(取材・文: 川端哲生)
———本作が清野さんにとって初主演映画ですけど、クランクイン前の押井守監督にはどんな印象がありましたか?
清野: アニメの作品を撮られている監督というのはもちろん知っていたんですけど、現場に行って感じたのは、声がすごく小さいってことで(笑) それはすごく意外でした。でも、事前のイメージは、無の状態で現場に行きました。
———現場ではいかがでした? 声の大きさ以外の部分で(笑)
清野: すごく優しくて、作品の内容は重いんですけど、監督はいつもニコニコされているし、本当に怒らないので、現場は毎日明るくて、スタッフも共演者も笑顔で楽しくやってましたね。監督の人柄のおかげだと思います。
———清野さんの演じた藍という役は台詞がほとんどないじゃないですか。佇まいで存在感を表現しないといけないから大変じゃなかったですか?
清野: 台詞が無いし、台本にもキャラクターについて細かく書いてあったわけではなかったんです。これ完成なんですか?って思うくらいに薄い台本で、プロットに近い感じで設定が箇条書きされているような感じで。「あとは現場でつけていくから。この薄い台本を85分くらいの長さの映画にはしたいから」って監督からは言われていました。
———じゃあ、動きについてもト書きでそんなに詳しく書かれているわけではなかったんですね。
清野: 例えば、「工具を使っている」とか書いてあるくらいでした。台本の段階だと全然イメージ出来なくて、現場に行ってみたら工具が沢山置いてあって、そこではじめて理解することが多かったです。監督からも「現場行ってみないと分からないから」って言われていました。現場で監督に細かい感情の変化など、納得するまで教えてもらいながら、少しずつ、藍の気持ちを付け足していったという感じでした。
———映像表現自体がアニメーションに近い画作りでしたけど、コンテとはかがあったわけではなく、じゃあその簡単な設定を頼りにして撮られたんですか?
清野: そうでした。監督は現場にいって、教室や美術室だったりそこの空気感によって芝居を作っていっていましたね。
———そういった経験っていうのは今までなかったことですよね。
清野: そうですね。準備ができることがそんなになかったです。アクションの練習期間も3日間しかなくて、1日目はアクション監督にどれくらいアクションが出来るかを見てもらいながら基礎練みたいなことをやって、2日目は銃を扱う練習みたいなことをやって、3日目にやっと立ち回りを全部いれられるような感じで。これまでは1ヶ月近い稽古期間がある時もあったので、今回は特殊でしたけど、集中して稽古に挑みました。
———リハ3日間はハードですね。清野さんは元々、アクションに関しては得意な分野ですよね。憧れの女優は、ミラ・ジョヴォヴィッチと聞いています。
清野: はい、そうなんです(笑) でもまさか1日で覚えるとは思ってなかったですね。現場でやりながら増えていくことはなかったんですけど、とにかく手数も多くて、今までのアクションとはまったく違うものだったので、1から全部覚え直すって感じで。首の動脈や足の腱を切ったりとか、人の体重を利用して壁にして銃を撃ったりとか、複雑なものばかりで。そんなことやったことがなかったので。
———今回、押井監督はこれまで自身の中で設けていた枠を外して、直接的な暴力描写を解禁したと言われていたそうですね。その監督の新たな試みに、それでも清野さんは軽やかに応えていますよね。
清野: 本当ですか、軽やかに見えました(笑) 嬉しいです。でもすごく必死でした。銃の玉を変えるマガジンチェンジも、銃を持つ手元を見ないでやってと言われていたので難しかったです。銃も撃ったことがなかったから、感覚も分からなくて、家に持ち帰って練習もしました。アクション監督の方に銃指導はして頂いたんですけど、自主練で馴染ませた部分も多くて、テレビを観たり何か他のことをしながら、手元を見ないで自然にマガジンチェンジが出来るように練習をしたりしました。
———短期間で集中的に練習したんですね。あからさまないじめのシーンもありましたけど、クラスメイト役の田中日奈子さん、吉永アユリさん、花影香音さんとのエピソード等ありますか?
清野: 演技とはいえ、やっぱり悲しいですよね(笑) 足引っ掛けられてこけさせられるシーンだとか、トイレでのシーンは特に本当にいじめられてるような気持ちになりましたね。役柄的にもあまり仲良くなりすぎない方がいいかなって思って、現場では1人でいることが多かったです。1日終わって挨拶する時に少し喋るくらいで、そこは気をつけました。
———役作りを徹底しようとすれば、藍のキャラクター上、そうなるのは分かります。『TOKYO TRIBE』でもそうでしたけど、背景が謎めいた役が続いていますよね?
清野: 人からよく「いつも切なさそうな表情するよね」と言われるんです。だから、二面性のある役が多いのかもしれないです。単純じゃないから、すごく難しいですね。
———金子ノブアキさん演じる担任教師とは複雑な感情が入り交じった関係性でしたね。
清野: 金子さんは今までやられてた役の印象から恐いのかなって思ってたんですけど、実際お会いした時は全く逆で、優しい笑顔で挨拶して下さって、ホッとしました。とても優しくて。金子さんとの美術室で後ろから抱き寄せられるシーンは、金子さんに後ろから色々語りかけられてる途中から、バレないようにナイフを持ってっていう段取りが難しかったです。
———保険医役のりりぃさんとは、心を通じ合わせるという意味で一番密な芝居が多かったと思います。
清野: 現場ではよくお話していました。休憩中にテーブルで一緒にお昼を食べたり、優しさに浸ってました(笑) 役柄的にも唯一、心を許せる感じだったので。
———ストイックに役作りをされるんですね。役が抜け切らないことはありますか?
清野: クランクアップした瞬間に一気に抜けちゃいます。自分を追い込めば追い込むほどそんな感じです。やっと終わった!という開放感で一気に抜けるんです。自分を追い込むと自分の可能性を知ることができるので、ある意味追い込まれるのが好きです。メンタル的には辛くても、それくらいしないと仕事をちゃんとしている気がしなくて、怖いんです。
———その真摯さが表れた作品になってると思います。この映画は終盤の意外性ある転調が見どころだと思うんですが、最後に映画を観て頂ける方に一言いただけますか?
清野: やっぱりアクションはすごく観てほしいですけど、この映画って伏線が沢山仕込まれているので、一回観た後で次に観た時に違う捉え方も出来て、いろいろ新しい発見もあると思うので、何回観ても違う感情を得られるんじゃないかなって思うので、是非、皆さんに観てほしいですね。種類的にも変わった世界観だし、今までになかった映画なので、是非、映画館で観て欲しいです。
監督: 押井守
2015年7月25日(土)より新宿バルト9ほか全国公開ロードショー
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