

 

真山: 割と自由でした。優しかったですね。

 

井上: 優しかったです。やり直すようなところも、それが良くないっていうことは絶対に言わないし、これでやってみようみたいに提案してくれる感じなんです。

 

———映画自体が物語の起伏で見せるというよりは、ありのままを写していくドキュメンタリータッチなところもある。事前に特別な要望はありましたか?

 

井上: 監督は台詞をあんまり覚えてこなくていいって言ったんですよ。台本に台詞はちゃんとあって、三浦透子はそれをしっかり覚えてきたんです。私達もそれなりに覚えてきました。でも、大関れいかがまったく覚えてこなかったんです!(笑)

 

真山: 撮影前日なのにね(笑)

 

井上: 前日にリハーサルしようってなった時に、「え?台本?」とか言ってるんですよ(笑)

 

真山: 覚えてこなくていいって言われたから素直に覚えてこないで、「覚えてこなくていいって言ったじゃないですか!」とか言ってて(笑)

 

井上: そこから透子ちゃんが引っ張ってくれて、4人でホテルの部屋で集まって、次の日に撮るシーンをひたすら練習して。

 

———作り込んだ演技にならないように、覚えすぎないというような意図がきっとあったんですよね。

 

井上: そうです!そうです!

 

真山: 台詞に縛られるなっていう意味で言ったんだと思うんですけど、素直なれいかちゃんがね。

 

井上: 「覚えなくていいんだって、イエイ!」みたいな感じだったらしいです(笑)

 

2

 

———実際に手持ちカメラの映像は大関さんが撮ったものなんですよね?

 

井上: あれは大関が撮ってますね。あとは朔ちゃんも撮ってたり。

 

真山: あとは、iPhoneのムービーを使って撮ったものを後から静止画にして、写真を撮ってる風にしてるところもあると思います。

 

———その間にカメラマンの方(塩谷大樹)はその模様を撮影してるんですよね?

 

井上: 撮ってる私達を撮っているところもあったし、私達がビデオカメラを回してるだけの時もありました。

 

———なるほど。そういう撮影方法に戸惑いはなかったですか。

 

井上: やりにくいとかは全然なかったです。

 

真山: そういうものだと思ってしまってました。

 

———初めての映画の現場だから、むしろそれが当たり前だったわけだ。

 

井上: そうなんです。何がNGなのかもあまり分からなくて。台詞間違いはそれほどなくて、松居監督の中でのニュアンスの違いには拘ってました。

 

真山: そうだね。「ウエーイ」のトーンが違うみたいなのはあった。

 

井上: 文子が自転車を倒しちゃうシーンで、私達が「ウエーイ」って言わなきゃいけなかったんですけど、そのニュアンスが分からなくて、そこの言い方にすごく拘ってましたね。

 

真山: そう、そこ拘ってたよね。唯一、そこは何回も撮り直しました。「ウエーイ」のトーンを何回も、何回も。そこが一番拘ってましたね。

 

———全編通して、松居監督が一番拘ったのが「ウエーイ」のトーンなんですか?

 

井上・真山: (笑)

 

———そんなことはないですよね(笑)

 

真山: でも一番やり直したのはそこでしたね(笑)

 

井上: もちろんそこ以外も、松居監督のイメージしてたものはあったので、私達はそれに近づけようとしたし、でも私達が作り出すものもうまく活かして使って下さいました。

 

 

私は池松さんとの台詞が無かったんですよ。そのおかげでそれほど緊張してなくて。その分、みんなの緊張が伝わってきました。(真山)

 

———真山さんで言うと、冒頭近くで妹との部屋でのやり取りが面白いですけど、あれも脚本通りですか。

 

真山: あれも全部台詞でした。全部決まってて、その通りやりました。

 

———ドキュメント的にフィクションを立ち上げていくこの映画の方向性を分かりやすく示してくれているなって。井上さんは、ギターで弾き語りをするシーンもありまますね。

 

井上: クリープハイプのCDを渡されて、「この中から1曲カバーして欲しいから考えておいて」と言われて、そこから「左耳」という曲を選んで、1回ちょろっとだけ松居監督の前で歌ってみて、それだけで決まったんです。本当にちょろっとしかやってなくて。リハで1回やったら「いいね!」みたいになって(笑)

 

———カメラも引きで捉えていて、あのシーンは青春感があります。

 

真山: 語り合ってからの野宿ですからね。

 

井上: 原爆ドームの前で野宿するということが重く感じたし、歌う時もドキドキしました。あとは蝉がうるさくて大変でした。何度もカットになって。

 

真山: 街灯や照明さんのところに蝉が集まってくるから、その度に蝉を退治して。あと、4人の寄りを1人ずつ撮ったので、それもあってあのシーンで苑子は何回も歌いました。

 

6

 

———序盤で自転車を捨ててからヒッチハイクをしますが、車中のエピソードってありますか?

 

井上: あります!私達2人が荷台に乗ってるシーンなんですけど、寝といてと言われてたので寝てたんです。そしたら顔にカナブンが止まってきたんです。私、虫が世界一苦手なので、ウワー!ってなって、朔がそれを手で払うんですけど、それがそのまま使われてて(笑)

 

真山: 私もカメラが回ってないと思って、苑子がウワー!とか言い出したから、その虫を払ってあげたんです。使われないと思ってたんですけど。

 

井上: 最初の試写の時に、松居監督の隣に座って観てたんですけど、そのシーンが使われてるのみて、顔を見合わせました(笑) 何で?と思って。

 

真山: あれは一ノ瀬じゃなくて、井上苑子が虫を素直に嫌がるリアクションです。あと車のシーンだと、吉本のおふたり(佐藤太一郎、茜)が面白かったですね。

 

———関西弁のカップルですね。あそこは掛け合いが漫才みたいですよね。

 

井上: 台本はあったんですけど、アドリブも混ざってるんです。すごく面白くて。しかもあのシーン、実は文子がいないんですよ。三浦透子ちゃんが体調を崩してしまったんです。

 

真山: 松居監督が急遽、文子役になって、手持ちカメラを回してるんです。

 

———貴重な裏話ですね。あとはやはり池松さん演じるドライバーとのシーンですよね。

 

井上: そうですね!やっぱり池松さんですよね。

 

真山: 私は池松さんとの台詞が無かったんですよ。ほぼ座ってるだけだったので、そのおかげでそれほど緊張してなくて。その分、みんなの緊張が伝わってきました。井上苑子もですけど、特に大関れいかの緊張が伝わってきて。池松さんは、本物のプロの役者さんなので。

 

井上: ちゃんとしてるわ〜って、プロやわ〜って思いました。車を停めて自販機の前で話すところが一番恐かったんです。

 

———そういう役ですからね(笑) でもそれくらいに真に迫ってたという事ですね。

 

井上: 「はっ?」って言われて、すいません、もういいですって(笑) でもさすがやなって思いました。

 

 

チエは何で文子がこんなに怒ってるのか分からなくて、文子を心配するくらいの状態で受けて欲しいと松居監督に言われたんです。(真山)

 

———池松さんの登場で映画が締まる感じはありますね。でもやっぱり、この映画を傑作たらしめてると思うのが、4人が喧嘩をする夜のシーンなんです。4人のファン度が明確に表れていて。ファンでありつつプレイヤー志向の一ノ瀬、比較的ライトなファンのチエ、ガチファンの文子、フラットに4人を引率している感のあるさっつん。その関係性が明らかになっていて。

 

井上: そうですね。うん、うん、うん。

 

———特に、真山さん演じるチエと、三浦さん演じる文子の構図ですよね。

 

真山: そうですね。ライト対ガチの戦いですね。

 

———この映画はバンドのファンを描いた映画だと思うけど、きれいごとじゃない部分が映し出されていて、映画を象徴する名シーンですよね。

 

井上: 私は、チエと文子が喧嘩するところを見て、辛くなって、でも一ノ瀬はあまりそれに対して何も言わないんです。それが難しかったです。「止めてよ」ってどういうトーンで言えばいいか分からなくて。ここに来るまでは、他の3人よりワントーン低くはしゃぐのが一ノ瀬だったんですけど、ここではトーンを少し上げてほしいと言われていたんです。どうすべきなのか迷いました。

 

———ここでの一ノ瀬の立ち位置は難しいですよね。

 

井上: どういうテンションでいけばいいか悩んで、監督と話して、一番アドバイスをもらったシーンでした。

 

———真山さんはいかがでしたか? 三浦さんは凄みがありましたね。

 

真山: 三浦透子は本当に上手で、直接やり合うから恐くて。

 

井上: 私はほんまに止めてよって思ったもん。うるさい!って。

 

真山: 文子を見ているのが辛くなるくらいでした。

 

井上: このシーンの前から、三浦透子は役に入り込んでいたんです。ずっと考えているのを見てたから、それもあって。

 

4

 

———文子の信者的な面が露わになって、それに対するチエの反応が率直でした。

 

真山: リハの時には、喧嘩腰にやり過ぎと言われて。チエは何で文子がこんなに怒ってるのか分からなくて、文子を心配するくらいの状態で受けて欲しいと松居監督に言われたんです。三浦透子は本当にお芝居が上手なので、その文子の勢いに負けないように対峙するのはすごく難しいけど、これは頑張らなきゃって思いました。最後の方で涙を流したんですけど、それは台本にはなくて、泣きたくなったら泣いてもいいかを監督に相談したら、いいと言って下さったので。

 

井上: そしたらみんな泣きましたね。私も泣いてしまいました。何でこんな感じになってんの!って思って本当に辛くて。

 

———話を聞いていると完全に役と同化した上での言葉ですよね。松居監督の演出と現場の作り方が素晴らしかったのが伝わってきます。

 

真山: そうですね。このシーンはスタッフの方々が本当に褒めてくださいました。撮影の塩谷さんもですし、松居監督も撮り終わってから「お前、良かったよ!」って。それですごくホッとしました。

 

———本当に映画の質をグンと押し上げるシーンだと思います。その後の仲直りについて描かれていないところも松居監督らしくて。

 

井上: まず文子は1人では東京へは行かないし、行けないし、たぶんそれを3人は分かったんでしょうね。空気を感じ取ったんだと思います。

 

真山: これは描かれてないので、予想の話ですけど(笑)

 

井上: きっと自然に仲直りしたんでしょうね。

 

———バスの中で、無言でLINEをするシーンも、ここしかないっていうピンポイントさがありました。

 

真山: あれは実際のグループLINEで、「〜時からLINEしまーす」って松居監督に言われて、4人が使っているグループLINEを本名から役名に変えて、実際にLINEで会話したんです。だから、文字入力の間違いも大関の本当の間違いなんです(笑) 私だけ冒頭の会話は決められていて、最後の着地だけ決めて、あとは全部アドリブだったんです。

 

 

好き過ぎて、アーティストの心までを読むというか自意識過剰に考えちゃうようなファンがいてこそ成り立ってると思うんです。(井上)

 

———そしてNHKホールに辿り着くわけですが。

 

井上: あれは失敗できなかったですね。

 

———ドラマチック過ぎないところもリアルで良かったですね。 

 

真山: そうですね。あれは本当にクリープハイプさんのツアーファイナルのアンコールで実際に撮ったんです。

 

井上: お客さんには知らせてなかったんですけど、三浦透子が一番ドキドキしたと思います。

 

———実際のライブ中に即興で演じてもらうって、松居監督の『自分のことばかりで情けなくなるよ』や『ワンダフルワールドエンド』でもやってますけど、ミュージシャンの対応力って素晴らしいですよね。

 

井上: そうですね。クリープハイプだからこそ出来たって松居監督は言ってました。元々は舞台袖までで終わるはずだったところを松居監督が尾崎さんに話して、ああなったみたいなんです。

 

真山: 撮影の塩谷さんも気合いを入れてやって下さったんだと思います。完成したものを観た時に、すごくきれいに撮れてて、文子の表情とか。でもお客さんがどう思うかはやっぱり恐かったですね。

 

———この映画は観てくれる人もきっとバンドファンの人が多いと思うんです。バンドはもちろん、アイドルもそうですけど、2人は「ファン」に対してどんな思いがありますか? 井上さんは実際、ファンと接する機会も多いと思いますけど。

 

井上: 私はすごくファンの方が好きで。文子みたいに好き過ぎて、アーティストの心までを読むというか自意識過剰に考えちゃうような、そういうファンがいてこそ成り立ってると思うんです。チエみたいなライトなファンだと、井上苑子個人の気持ちとしては、いつか離れていくんじゃないかと思って恐いんです。だから、ファンはみんな大切ですけど、文子みたいなファンは大事な存在だなって思います。

 

真山: ファンかぁ。好きな俳優の方やバンドの方には素直にこれからも長く活躍できることを願っています。これはファン目線の意見ですね(笑) 私はほぼ素人なので、苑子みたいに沢山ファンがいるわけじゃないんですけど、私のことを応援してくれてる人達もミスiDの頃からいるにはいて、期待に応えたいというか恩返しをしたと思っていたので、この映画に出演させて頂いたことを喜んでくれたし、私もすっごく嬉しかったです。

 

5

 

———では、最後にこの映画を観て頂ける方々に一言ずついいですか?

 

井上: 今、もし何も好きなものが無いという人でも勇気が出る映画にはなってる気がします。何かひとつのことに熱中してみようと思わせてくれる映画だと思うので。

 

真山: そうだね。その何かを見つけてない人には見つけるきっかけになってくれたら嬉しいし、まさにいま何かに熱中してる人には共感して欲しいし、過去に熱中したものがある人にはそれを思い出してもらえるって思います。

 

井上: クリープハイプが好きな人には絶対に観て欲しいです。

 

真山: うん、本当にそれは思います。

 

作品情報 『私たちのハァハァ』

 

 

監督: 松居大悟
出演: 井上苑子、大関れいか、真山朔、三浦透子、satellite blue metro、佐藤太一郎、茜(カーニバル)、池浦さだ夢(男肉 du Soleil)、土佐和成(ヨーロッパ企画)、中村まこと / クリープハイプ / 武田杏香、中村映里子、池松壮亮
音楽: クリープハイプ
製作: SPACE SHOWER NETWORKS INC.
制作: CONNECTS LLC / 配給・宣伝: SPOTTED PRODUCTIONS

 

2015年9月12日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー

 

sum © 2015『私たちのハァハァ』製作委員会