『Dressing Up』 祷キララ & 安川有果監督 インタビュー

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  • 2015.08.15

『Dressing Up』 祷キララ & 安川有果監督 インタビュー

映像制作者の人材発掘を行うCO2の助成作品として制作された安川有果監督の初長編映画『Dressing Up』が、撮影から4年の時を経て、2015年8月15日より渋谷シアター・イメージフォーラムにて劇場公開される。端正な青春映画というルック的な先入観を覆し、予測不能なジャンル映画へと転調していくこの映画はしかし主演女優の存在無しには語れない。亡き母の過去を追う中で幻想を膨らませていく中学生の少女、桜井育美を演じるのは、映画『堀川中立売』(2010年)や、神聖かまってちゃんのMV出演で知られる2000年生まれの女優、祷キララ。撮影当時は小学6年生(現在は高校1年生)ながら、堂々たる演技が評価され、国内の映画祭で女優賞三冠を果たした。今回、その祷キララと安川有果監督の2人に撮影当時を振り返ってもらった。

(撮影: バンリ / 取材・文: 川端哲生)

 

 

黙って考え事してる時の何てことのない表情に、底知れないものを抱えてるような感じがあって、役に合っていると思ったんです。(安川)

 

———この映画の主演に祷キララさんを起用したのはどのような経緯だったんですか? 

 

安川: 『堀川中立売』という柴田剛監督の映画に出ていたキララちゃんが、皆を引き連れていく番長的な役をやっていて、それが違和感なくて不思議な存在感があったんです。当時は小学4年生だったと思うんですけど、印象として子役を超えた存在でした。『堀川中立売』の出演はどういうきっかけで決まったの?

 

祷: 柴田監督と親が知り合いで、その前の作品(『青空ポンチ』)の上映を観に行って、その日の夜の打ち上げで監督と話をさせて頂いた時に、冗談のつもりで、次の映画に出させてやって言ったら、「いいよ」って言って下さって(笑) それで出演することになったんです。

 

———『Dressing Up』の育美は一転して、色々と抱えている寡黙な女の子の役ですけど、それでも監督は適役だと思ったんですね。

 

安川: キララちゃんは普段はニコニコしてるのに、黙って考え事してる時の何てことのない表情に、底知れないものを抱えてるような感じがありました。それが興味深くて、この役に合っていると思ったんです。

 

———育美のキャラクターを監督自身も現場で掴んでいったそうですね。

 

安川: 育美がどんな子なのかはそこまで決めてなくて、シナリオ上にキャラクターは書きましたけど、人物に対する決めつけはなくて、まずキララちゃんから出てくるものを見た上で作っていった感じでした。

 

祷: アドバイスはしてもらいましたけど、決めつけられる感じではなかったです。最初に台本を読んだ時に、わざと演じてる感はみせたくないなとは思ってました。

 

安川: 勘がいいんですよね。私もそれを望んでいたので、やっていく中でキララちゃんの中に演じてる感が出てきたら言ったかもしれないけど、私は言うことは特に無かったんです。さすがでした。

 

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———思春期の少女の葛藤に共感はできました?

 

祷: 殴るとかみたいないじめは実際の日常にはなかったし、人間関係みたいなものも、まだ小学生だったので、もっと単純なものでした。

 

———映画の撮影は小学6年生の時で、現在は高校1年生ですよね。この映画は中学生の少女の話ですけど、いま振り返ってみるとどうですか?

 

祷: 小学校卒業して中学生って1年しか変わらないんですけど、中学生の友達関係や自分について考える機会は増えたので、小学生みたいに単純ではなくて悩んだりはしました。だから撮影終わって分かってきたこともありました。

 

安川: そっか。撮影当時は育美の気持ちが分からないっていうのは絶対にあったと思うので、それは大変だったと思う。育美は居心地の悪さを感じて生きている子だと思うけど、キララちゃん自身の中学校生活はどうだった?

 

———中学は吹奏楽部に所属してたけど、高校ではテニス部に入部したみたいなことを(祷キララさんの)お父さんがおっしゃってましたね。

 

安川: テニス部って言ってましたか? バレーボール部ですね。お父さん、間違えてますね(笑)

 

祷: (笑) 吹奏楽は楽しかったんですけど、やりきった感じがあったので。高校では以前から興味があったバレーをやろうと思いました。

 

安川: 『Dressing Up』の鈴木卓爾さん演じるお父さんは、毎日プレゼントを買ってきてくれるんだけど、本音が見えなくて、それにもどかしさを抱えてる役だったんだけど、キララちゃんがお父さんに抱えるものとはまた違った?

 

祷: ちょっと違いますね(笑)

 

安川: キララちゃんのことを大好きなお父さんだもんね。

 

 

脚本を読んでどう思うか、まずは役者さんの方でやってみてもらって、それを見てから考えますってタイプのやり方で。(安川)

 

———鈴木卓爾さんは優しさと冷たさがない交ぜの危うい役でしたけど、お芝居の呼吸はいかがでしたか? ナチュラルに吃ったり噛んだりもされてましたね。

 

安川: あれも卓爾さんならでは台詞回しでした。2人がベッドで言い争うシーンは台本が直前まで完成してなくて長台詞を当日覚えてもらったりしたね。

 

祷: (笑) 鈴木卓爾さんは休憩時間中は優しくて、劇中での父親の役とギャップはなかったので、本番を撮っている時も違和感は感じずに出来ました。

 

安川: まずこの脚本を読んでどう思うか、まずは役者さんの方でやってみてもらって、それを見てから考えますってタイプのやり方で。だから卓爾さんの役もこちらではあまり作り込んでなかったんです。私はどちらかと言うと優しい寄りの不器用な父親というイメージで考えていて、お笑い芸人の小藪さんみたいな(笑) でも卓爾さんからどういうものが出てくるのか見たくて。そしたら、何か抱えてるお父さんを演じられたんですよね。確かにああいう事件があったらそうなるよなって説得力がありました。だから最初の想定とは少し違う父親像が現場で生まれて、それが結果的に良かったと思っています。

 

———その長台詞のシーンなんですけど、育美に対して父親が「本当はどう思ってるかなんてどうでもよくて、どう行動するかが重要」みたいな台詞が印象的で。どちらの言い分も分かるんですけど、キララさん自身はどちら寄りでした?

 

祷: 私は育美寄りでした。

 

安川: そうなんや。どう思いながらあの台詞を言ってるのかなとは思ってたけど。空気を大事にしてその場を成立させるってお父さんの気持ちは分かるけど、娘からしたら大事なことはちゃんと口に出して言ってほしいっていう願いはありますよね。

 

祷: 撮影の時も育美寄りだったとは思うんですけど、中学で吹奏楽をしてた時に、思ってることを本音で言い合わないと、正しい音を奏でていても違和感があるらしいんです。それを教えてもらって、実際に少人数でアンサンブルをする時も本音を言い合うようにするみたいな経験をして、それでその思いがい強くなりました。

 

安川: 私はお父さんの気持ちも分かるなって感じだったんですよね。親子だから本音で接して欲しいって育美の気持ちも分かるけど、人間色んな面があるし、違う人といる時は違う面を見せてるはずだし、全部を1人の人に見せるって出来ないと思うので。

 

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———本音を抑える協調性という以前に、本音は1つの側面だけではないってことですよね。育美がカッターで友達の愛子を切りつけますけど、あれは作劇としてのものなのか、それとも監督の中の心情的な面が作用してるんですか?

 

安川: 両方と言えば両方なんですけど、あれも感情的にやってるんじゃなくて、冷静に目的を持ってやってるようにしたかったんです。

 

———暴力描写は唐突ですよね。それが逆に恐くて。育美は無表情だから余計に。

 

祷: 意識したわけではなかったんですけど、脚本を読んだり、撮影を通して、育美のキャラクターなら感情を何でもかんでも出すわけではなくて、普段は無表情なイメージだったんです。

 

安川: 勘が本当にすごくいいんですよ。言わなくても理解してくれたので。

 

———当時は小6ですよね。引き出しとして何かを参照したりしました?

 

安川: 準備して臨んだものがあったのかは知りたいですね。私はなんとなくそういうのは無かったんじゃないかなって思ってたんですけど。

 

祷: そういうのは無くて、脚本と現場の雰囲気からそうしました。

 

安川: やっぱり読解力があるんだね。

 

 

お母さんをずっと追い求めて、やっと自分の目で見れたので、寂しさとか懐かしさみたいな気持ちもあるのかなと思って演じました。(祷)

 

———芝居勘があるんですね。役者は今後もやっていきたいんですか?

 

祷: 将来のことはまだ決まってなくて。でも演じる事は好きです。「お蔵出し映画祭」に参加した時に、他の関係者の方とお話したり、演技についてアドバイスしてもらったり、今後について聞いてもらったり、来場された方からも言葉を掛けてもらったりして、映画っていいなって思いました。

 

安川: あれは楽しかったよね。柴田監督に映画に出してって言ったのも、役者になりたくてお願いしたというより、その場の気持ちで動いた感じだったみたいで。それが演技に出てますよね。『Dressing Up』もその場の感情を出してくれたのがすごく良かった。怪物にも実際に驚いて怖がっていたしね(笑)

 

———あれはト書きに「怪物になる」と書いていたんですか?

 

安川: はい、そう書いていました。最初はどう思った?

 

祷: 今でも覚えてるんですけど、脚本を読みながらお母さんと、これどういうことやろうって話して(笑)

 

———自分の力では無理だなって普通は思うよね(笑)

 

安川: どう頑張っても無理ですからね(笑)

 

祷: 叫んだりすることしか思い浮かばなくて。特殊メイクとかは想像してなくて、読んだ時はビックリしました。

 

安川: 特殊メイクも笑ったらクシャっとしたお婆ちゃんみたいな顔になって、キララちゃんの怪物は割とかわいくて現場でも人気だったんですよ。メイクには3時間くらい掛かって大変でしたけど。自分の顔を見てどうだった?

 

祷: メイク中に眠たくなってしまって(笑) ずっと目を瞑って、顔にマスクを貼って視界も暗くなるので、眠気と戦うのが大変だったのは覚えてます。メイクし終わって鏡を見たら、違和感があり過ぎて、恐かったです。あのマスクは今も家にしまってあります。

 

安川: 捨てるわけにはいかないもんね。気分転換に付けたりしないんや? ハロウィンとかで付けたり。

 

祷: (笑)

 

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———怪物の話で言うと、終盤の育美の幻想シーンが印象的です。

 

安川: 現実の世界だけでは解決できないところまできたから、ああいう心の葛藤の中で森に向かうというのは少女の映画としての落としどころだったというか、それぐらいのことをしないと解決しない問題じゃないかなって思って。

 

———夢であり回想であるわけですよね。

 

安川: 育美自身は直面してなかった過去を夢で見たという感じですね。あの小屋は和歌山の森の奥だったんですけど、すごく寒くて大変でした。

 

祷: 扉を開けて小屋の中を覗くところは、お母さんをずっと追い求めて調べたりして、やっと自分の目で見れたので、寂しさとか懐かしさみたいな気持ちもあるのかなって思って演じました。

 

安川: 確かに言ってくれた通り、やっと会えたっていうことなんだよね、きっと。もちろん恐怖もあるんですけど、どういう形であってもお母さんはお母さんなので。

 

祷: 怪物の姿は実際に見慣れないものだったので、恐さもありました。

 

安川: お母さんを抱きしめる時の表情がすごく良くて、これは理屈で説明できるものではないと思うんですけど、今言ってくれた、やっと会えたみたいな思いを込めてくれたから、ああいう表情なのかなって思いますね。あのシーンを幻想とするなら、お母さんの存在も育美の力で作り出したものだと思うんです。それぐらいの情熱だから恐いだけじゃなくて、会えてよかったという感情を表現してくれたのは素晴らしかったなって。キララちゃんじゃなかったら、こうはならなかったなって思います。

 

———その後で、お父さんが寝ている部屋へ行きますよね。そこでも育美は感情をあまり出さないから余計に伝わってくるものがあります。

 

安川: そこもキララちゃんに任せてよかったなって思います。実は表情に出してほしいって私は言ったんです。もう少し笑顔を要求したんですけど、キララちゃんはそこまでの笑顔は変だと思ったみたいで。

 

祷: やろうとしたけど出来なくて。作り笑顔みたいになってしまいそうで。

 

———作り笑顔に対しての抵抗感が本能的にあったということですよね。

 

安川: 嘘をつきたくないってことだから、育美みたいな資質の持ち主ってことなのかもしれないですね。

 

 

相手も涙を流して、自分も涙を流して、台詞は無かったけど、全てを許すわけではなくてもやり直せる可能性があるのかなって。(祷)

 

———フリースクールに移った育美が最後に友達の愛子に会いに行くシーンの育美の表情も素晴らしいですよね。

 

安川: あのシーンは実は最終日の2日前くらいに一度撮ったんですけど、涙を流すって脚本にはあったけど、どうしても急に泣けなくて、それっぽい表情をしたところでカットをかけて一旦オッケーを出したんです。そうしたらカメラマンの四宮さんが「お前、本当にあれでいいの? 俺、ショックだよ。ラストシーンにかける思いはそんなもんなの?」って言われて。「納得はしてない」って思っていたのでズバリ言われて悔しかったです(笑) それで、どうにかならないものかと勇気を出して制作の方に相談して、最終日にもう一度撮影することになって。こういった作り方の映画ならではというか、商業作品であればそういったことはできないと思うんですけど。スタッフ間で話し合ったのは、キララちゃんは感受性が豊かな子だから最終日ならいけるって。それで最終日に「今日で撮影終わりだね」って声を掛けただけで、キララちゃんの中で感情が溢れ出して。

 

———確かにあくまで自然に溢れ出た表情に見えました。

 

安川: 比べてみた時に、2日前に撮ったものはどうしても泣けなかったというのが表情に出ていたんです。嘘をつけないから。育美の身に起こったことを演じてきたわけだから、育美を生きてきたからこその表情だったと私は思うんですよね。そうでもなかったかな?

 

祷: 私と友達役の2人(佐藤歌恋、渡辺朋弥)との撮影が多くて仲良くなってきて、他の出演者の方とも沢山話したりしたので、そういうのを思い出してみてって監督が言ってくださって、それを思い返していったら自然と涙が出てきたんです。でもそれだけじゃなくて、育美の気持ちとしても、カッターで傷つけてしまったっていう感情を持っていて、愛子の元に訪れるだけで複雑なんやろうなって思いながらやりました。

 

安川: ああいうことがあったら普通なら修復できないかもしれないからね。関係を断絶するんじゃなくて、もう一度やり直すという意味を持ったシーンになったと思います。最後に微笑むのも私が指示しわけじゃなくて、そうなったらいいなって思ってたら、自然とそうなったんです。あれはキララちゃんの中ではどういう表情だったの?

 

祷: 特に意識はしてなかったんですけど、歌恋ちゃんとのシーンは久しぶりで、役の上でも学校とは違う環境にいて会えなかったのと重なった部分もあったし、相手がドアを開けて出てきてくれた時に、相手も涙を流して、自分も涙を流して、台詞は無かったけど、全てを許すわけではなくてもやり直せる可能性があるのかなってことを思ったら、ああなったんです。

 

———お互い涙を流したことで通じたわけですね。役を理解してますよね。

 

安川: 本当ですよね。あの表情について訊くことがなかったけど、理解してくれてたんだね。本当に役者を続けてほしいなって思います。『Dressing Up』の撮影はきつ過ぎたかもしれないけど(笑)

 

祷: あの頃は小学生だったので(笑) 主役で出ずっぱりっていうのも初めてで、冬休みを全部利用して撮影して、毎日、大阪から奈良まで行って朝から夜まで撮影して帰ってきて、寝て、また撮影してっていうのが経験なかったことだったので、忙しさに慣れてなくて。

 

安川: 逃げたくならなかった?

 

祷: クリスマスの間も撮影してたので、ゆっくりケーキ食べたいなってのは正直あったんですけど、朝も得意な方じゃなかったし。でも最終日にスタッフや共演者の皆さんとお別れってなった時に、大変やったからこそ、ここまでこれて良かったって思ったし、クランクアップの時もみんなで本当に泣いて。

 

安川: めっちゃ号泣してたね。愛子役の歌恋ちゃんとやり切ったって感じで泣きながらテンションも高くて、違う一面を見た気がしました。役柄的に感情を抑えてきてたから、クランクアップで安心したのかもしれないですね。撮影期間は2週間でしたけど、すごく大変だったんだなって伝わりました。

 

6

 

———いいエピソードですね。安川監督に聞きたいのが、この映画は中学生の友達関係や心情の機微を描いてますけど、それが次第に、ホラーや怪奇系のジャンル映画にトーンが転調していくその着想についてなんです。

 

安川: 私が小学生の時に神戸で起こった、犯人が中学生だったあの事件が心に残ってたことがまず1つありましたし、あとは撮影当時に私がしていたバイトが忙しくて、感情を無にして手だけを動かすっていう状態で、感情を使うことが少なくなってきたと思っていた時に、感情を爆発させて、スピード重視の世の中をぶち壊す存在を描いてみたいっていう思いが強くなったんです。

 

———特撮についても当然、脚本の段階から決めていたわけですよね。

 

安川: 当初は怪物は明確に見せずに、不穏な空気だったり風が巻き起こったり、そういう抽象的な描写にしようって思っていたんですよ。でも、これは造形を見せた方が面白いんじゃないかってことをCO2の事務局の方達から言われたんです。それでジャンル映画の要素を取り入れようってことにした経緯はありました。

 

———そこで振り切ってしまおうというギアが気持ちの中で入ったわけですね。

 

安川: はい。あと、劇中で「人間じゃなくなるかもしれない」って言葉をお母さんが日記に残すんですけど、それってどういうことなんだろうって娘が考えた時、うまく想像できなくて怪物のようなものが頭の中で出てくるんじゃないかなって。お母さんに会いた過ぎて、具体的な怪物を自分で作り出してしまったってことにすればいいかなって思ったんです。

 

———意識した映画はあったんですか? 『ぼくのエリ 200歳の少女』みたいな吸血鬼映画も想起されましたけど。

 

安川: 吸血鬼映画は意識しました。『ぼくのエリ』は観てましたし、『パンズ・ラビリンス』にも似てるとよく言われましたけど、そちらは当時観たことなかったんです。他に意識したのは、『キャット・ピープル』って昔の映画があって、自分が豹になっちゃうんじゃないかって想像をしたら本当に豹になっちゃうっていう映画で、怪物を出そうと決めた後から構造的に参考にしましたね。

 

 

怪物性を秘めたる少女みたいな感想もあるにはありますけど、女性の感想は「普通の女の子だよね」みたいなものが多いんです。(祷)

 

———キララさんにとって、この映画はどんな映画になりそうですか?

 

祷: 舞台挨拶でも言わせてもらったことがあるんですけど、初めての経験が多すぎるくらい多くて、主役も特殊メイクも初めてで、忙しい冬休みも初めてで、この映画をきっかけにして全国を回ったり、この映画を通して私を知ってくれて、「応援してるよ」って声を掛けて下さったりして、自分の世界が広がった映画だと思います。

 

安川: どこの映画祭に出品しても女優賞を頂くみたいな感じで。本当にだから、キララちゃんとの出会いによって生まれた映画ですね。

 

———今後、女優業を続けるかは分からないですけど、原点みたいな映画にはなると思いますか?

 

祷: はい。

 

安川: 去年もキララちゃん主演で短編を一日で撮ったんです。脚本も無いまま一日で慌ただしく撮ったんですが、それは普通の女の子の役で、それはそれで素晴らしくて良かったんですけど、どうやらキララちゃん自身は「こういう役は向いてないかも」って思ったみたいで(笑)

 

祷: (笑) 『堀川中立売』では宇宙人だったし、『Dressing Up』も内に秘める役で、明るい普通の女の子の役も演じてみたいなって思っていて、それを実際にやらせてもらった時に普段は私もはしゃいだり笑ったりするんですけど、映画の役になると、表情とかが想像しづらくて、作ってるみたいになってる気がしちゃって。

 

安川: それは私の演出不足なのかな。ハッピーな感情が生まれにくかったとしたら。嘘はつけないってのがキララちゃんの根底にはあると思うので。本当に楽しくないとそういう表情はきっと出てこないので。

 

祷: 自分では逆にやりやすいと思ってたんですけど、実際にやってみると何故かは説明できないんですけど、台詞で全部を語るとか表情が豊かな役よりは、無表情とか雰囲気を自分で作っていく役の方が想像しやすくてやりやすかったんです。自分に近過ぎるからかもしれないです。

 

———照れが出るのかもしれないですね。でも佇まい自体に魅力がありますからね。

 

安川: 感情を秘めるんじゃなくて露わにする役も見てみたいですね。CO2の新人俳優賞に選んで下さった山下敦宏監督が『味園ユニバース』のヒロインの関西弁の喋り方なんかは、キララちゃんをイメージしたっておっしゃっていたらしいんです。

 

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———では最後に、撮影から4年という時を経て単独劇場公開となるこの映画を観て頂ける方々に一言ずつもらってもいいですか?

 

安川: 基本的には誰かのことを知りたいというとても人間的な部分を描いている作品だと思うので、幅広く観てほしいですし、将来に不安を抱えてる女の子の話でもあるので、先行きが想像しづらい最近の世の中で、ひとりの女の子がどういう選択をしてどういう道を歩んでいくのかっていうところで何かを感じてもらえる映画になってたらいいなって思います。

 

祷: さっきの話にも出た育美側か、お父さん側か、みたいに意見が分かれたり、感じ方は観る人によって違うと思うので、それぞれがそれぞれに感情移入してもらえたらいいなって思います。

 

安川: 怪物性を秘めたる少女みたいなそういう感想もあるにはありますけど、女性の感想は割と「普通の女の子だよね」みたいなものが多いんです。性別で見方が変わってたりするのも面白いなって思います。色んな楽しみ方が出来ると思うので是非、たくさんの方に観てほしいです。
作品情報 『Dressing Up』

 

 

監督・脚本・編集: 安川有果
撮影:四宮秀俊
出演: 祷キララ、鈴木卓爾、佐藤歌恋、渡辺朋弥、平原夕馨、デカルコ・マリィ
制作・配給: ドレッシング・アップ

 

2015年8月15日(土)より渋谷イメージフォーラムにてロードショー

 

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★初日舞台挨拶&トークショー開催決定(@渋谷イメージフォーラム)
■8月15日(土) 初日舞台挨拶 (本編上映前)
登壇者: 祷キララ(主演)、安川有果(監督)
■8月16日(日) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 山下敦弘(映画監督)、祷キララ
■8月17日(月) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 今泉力哉(映画監督)、安川有果
■8月18日(火) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 石井岳龍(映画監督)、安川有果
■8月19日(水) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 高橋洋(映画監督)、大畑創(映画監督)、安川有果
■8月20日(木) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 真魚八重子(映画評論家)、安川有果
■8月21日(金) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 松井宏(映画批評家、映画翻訳家)、安川有果