(撮影: 松島翔平 / 取材・文: 川端哲生)
———この映画『みちていく』は、大学の卒業制作ですけど、そもそも竹内監督と山田さんはどういう形で知り合ったんですか?
山田: 出会いは入学してすぐで、偶然映画サークルの合宿のバスで隣同士になったんです。その時に、これまでの人生についてのちょっと濃い話を何故かして、そこで通じあった部分がたぶんあったんですよね。
竹内: 私、泣いたんです(笑) 知り合ってちょっとしか経ってないのに。その時、抱えてた悩みを話せる相手がいない中、信用出来る存在だなって感じて。
山田: お互い曝け出せる部分があったんだと思います。竹内の抱えていた悩みは、その後の彼女の映画にもずっと出てきている根本的な問題で、それを私が感じ取れたというか、知ることが出来たことが一緒に映画を作るきっかけになったんじゃないかなって思います。
———試写の後で竹内監督と少し話をした時に、山田さんが根拠なく「出来るよ」って、いつも声を掛けてくれたみたいなことも言ってましたね。
竹内: そうなんです。山田は「絶対すごいから」とか「出来るよ」みたいなことを何も撮ってないうちから言ってくれてましたね(笑) 山田は明るくてパワーがあるから、不思議と前向きな気持ちにさせてくれてました。
山田: 根拠はちゃんとあったんですよ(笑)
———それは『みちていく』を撮る随分前の話だと思いますけど、その頃から飛田さんや山田さんで映画を撮りたいという気持ちはあったんですか?
竹内: 山田は当時はもっと気が強かったんです。周囲を寄せ付けないくらい(笑) それでいて儚さやか弱さも持ち合わせていて、私はそれが面白いなって思ってたんです。
山田: 私にとってその頃は暗黒なので、これは書かないで下さい(笑)
竹内: そういう山田の個性が私は好きだったから一緒にやりたいと思っていました。飛田は自然体な感じが凄く魅力的で、だからこそカメラで撮ることが怖いなって思っていたんです。普段の彼女の魅力が失われてしまう気がして。2012年のPFFでグランプリを受賞した『くじらのまち』(鶴岡慧子監督)に私は助監督として参加していたんですけど、そこで主演を務めた飛田を見て、カメラを通すことでむしろ更に不思議な魅力が増すことに気がつきました。ただ私が書く役には、山田の方が合うことが多かったのもあって、この『みちていく』までは飛田とはやっていなかったんですけど。
———『みちていく』の「梅本みちる」と「新田舞」。監督自身が投影されてるのはどちらだと思いますか?
山田: 私は新田だと思って演じてました。「竹内里紗」を演じるぐらいの気持ちだったので。逆にみちるは、竹内の憧れている存在なんだろうなって私は思っていました。
竹内: そうだね。新田の方が感情移入出来て書きやすかったし、似ていると思います。でも、みちるが持っている弱さも私の弱さに通じているんです。
山田: 竹内は、周囲から強い人だと思われるタイプだから新田に近いなって。実際に高校時代に吹奏楽部の部長だったんだよね?
竹内: 部長ではなくて、セクションリーダーかな。部長になりたかったんだけど、演奏面のリーダーみたいな役職に就いたんです。でも結局、途中で部活を辞めてるんですけど。飛田も高校の水泳部で似たような体験をしたみたいだったので、それならば演じやすいかなと部活の設定に繋がりました。
———部活での実体験が反映されてるんですね。シナリオは、2人を想定しながら書き始めたんですか?
竹内: 当て書きではなく、私が想像した人物像と彼女達が持っているものの折衷案というか。そのまま当て書きしても、普段一緒にいる2人だったし、それは違うなって思って。
———書いてる最中に相談はありました?
山田: 今までの作品に比べると少なかった気がしますね。第一稿が出来上がってから見せてもらって、そこで話したりはしましたけど。
竹内: 最初は2人が姉妹の設定で、家族の話だったんです。一度プロットまで書いたんですけど、これでは2人が全く魅力的じゃないというか、この2人でやる意味がないなって思って止めたんです。そしたら書けなくなって。
山田: その後にも色々あったよね。2人が普段から仲が良くて、喋ってる会話が面白いから半ドキュメンタリーみたいな短編を別で撮りたいみたいな話もしてたよね。やれたらそれも面白かったって思う。
竹内: そうだったね。私が『みちていく』で詰まっちゃったから余裕がなくなって、結局それは撮れなかったんですけど。
———舞台が女子高ですけど、実は竹内監督は女子高出身ではないんですよね?
竹内: はい、私は共学出身です。スタッフで女子高だった子曰く、『みちていく』は実際の女子高の空気とは少し違うみたいですね。
山田: 私も自分の劇団で脚本を書く時に、男女の関係をあまり描かないんですけど、竹内も男女とか以前の人間の本質みたいなところを描く人だと思っていて、そこは通じてるって思うんです。男子もいる共学の高校の話だったら、余計なノイズが入ったと思うけど、もっとピュアな人と人との関係性を書くから、心情の細かい揺れまで描けるのかなって。
———京香率いるグループの感じなんかは女子高の感じが出てる気がします。あくまで男から見たイメージですけど。
竹内: そういう女子同士のダラダラ感は表現できてる気がします。最初の脚本の段階では、実は男の子も出てきていたんですよ。別の高校の男子陸上部の生徒が新田のことを好きで、その好意に対して新田はどうしたらいいか分からなくて、年上の恋人がいるみちるを見て自分の方が幼いって思っちゃうみたいなエピソードもあったんです。
———確かに新田に色恋的な話はないですよね。その分、田所朝子とのシーンが印象的で。山田さんが、「TAMA NEW WAVE」でベスト女優賞を受賞しましたけど、映画自体の話の軸が新田に寄っている感じもありますよね?
竹内: そうかもしれないです。みちるが悩んでいる姿にずっとフォーカスを当てたままにしたくないと思っていたので、前半はみちるの話があって、中盤で新田の話に移って、その間にみちるが落ち込んでいくみたいな構成にしようとは思ってましたね。
山田: そういう視点が竹内の良さだと思うんです。学生映画の場合、主人公だけを書き切っちゃったりしがちだと思うんですけど、違う視点を入れたり、お客さんを楽しませるって考えがあると思うので。
———群像が書けるってことですよね。主観性は作品に強度をもたらすことができるけど、振り切り方を間違えると自己陶酔になる恐れもあるから、ある程度の客観性はあった方がいいですからね。
竹内: そうなんです。その分、観た時にガツンとくるものは無いから、そういう意味での強度がないということは自分でも自覚しています。私はアクのある人間じゃないし、そういう作品を撮ろうとしていなかったので、衝撃がなくてもゆるやかに染みてくるような形の映画になっていればよいかなと思いますが…
山田: そのバランスも難しくて、だからこそ私は脚本を読んだ段階から、ラストシーンの芝居をする時は、この映画のクライマックスとして気持ちの面でお客さんが盛り上がるように芝居しようって思ってました。派手に芝居をするという意味ではないですが。
竹内: 今回は2人に細かい芝居の注文を付けてないんですけど、その中でも何シーンかだけは拘りたいところがあって、今言ったラストシーンや、プラネタリウムでのシーンは何度もリハをしました。
———プラネタリウムのシーンから話が動き出していく感じはありますよね。それで言うと、新田が書くノートと日記についても聞きたいんですけど。
竹内: 2人とも何か満たされない空白を抱えていて、みちるは噛み痕で、新田は文字で、その空白を埋めようとしているというようなことを考えていました。それに加えて、幼い時、中高生くらいまでは、死んだら忘れられてしまうという恐怖が大人よりも強くあるんじゃないかと思ったので、新田は書く事で何かを残したいという欲求を抱えているのではないかと思いました。
山田: 新田の書くっていう行為の演出は竹内らしいなって私は思った。
竹内: そうだね。観察記録として書いていたノートが、人との関わりを書き残す日記に変わっていくっていうのはやりたかったことなんです。劇中の台詞にも出てくるんですけど、何か生きてた証を書き残したいっていうのは私自身の気持ちなのかなとは思いますね。
———分岐点ですよね。プラネタリウムの中で2人が話すシーンは、それまで張っていた新田が無防備になりますよね。
竹内: プラネタリウムのやり取りだけは何度も2人を喫茶店に呼び出してリハをしましたね(笑)
山田: 確かに何度もしたね(笑) あそこは一番やったかもしれないですね。
———プラネタリウム以降、陸上部に関してのあれこれは、新田からみちるに切り替わるわけですよね。
竹内: そうですね。だから、新田の方がみちるより先を走っているんです。気持ち的に大人というか。
———新田寄りの話になるんですけど、さっきも出た田所朝子とのシーンなんですけど、山田さん演じる新田の受ける芝居がすごく良くて、あそこはかなり切り返しを多用してますよね。
竹内: そうですね。お店が狭いっていう物理的な理由と、あと私自身、切り返しが好きで、やり過ぎてもいけないと思いつつも使っています。
———切り返す度に、新田の表情がとてもいいです。
山田: ありがとうございます(笑)
竹内: 確かに表情がとてもよいです(笑)
山田: 田所役の西平せれなと私は劇団の公演でも一緒にやっていて、歌も唄える子で表現力が素晴らしいんです。
竹内: 西平さんは本当に天真爛漫で、橋の上のシーンは西平さんのおかげだなって思います。田所の持つピュアさに本当にマッチしたなって思います。
———新田と田所のシーンはサブエピソードですけど、印象深いです。その間にみちるは塞ぎ込んでいきますけど、みちるが恋人に噛んでもらうという自傷行為と、クラスメイトとの星野の行動が照らされていきますよね。
竹内: そうですね。でもあまり自傷行為が特別なように撮りたくはなくて。自傷行為をしたくなる気持ちは分かるけどそれを選択しないっていうのが世の中のスタンスになってほしいと思っているので。
山田: あれはみちるの無自覚な自傷行為だと思うんです。
竹内: リストカットにしなかったのは噛むという行為が映画として面白いなと思ったのもありますが、自傷行為について考える敷居を低くしたいという思いがありました。
———終盤の星野の行動は突然と言えば、突然でした。
山田: 傍目には突然のようなんですけど、彼女の中では突然じゃなくて、それは意識してたんじゃないかなって思う。
竹内: そうですね。星野の行動を突然と感じるか感じないかは、観ている人がみちると新田のどちらに近いかにも寄る気がします。
山田: この映画は「月の満ち欠け=人間が現れたり消えたり」みたいなことがテーマになっていると思うんですけど、当時の私達の周囲にも現れたり消えたりしている大学の先輩や同期っていたんです。映画を作っている人は、やっぱりナイーヴな人が多いから。急に失踪したりするのも私からしたらすべて突然でしたけど、彼らはたぶんずっと悩んでいたことで、人ってそれを繰り返して生きているんじゃないかって。
竹内: 山田から見ると、映画を作っていた仲間の失踪は突然だったかもしれないけど、私はその人達ともっと近い関係だったりしたのであまり突然感はなかったんです。そういう意味で、私は劇中のみちるに近くて、山田と劇中の新田は近い感覚なのかもしれないですね。
———月の満ち欠けの話は、みちるの姉、月子と新田の間でも交わされますよね。
竹内: 大人に近い存在を作りたかったんです。尺を気にしなければ、長い時間をかけてみちるが色々なことに気付いていく過程を描けるけど、そういうわけにはいかないので。月子は大人との架け橋のような存在ですね。
山田: すべてを見透かされているようなね。月子の視点はすごく優しくて、私も客観的に映画を観た時には、月子の視点で観るんです。お客さんも月子の視点で、昔そういう時代が自分もあったなって見守りながら観てくれるんじゃないかなって思う。
竹内: 脚本を書いてる時も月子の視点で思ったことを伝えるためには、どういうストーリーを書いたらいいかなって考えていました。
———映画についてざっと聞いてきましたけど、元々、竹内監督って何に感化されて映画を志すようになったんですか?
竹内: 私は大学の映画サークルには、脚本志望で入ってるんです。高校までは全く映画に関心がなくて、大学受験で心理学科か映像身体学科かのどちらかを選ぶ時に、深い考えもなく、映像身体学科に○をしたんです。
———今思えば、まさに人生の転機ですよね。
山田: あの○が人生の転機って見出しにして下さい(笑)
竹内: イメージとして、映像って映画以外の選択肢が無かったんですよね。でも実は中高生時代に夜な夜な携帯に物語を書いたりしてたんですよ。誰にも見せず、1人でただひたすら。それもあって脚本を書きたかったんですけど、先輩から「脚本やるなら監督もやらなきゃ駄目だよ」って言われて。それでやってみたら面白かったんですよ。あとは、これは色んなところで言っているんですけど、山中貞雄監督の『丹下左膳余話 百万両の壷』という映画を観た時、単純な壷にまつわる話なのに、すごく面白くて。それで映画の幅広さを知ったところもあったんです。
———立教に通いながら美学校、今は東京芸大に在籍っていう竹内監督の経歴もあるし、今回の映画に寄せるコメントも錚々たる方々からですけど、話の内容自体は女子高生の繊細な心情を描いた話だったりするので、普通の女子高生のお客さんも共感できる映画ですよね。
竹内: コメントを頂いた方々の映画は私自身好きですし、少なからず影響も受けているので、そこからこの映画に興味を持って頂けるのも嬉しいですし、一方で私、可愛い女の子が大好きなんです。だから、可愛い女の子が出てくるのかなって思って観に来て欲しいです。普段、あまり映画を観ない人達にも広がっていったらいいなって思います。
———例えばアフタートーク目当てで観に来たお客さんが映画を知るきっかけになるといいですね。次回作で、どういう作品を撮りたいっていうのはあるんですか?
竹内: 『みちていく』でも、小さなエピソードの重なりで大きなテーマを語るっていうことに挑戦しているのですが、その大きさをもっと大きくしたいと思っています。時代や社会の話というか。いまは普遍的な話をやろうという意識があるんですけど、そこに少しスパイスを加えたいなとは思ってますね。観た人に嫌な思いをさせたくないから普遍的な話を書いてる部分もあるんですけど、もう少し明確な当て先を作ってもいいかなとは思ってます。
———『みちていく』の持つような温度や空気感を大事にしつつ、少し歪なものも観てみたいですね。物語に限らず、配役や音楽など何でもいいですけど。
山田: そういうのも出来るって思う。それに、以前に撮った映画は尖ってる感じはあったよね。
竹内: 私、短編も撮っているんですけど、それは何かに特化したものを作っていましたね。そういう意味では、『みちていく』は、卒業制作だったこともあるんですけど、今、思ってる私のすべてのものを投入した総体的な作品なのかもしれないです。でも、これは21歳の時に撮った作品なので、次に撮る作品は、また新たなものになるような気がします。
山田: 『みちていく』は、竹内の今までの作品の中では一番、まろやかな作品なのかもしれない。もちろん良い意味で。すごくまろやか(笑)
———分かりました(笑) そんな作品を観て頂ける方々に向けて、一言ずつもらえますか?
山田: 私も映画をそんなに観てるわけではないですけど、瑞々しい感覚を味わえる映画だと思います。監督も私と同い年で若いし、卒業制作なので、私にとってはすごく身近で密な作品で、その空気は映画にきっと出ていて、それを味わえるのは自主映画ならではじゃないかと思います。でも私は自主映画のクオリティに留まっていないとも思うので、触ってはいけない芯の柔らかい部分に触れるような、そんな新鮮な気持ちで観て頂けるんじゃないかって思います。
———最後に、竹内監督お願いします。
竹内: 公開も近づいて、最近は『みちていく』について考えるんですけど、それって2年ぶりのことで。
———撮影から2年経つんですね。その間に熟成されたものというか、映画に対して、別の見え方というのは出てきましたか?
竹内: むしろ、映画を撮る前の気持ちに戻った感じがあります。スタッフやキャストの言葉が初心に戻してくれたというか。完成直後は映画の粗が気になってしまうんですけど、今になって、当時やりたかったことや伝えたかった気持ちを思い出せたというか。私もあれから映画について色々と学ばせてもらったんですけど、この映画が私の原点というか、映画を好きで、好きな仲間と撮ったらこんな作品が出来たという感じなんです。続けて行くと邪な考えが出てきたりするかもしれないですけど、そうじゃなくて、この気持ちをこれからも大事にしたいって思います。観て頂ける方と、対話が出来る作品になってればいいなって思います。私はこんなことを思ってるんだよねって、友達に話すようなラフな感覚なんです。みなさんにも気軽な気持ちで劇場に足を運んで頂けたらなって思います。
監督・脚本: 竹内里紗
2015年6月27日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー
★渋谷ユーロスペースにて、初日舞台挨拶&トークショー開催決定
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