MOOSIC時評 vol.2 直井卓俊+森直人×コムアイ(水曜日のカンパネラ)

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  • 2015.08.21

MOOSIC時評 vol.2 直井卓俊+森直人×コムアイ(水曜日のカンパネラ)

今年4年目を迎えるMOOSIC LABに特別審査員としてコムアイ(水曜日のカンパネラ)が参戦。第1回から審査員を務める映画評論家の森直人氏、MOOSIC LAB主宰の直井卓俊氏による開催前夜の音楽と映画にまつわる鼎談です。

(構成: 川端哲生)

 

 

 

単に「優れた映画」を選ぶ場ではない、あくまで音楽と映画のせめぎ合いがキモだっていう特性が面白くも難しいところで。(森)

 

直井: 今年から審査員にコムアイさんを新たにお迎えすることもあるので、4年目を迎えるMOOSIC LABの展望を中心に、これまでを振り返りながら話ができれば。今年の参加作品も現段階でまだ仕上がっていないんですけど(笑)

 

森: やはり毎年しめきりとのギリギリな戦いが(笑) スリリングだなあ。結局、我々審査員も、お客さんとまったく同じ白紙の状態で全作鑑賞に臨んでますから。

 

直井: あ!いきなり話は変わるんですけど試写で観て頂いた『私たちのハァハァ』(松居大悟監督)にコムアイさんはそんなに乗れなかったという噂もありますが…(笑)

 

コムアイ: そうなんです(笑) 評判がすごくいい映画なのに。『アナと雪の女王』を観て乗れなかった時の感覚と同じで、私が推した映画は世間一般には受けないんだと思って…。大衆音楽をやっているからには、自分がいいと思うカルチャーは流行るはずだと思って頑張ってるところがあるんですけど、その根拠の無い自信が打ち砕かれる感じで。

 

直井: 実は僕も昨年、『おんなのこきらい』(加藤綾佳監督)が作られていく過程では脚本が全然分からなかったんですよ。主人公のキリコがさっぱり理解できなくて。受賞審査でも作品としての質は高いけど、MOOSIC的なコンセプトとしてどうなの?っていう話になって、グランプリやミュージシャン賞を逃していたりして。

 

森: ちょっとお二人とも、いきなり皆さんを不安にさせるようなこと言ってどうするんですか(笑) でもまあ、MOOSICっていうのは単に「優れた映画」を選ぶ場ではない、あくまで音楽と映画のせめぎ合いがキモだっていう特性が面白くも難しいところで、昨年の受賞結果はそこのジレンマがモロに出ちゃいましたよね。結局、グランプリは該当作なし。準グランプリ扱いになった『おんなのこきらい』と『QOQ』は、共に劇としての面白さは文句なしだけど、ミュージシャンとのコラボレーションっていうお題の核が弱いのでは、というのが議論の争点となりました。

 

直井: 『おんなのこきらい』は、一般映画として単独公開されてから世間的にあんなに広がるとは、審査員一同、すいませんでしたって感じで(笑)

 

コムアイ: そうすると私が審査員として入る意味が最早、無い気がする(笑)

 

直井: いやでも、今の審査員って感度のいい精鋭が残っていると感じる反面、MOOSIC LABとはこうだ!みたいな持論が出来上がってる人が増えて来て。審査基準に、歴代作品との比較なんかが加味されてたりするけど、それは本来、お客さんには関係のないことなので(笑) そこで新しい人を呼びたいと思った時に、「音楽と映画」というコンセプトで活動していて、コラボ企画を一緒にやれないかとずっと思案していたものの実現に到っていなかった「水曜日のカンパネラ」のコムアイさんのもう1つの側面が思い当たって。主観で映画の感想を述べる批評性ですね。それが面白くて(笑)

 

コムアイ: おばちゃんの感想みたいな(笑)

 

直井: でも個人的な視点で観てるお客さんって割と多いんですよ。自分がいかに登場人物に感情移入できるかどうかを重視するような。

 

コムアイ: 『私たちのハァハァ』はそれが無かったんです。自分が高校時代にああいう青春を送ってなかったから。同じ教室で起こってはいたけど、そういうのは滅せられるべきだと思って、Peace Boatに行くようなタイプだったので。中学生くらいの頃は、ミスチルの桜井(和寿)さんが好きでブログに裸の画像をアップしたりとかしてたんですけど(笑)

 

直井: その頃のコムアイさんなら『私たちのハァハァ』受け入れられたのかな(笑) ちなみにコムアイさんは、MOOSIC LABを知ってはいてくれたんですか?

 

コムアイ: もちろんです。短い開催期間に行けてはいないんですけど。

 

 

ミュージシャンコラボという、言わばMOOSICのフォーマットが認知されて巣立っていったりもしてます。(直井)

 

森: ざっとおさらいということで、コンペで一番&二番を獲得した作品を順に振り返ると、2012年が『nico』(今泉力哉監督×北村早樹子)と『アイドル・イズ・デッド』(加藤行宏監督×BiS)。2013年が『おとぎ話みたい』(山戸結希監督×おとぎ話)と『ダンスナンバー 時をかける少女』(三浦直之監督×倉内太)。そして昨年が『QOQ』(黒田将史監督×黒際連盟)と『おんなのこきらい』(加藤綾佳監督×ふぇのたす)。第一回とかもはや懐かしいし、早くも歴史を感じますね。監督や出演者の間でも「MOOSIC何年組出身です」っていう同期感が生まれつつあるような(笑) ただ最近「MOOSIC 、今年で終わるんじゃないか?」っていう噂も流れたりしたとか聞きましたけど(笑)

 

直井: 確かに今年は妙にアーカイブ感があるので(笑) 上映劇場のK’sシネマさんが張り切って1週間丸々、枠をくれたという経緯があって、コンペ作品は去年より少なくて、慌てて過去作品や招待作品の上映を増やしたせいなんです。オープニング作品の『雲の屑』と、クロージング作品の『バカドロン』は、昨年参加の中村祐太郎監督と黒田将史監督の新作で揃えてます。『雲の屑』は今年の東京学生映画祭でグランプリ&観客賞を穫ってますね。

 

コムアイ: 『雲の屑』って主題歌は町あかりさんなんですね。

 

直井: そうです。中村監督の映画はすべてそうですね。あと『雲の屑』の編集を黒田監督がやっていて、作品性は全く違うタイプの2人なんですけど、尖った編集をする中村監督に対して、黒田監督は非常に分かりやすい編集をする。それで『雲の屑』が賞を穫ったので、中村監督は思うところはあるでしょうね。そういう同世代の横の繋がりも生まれてます。

 

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『雲の屑』(中村祐太郎監督)

 

コムアイ: 中村監督はどこかで会ってる気がしたんですけど、思い出しました。街で出演舞台(『ゴミ、都市そして死』)のビラを渡されました。時間が合わなくて行けなかったんですけど(笑) 水曜日のカンパネラもMOOSIC LABの参加の機会があったかもしれないけど、映画を観る側として、いいシーンで私達の音楽が流れてくるイメージが湧かないんです。例えば、劇中でヘッドフォンとかカーステから流れてくるみたいな取り入れ方ならまだ想像できるけど。

 

森: 水曜日のカンパネラはMVを観ても、すでに楽曲との密着性の中で世界観が完璧に出来上がってますもんね。コムアイさんは、今回参加のミュージシャンとの交流はどんな感じなんですか?

 

コムアイ: ベッド・イン、サイボーグかおり、Vampilliaは交流ありますね。コショージ(メグミ)は事務所が一緒だったし、スガダイローと細身のシャイボーイも何回か会ったことあります。あと、チャラン・ポ・ランタンの映画もなかったでしたっけ?

 

直井: 『飛べないコトリとメリーゴーランド』(市川悠輔監督)は、SPOTTEDが企画協力をしたSMA製作の一般公開映画なんですよ。ミュージシャンコラボという、言わばMOOSICのフォーマットを使った映画で、そうやって企画が認知されて巣立っていったりもしてます。

 

 

楽曲の歌詞と映画の物語を意味的に合わせても、それで「化学反応」が発生するかどうかは、また別の次元の問題という。(森)

 

森: ふと思い返すと、MOOSIC黎明期の論点として出てたのが「映画とMVの差をどうつけるか」みたいなことでしたよね。

 

直井: そうですね。パイロット的に開催した2011年の時に、MVと映画を一緒にした中途半端なものが出来ちゃって、その反省があって、2012年に音楽ではなくて映画側がイニシアチヴを取って作ってくれってお願いしてからうまくいき始めたんですよね。

 

森: さっきコムアイさんがおっしゃったことに准えると、水曜日のカンパネラの音楽だと映画にはならない気がするけど、MVなら綺麗に成立する。その差は微妙なようでいて、ハッキリしてるような気がする。もちろん使い方次第でマジックが起こるかもしれないけど、要は「化学反応」なんですよね、決め手になるのは。例えば楽曲の歌詞と映画の物語を意味的に合わせても、それで「化学反応」が発生するかどうかは、また別の次元の問題という。

 

コムアイ: 映画の好みなのかもしれないですけどね。私が好きなタイプの映画にならない気がして不安なだけなんです。

 

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『バカドロン』(黒田将史監督)

 

森: 思えば2012年の第一回コンペって、九龍ジョーさんはまだ審査員に参加されてなかったじゃないですか。それであとから「第一回は映画側に寄り過ぎてる気がした」みたいな指摘をされて、「ああ、確かにそうかもなあ」とか思ったんですよね。今泉力哉監督がグランプリっていうのが象徴的で、彼は音楽云々とか関係なく、映画作家として「最強プレイヤー登場」っていう役回りだったし。『nico』もその範疇と言えば範疇かなと。

 

直井: そうですね。破綻してもいいから、音楽と映画がもっと混ざるべきだという。せっかく実験が出来る場なんだから、他では許されないような極端なものを観たいという意見もありました。

 

森: だから2012年組でいうと、音楽と映画の調和あるいはバトルという意味でMOOSICの最適解を提示したのは、竹内道宏監督(『新しい戦争を始めよう』)かもしれないですよね。

 

直井: 彼は元々がライブ映像を撮っていた音楽人間なんで。アクション映画におけるアクションシーンのように、物語というより、いざとなったらライブ映像で持っていってしまう強引さがある。そういう映画の文法なんか無視してしまう人が好きなんですよ。

 

森: 結果的に、審査結果での上位作以外のものに関わった人が大きく出世したりもしてますしね。その代表が『サマーセール』の主演だった大森靖子さん。今や伝説の怪作ですけど、あれがまだ3年前ですもんね。

 

直井: 3年前がちょうど震災直後で、そういう空気はありましたよね。『新しい戦争を始めよう』もそうだし、『サマーセール』も途中で地震が起こるし。入江悠監督より下の世代はもう撮れなくなるんじゃないかという焦燥感が当時はありました。

 

コムアイ: 確かに2011年はハラハラする年でした。今年やらないと死ぬかもって常に感じてましたね。それもだんだん無くなってきて、来年でいいやみたいになってる(笑)

 

森: それ、良いのか悪いのか?(笑)

 

 

『THE COCKPIT』は、傑作だった前作『Playback』からの監督の身の振り方っていう意味で感動しました。(コムアイ)

 

直井: シネ・ウインドっていう新潟の映画館の支配人の井上さんが審査員にいて、3年連続でグランプリに推した作品(『アイドルイズデッド』、『アナタの白子に戻り鰹』、『おんなのこきらい』)がすべて観客賞を穫ってるんですよ。

 

森: それは素晴らしい!どの映画がウケるかの正解を知りたかったら、まず井上さんのご意見を聞けばいい。最も観客に近い感度を備えた審査員と言えますね。

 

コムアイ: 面白い。いいプロデューサーになれますね。

 

直井: MOOSIC LABの審査員は各地方のミニシアターの支配人なんですけど、結構土地柄が出る。京都の立誠シネマの田中さんとか「どうせこれがグランプリでしょ」って、敢えて皆が推してないやつを推したりしてた事もある(笑)

 

コムアイ: 京都っぽい(笑) 招待上映作品は私も観た映画が多いですね。

 

森: 今回の特別招待作品枠はメジャー感ありますよね。貴重な35mm上映の『リンダ リンダ リンダ』(山下敦弘監督)は、東京国際映画祭のディレクターの矢田部吉彦さんが『私たちのハァハァ』の推薦コメントで引き合いに出されていた。

 

直井: 松居監督こそ、以前からMOOSIC LABとかうちの流れに合流したいって思ってくれてたみたいなんですけど。かなりのMOOSIC人間ですよね。極めつけはMVから立ち上がった『ワンダフルワールドエンド』かな。ベルリン映画祭で上映されるという快挙もあった。

 

森: それは松居監督が「持ってる」証拠でしょう。大昔の喩えですけど、芥川賞の第一回を受賞した石川達三って、その該当作品がなかなか雑誌に掲載されず、コンテストみたいなのにも選外で、でもちょうど第一回の年にたまたま初掲載されたから選考対象になったんですもん。

 

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『THE COCKPIT』(三宅唱監督)

 

コムアイ: 『THE COCKPIT』(三宅唱監督)は、本当に面白くて。傑作だった前作『Playback』からの監督の身の振り方っていう意味で感動しました。良いものを作ると普通は沈むものだから。

 

森: 僕も三宅監督、かしこい方向に舵を切ったなあと思いました。あれは極小ながらちゃんと開かれた「エンタメ」ですもんね。

 

直井: 三宅監督は2年前のMOOSIC LABで『労働者階級の悪役』(平波亘監督)に役者として出演してます。

 

森: それってまだ『Playback』を撮る前でしたよね。『THE COCKPIT』は僕も非常に好きで、これこそMOOSIC的な強度、あるいは純度がすごく高い。まさに「音楽が生まれる時間」の幸福なドキュメントを、コンセプチュアル・アートみたいな方法意識で撮ってる。尺も64分で短いから、もしコンペに出したらグランプリ獲るレベルだと思う。少なくとも僕は全力で推すなあ。

 

直井: 確かにコンセプトからして純度は圧倒的に高い。

 

 

賞よりもMOOSIC LABを通じて、未知の監督やミュージシャンの存在をお客さんに知ってもらうことが一番嬉しいことで。(直井)

 

コムアイ: 尺が短い映画はいいですよね。短くて足りてるものが撮れるなら私はそれが一番いいと思うんですよ。

 

直井: 僕もそれを推奨するけど、長くなりがちなんですよね。詰め込み過ぎて長くなるならまだいいんですけど。今回のコンペ作品は70分前後の映画が4作品あるけど、今年はコンペが8作品なので冗長にはならないかな。受け身だった去年の反省から、今年は企画から作品数を厳選しました。

 

森: 8作品だと全作品が何かしらの賞に絡んでくる可能性が高まりますよね。それだと平和的で良いんだけどなあ(笑) いや、っていうのはね、昨年のコンペは新宿ロストプラスワンで授賞式イベントやったじゃないですか。それで発表終わって楽屋に戻ったらね、あまり票の入らなかった監督陣が予想以上にヘコんでるんですよ(笑) 思わず「いや大丈夫ですから!」って声かけちゃったんですけど、「そんなに賞を気にしてんのか~」と思ったら申し訳なくなっちゃって。でも映画に限らず作品評価って「所変われば品変わる」で、選者や評価軸が違えば受賞結果なんてガラッと変わりますから。特に僕の目は基本的にふし穴だと思っていただければ(笑)

 

直井: 僕としては、賞よりもMOOSIC LABを通じて、未知の監督やミュージシャンの存在をお客さんに知ってもらうことが一番嬉しいことで。『アイドルイズデッド』に出てるBiSが映画のために作られた架空のアイドルグループだと思ってた人がいて、実在すると知ってライブに行って感動したって人もいる。この映画で知って追っかけになった人、少なくとも3人は知ってます(笑)

 

コムアイ: それは面白いですね。

 

森: そのBiSも今や解散ですもんね……。ヒットした『劇場版BiSキャノンボール2014』の公開も今年の頭ですから、状況の流れはなんと早い。

 

直井: 『BiSキャノンボール』は、完全版を招待しようと思ったけど、尺が5時間あったので無理でした(笑)

 

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『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(太田信吾監督)

 

コムアイ: 『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(太田信吾監督)も刺さった映画でした。逃げられない強い波がある映画で、太田監督は容赦なさや非情さが振り切れてる監督ですよね。

 

直井: 『サマーセール』の岩淵監督のダメさ加減が前菜に感じるくらいの重量のドキュメンタリーで。MOOSICにはない種類の映画ではあります。ところで実は、2016年のMOOSIC LABも実は既に進行してて、松本花奈とスズキケンタって10代の監督が2人いるんですよ。

 

コムアイ: 松本さんって17歳の子ですか? 井上苑子ちゃんのMVを撮ってた監督ですよね。私、そのMVチラッと観ました。

 

直井: 今、技術的に恵まれてる状況で、ルックだけは良くて中身がないみたいなインディーズ映画が増えて、凄まじくデジタルを駆使してるのって大林宣彦監督だったりして。若者はその便利さに気付けてないんですよね。それが当たり前だから。ただ、10代の子たちはその「便利さ」を何のてらいもなくフル活用しようという頭がある気がします。

 

森: なるほど。いわゆるデジタルネイティブ世代って「平成生まれ」とほぼ重なってると思うんだけど、その人たちがいよいよ映画を撮るようになってきた。例えば『私たちのハァハァ』の主演女子のひとり、大関れいかさんはVineで有名になった人でしょ。最近は『サンジャポ』とかでも見ますけど(笑) 『私たちのハァハァ』はまさに自撮りベースで、そっからフェイク・ドキュメンタリー的に商業映画のフォーマットへと綺麗に伸びている。だから現在の映像環境の中で、劇映画の形式が的確に更新されている気がしたんです。これはもう松居監督の処理の巧さが光るというか、端的に「すげえ上手!」って思った。ゆうばり国際ファンタではアカデミー賞受賞作『バードマン』を抑えて観客賞に輝いたそうですけど、そりゃあ松居大悟に比べたらイニャリトゥはクラシックですよ(笑)

 

直井: 松居監督は『ワンダフルワールドエンド』もツイキャスの映画でしたけど、SNSとか「今」を貪欲に取り入れるタイプで、オープニング映像を撮った19歳のスズキケンタと言ってることがそんなに変わらなくて、感性が若いですよね。

 

 

映画は結局は好き嫌いだと思うから、参加する方達も好き嫌いを重視してほしいなって思います。(コムアイ)

 

森: 今年のコンペに関しては『101回目のベッド・イン』がどの位置に来るか。これが大きな目安になるのかなって気はしますね。ベテランのサーモン鮭山監督の職人的な実力がひとつの基準値になると思う。そこを他の作品がどれくらい超えていけるか。

 

直井: 『ねもしすたぁ』は根本宗子さんが人気急上昇中だから当然期待値が高いですけど、精神性が『アイドル・イズ・デッド』に近いので、審査員によってそこをどう観るかはありますかね。『いいにおいのする映画』は、仕上がりまでの間に監督とミュージシャンサイドのやりとりがいい感じにバトルになってたようなので期待してたりします(笑)

 

コムアイ: ベッド・インの「世界を愛する感」はすごいんですよね。本人はそのつもりはなくても、大森(靖子)さんみたいに、演技を超えた魅力がありそう。

 

直井: 俳優専業の人には無いアーティストの魅力ってありますよね。『いいにおいのする映画』に出てるVampilliaのミッチーさんとか、『ライブハウスレクイエム』のサイボーグかおりとか。あとドキュメンタリーでスガダイローさんの存在感は強そうですね。

 

コムアイ: 『海街Diary』でレキシのイケちゃんも役者として良かったなぁ。でも、私はやっぱりぶっ壊れたものが観たいですね。

 

直井: 『DREAM MACHINE』とかはいい方向にぶっ壊れてくれてたらいいんですけど。今年の傾向として、エンタメ色の強い観客賞候補が多くて、『マイカット』が一番実験色が強いかもしれない。考えてみれば『おんなのこきらい』みたいな等身大の日常劇が無いんですよね。

 

コムアイ: 本当ですね。ここに『THE COCKPIT』みたいな映画があれば。あそこまで整っていなくてもいいから。

 

森: 今回、僕の心の中の基準はおそらく『THE COCKPIT』ですよ(笑) これを超えたと思えるものが一本でも出てきたら嬉しい。

 

直井: 『復讐のドミノマスク』は室谷監督がプロレスラーの福田洋さんが好き過ぎて、彼を世界に羽ばたかせたい思いが画面に溢れてるんですよ。そういう間違った貫かれ方もいいと思います(笑)

 

森: もう単純に『復讐のドミノマスク』がめちゃくちゃ面白かったら、すがすがしくて嬉しいですね(笑)

 

コムアイ: ぶち上がりますね(笑) こういう鎧が無い映画っていいかも。

 

直井: 最後に新審査員としての意気込みを頂いてもいいですか?(笑)

 

コムアイ: 賞をあまり気にしてほしくないってのはありますね。私は今回、映画の文脈を知らないけど映画が好きという立場で呼ばれてるけど、映画は結局は好き嫌いだと思うから、参加する方達も好き嫌いを重視してほしいなって思います。「勝ち負けに拘らない」って、体育祭の校長先生みたいですけど(笑)

 

 

PROFILE 直井卓俊 Takatoshi Naoi
1976年生まれ。SPOTTED PRODUCTIONS主宰。『フラッシュバックメモリーズ3D』(’12/松江哲明)、『SRサイタマノラッパー』シリーズ(’09-‘12/入江悠)、『劇場版 神聖かまってちゃん』(’11/入江悠)、『百円の恋』(’14/武正晴)、『ワンダフルワールドエンド』(’14/松居大悟)、『私たちのハァハァ』(’15/松居大悟)、『MOOSIC LAB』(’12-/V.A.)など、インディペンデント映画を中心に企画・配給・宣伝プロデュースを手がける。

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森直人 Naoto Mori
1971年生まれ。映画評論家、ライター。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「TV Bros.」「週刊文春」などで新作クロスレビュー担当中。

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コムアイ Kom i
1992年生まれ。水曜日のカンパネラの主演・歌唱担当。年間100本以上の映画を鑑賞。映画好きとしてトークイベントやパンフレットへの寄稿なども行っている。毎週水曜日には、インターネットラジオで映画を紹介するレギュラー番組「水曜映画deショー」(ソラトニワ)をもつなど、自他ともに認める映画好き。

 

イベント情報 MOOSIC LAB 2015

 

 

2015年8月22日(土)より K’s cinemaにて開催 他全国順次!

 

A B CD

 

 

■小根山悠里香×Maison Book Girl 『マイカット』
出演: 前彩子、廣田朋菜、秋澤弥里、Maison book girl

 

■室谷心太郎×細身のシャイボーイ『劇場版 復讐のドミノマスク』
出演: 福田洋、望月みゆ(バンドじゃないもん!

 

■森孝介×スガダイロー『劇場版 しろぜめっ! 』
出演: スガダイロートリオ、ノイズ中村

 

■根本宗子×せのしすたぁ『ねもしすたぁ』
出演: せのしすたぁ、根本宗子、梨木智香、大竹沙絵子

 

■ターボ向後×禁断の多数決&BRATS『DREAM MACHINE』
出演: 禁断の多数決、BRATS=黒宮れい他

 

■酒井麻衣×Vampillia『いいにおいのする映画』
出演: 金子理江、吉村界人、Vampillia、中嶋春陽

 

■松本卓也×マチーデフ&サイボーグかおり『ライブハウスレクイエム』
出演: マチーデフ、サイボーグかおり他

 

■サーモン鮭山×ベッド・イン『101回目のベッド・イン』
出演: ベッド・イン、破れタイツ、三元雅芸、渡辺佑太朗