アイドル「いずこねこ」主演映画企画として進行しながら、撮影前にその「いずこねこ」の活動が突如終了するなど困難を乗り越え、3/7に公開となった映画『世界の終わりのいずこねこ』。メガホンを取った気鋭の映像作家、竹内道宏監督と共同で脚本を手掛け、語り部的な役どころ、ミイケ先生役として出演も果たしている漫画家(本作のコミカライズ単行本も3/7発売)の西島大介氏によるプロダクションノートを短期集中連載。映画の立ちあがりから撮影、先行イベント、コミカライズなどを経て、映画公開に至るまでの悲喜交々を綴った記録を、スチールを担当された少女写真家の飯田えりかさんによる劇中写真&オフショット写真と共に公開。
2015年3月某日

横川シネマで『BiSキャノンボール』を観る。大笑いしながらもカメラが追うのは涙。笑って泣けて王道。しかし、アイドル運営という壁に阻まれ、硬直。あのカンパニー松尾さんですらアイドルの壁に苦労している姿を見て、「わかるわかる」と嬉しくなり気分爽快。
2015年3月某日

西島の方から独自に取材先も探し始める。とりあえず決定したのは隔月刊化しながらもWEB媒体cakes版がスタートした「SFマガジン」のインタビュー。編集長の塩澤快浩さんは西島の初めての単行本『凹村戦争』を手掛けた人で、アイドル映画『世界の終わりのいずこねこ』で僕は10年以上ぶりに「SF」を描けた気がしていたが、インタビュー中、手厳しく批判されているのは「ミイケ先生の演技」について。この記事から「映画を批判していい」ムードが漂い始めたと誰かに言われた。アイドルとファンだけの関係ではそうはならない。
⇒『世界の終わりのいずこねこ』公開記念 西島大介インタビュー | cakes(ケイクス)
一方、竹内道宏監督は、ずっと追いかけている神聖かまってちゃんメンバーにDVDを送り、メンバー全員からコメントをもらっていた。アイドルが動けない以上、頼れるのは古いご縁か。
2015年3月某日

西島不在で、パラボリカ・ビス展示内イベント「レイニー&アイロニーの木星人カフェ」開催。まど☆マギカフェを意識したイベントで、チケットは二日で完売。緑川百々子さん、永井亜子さんに加え、衣装の東佳苗さんも参加してくれた。
イツ子 (茉里)
2015年3月某日

プロモーション出張初日。K’s cinemaにて、森直人さん、九龍ジョーさんとアフタートーク。この三者は直井さんが仕掛ける映画コンペ「MOOSIC LAB」の審査員で、揃っての顔合わせは初めて。審査員としてそれぞれスタンスがあり、ステージ上では九龍さんから映画について厳しい意見がばんばん飛び出すが、不思議と気分がよい。
パンフレットに漫画を寄せた映画『おんなのこきらい』の加藤綾佳監督も来てくれて打ち上げ。加藤監督、かわいくてアイドルのよう。山戸結希監督同様、作品とかわいらしい本人合わせて「監督」として振る舞うことが出来るタイプ。竹内監督は二人の女流監督と比べると謙虚すぎる気もする。しかしその分ネットの気分を反映することに誰よりも長けているし、旧来の監督像とは違う形でファンと繋がっているのかもしれないと思う
2015年3月某日

出張二日目。六本木ヒルズA/Dギャラリーにて「くらやみ村 森のおばけ」展オープニング。ヒルズという場に地下アイドルを上げたら面白いのではないかと一時期考えたが、結果的にはアイドルを排したストイックな新作展となる。展示したアニメーションに実は声優として茉里さんが参加してくれていたが、飼い主さんなら見つけてくれると思い、告知せず。
2015年3月某日

出張三日目。都内都外の大型書店五店舗を回り、コミック版のサイン本を各書店20冊ほど置いて回る。半分はイツ子を描き、もう半分はスウ子。書店側には謎すぎるであろう自腹で作った販促グッズ「ミイケ先生」シールも置いていく。下北ヴィレジヴァンガードには、「プラニメが推すいずこねこコミック」というポップを描いた。マンガの中なら好き勝手しちゃおうという遊び心。いずこねこ無関係な夢眠ねむポップまで勝手に描く。「何でもありなんだ」というでんぱ組.incの歌詞が頭に響く。
夜はポレポレ東中野でカンパニー松尾監督と『BiSキャノンボール』アフタートーク。いずこねこ、BiS、アイドルや運営の垣根を超えた意義あるブッキングだと思う。映画については「90年代ああいう特撮AVあったね」と言われてしまう。BiSのお客さんを一人でも引っ張ろうと、「僕の映画で木星人アイロニーが食べてるインド風カレー、あれはテレキャノのラストで食べた○○○です。○○○好きの方観に来てください」とトーク。もう無茶苦茶!
2015年3月某日

出張四日目。秋葉原タワーレコードに突発営業。千代田3331に蓮沼執太くんの展示を観に行き、音響装置のエフェクターを踏んでしまい、コントロール不能、爆音に。これが爆音映画祭かなと思う。
秋葉原ディアステージで、ささかまリス子さんと事前打ち合わせ。震災後、お店の二階に上がったのは初めて。感慨深い。
パラボリカ・ビスの展示「蒼波純になって反対しよう!(でも何に?)」のコーナーから、プラカードを回収。ちなみに映画内で実際に使用された小道具ではなく、レプリカ。妄撮PことミスiDの仕掛け人、小林司さんにそれを手渡し、その夜のLoGiRLのミスiD番組内で使ってもらうことに。小林さんと喫茶店でしばし蒼波純さんについて深く語り合う。蒼波さんがポケベルのCM以前の広末涼子だとしたら、この映画は『20世紀ノスタルジア』かもしれないとかなんとか。
K’s cinemaに移動し、ディアステ―ジ店長、ささかまリス子さん、生徒役のひとりである木村仁美さん、竹内監督とK’s cinemaアフタートーク。監督は女性に気を使い自分のことや演出論をなかなか話さないが、最後の最後に監督らしいトークをしてくれ、「やっと出たね!」と客席の直井さんとアイコンタクト。
イツ子の父 (いまおかしんじ)
2015年3月某日

出張五日目。パラボリカ・ビスで、茉里さんとQJの対談収録。記事化された折には、プラニメのミズタマリとクレジットされる。不思議な感覚。ミイケ先生シールを「いずこねこ」現場をともに渡り歩いてきたキャリーバックに貼ってくれて光栄。
2015年3月某日

出張六日目。夕方「くらやみ村 森のおばけ」展にも少しだけ在廊し、夜は五反田ゲンロンカフェにてイベント「【さやわか式☆現代文化論 #16】さやわか×西島大介×濱野智史「映画『世界の終わりのいずこねこ』――アーキテクチャ、アイドル、コミック、その先へ」。批評家を経て映画にも出てくれたアイドルPIPプロデューサーとなった濱野さんの「運営側」からの意見が面白すぎ。映画関係者がいないのをいいことに、みんなで言いたい放題。さやわかさん含め、不思議と映画外部の人からは評判良く、映画を深く知る人ほど違和感を抱くのが『世界の終わりのいずこねこ』だと思う。それは僕の性質というより、やはり竹内監督の個性。「配信コメント」が雄弁に演技をし、物語や感情を伝える映画『世界の終わりのいずこねこ』を、僕は真剣に「主観カメラ以降の未来の映画」と思っている(コミック版は実は逆にスタンダードな表現だと思う)。「ネットに救われた」という竹内監督の言葉を思い出す。
唯一トークで話し忘れたことは、入江悠監督『AZM48 the movie ビギンズナイト』という東浩紀総指揮で作られたインディ映画について。何だったんだあれ?
2015年3月某日

出張七日目。ここから妻も合流し、昼過ぎに出演者の宍戸留美さん蝦名恵さんとパラボリカ・ビスでお茶会。いずこねこ、小明、宍戸留美という配役は、インディアイドル史を意識したもの。元祖インディアイドルとしての意見や心情、ある種の覚悟も聞けて、個人的にも大満足なイベント。
夜はご招待いただき、相対性理論とジェフ・ミルズのツーマン「回折III」へ。科学万博のようなライブを観ながら「なんだか映画になりそうだな」とか考えてしまう。ジェフ・ミルズのゲストで観に来ていたUMMA所属の音楽家のみなさんに久々に再会し、ミイケ先生シールを配る。写真家の新津保建秀さんもいて、やっぱりミイケ先生シールを配る。もう、なんでもあり!
滞在をもう一泊増やし、K’s cinemaへ駆けつけ、サクライケンタさんと吉田豪さんのトークを聞く。サクライさんが「いずこねこ」について語るのは今日で最後とのこと。「見届けた」気がした。会場に来ていた一部の飼い主さんたちも、同じ思いだったと思う。
直井さんに「ここまで来たから言うけど、疲れましたね。やっと一息。でも、映画っていつもこうなんですか?」と訊いたら、「いや、この映画が一番疲れました」とのこと。「どおりで禿げたわけだ!」と、ひとり嬉しくなって笑う。
2015年3月某日

永井亜子さんが猛烈に「ミイケ先生押し」してくれているという話をいろんな人から聞き、ありがたく思う。こうなったら推されるまま行くしかない、意味は解らなくとも、と思う。そうか、それがアイドルなのかもしれない。
「アイドル不在のアイドル映画」で、結果的にプロモーション後半は僕自身がシールを配り「ミイケ先生」として地下アイドル化することになってしまった。それはWWWラストライブの清竜人25から、いや2013年のド滑りチェキ会から、もっとさかのぼれば2011年のディアステージの絵を描いたあの時から、始まっていたのかもしれない。
と同時にコミック版を無理して刊行できて良かったなとも思う。映画について親戚が言った言葉は「え?大ちゃん脚本書いて映画でてるの?マンガも?マンガがなかったらただの出たがりだよね」。もしこの状況でコミック版が無かったら、結構危なかったかも(アイドルの魔)。
スウ子 (蒼波純)
2015年3月某日

広島に戻り娘に頭頂を見せると「あ!毛が戻ってる」とのこと。どうやらストレスによる軽い円形脱毛症だったみたい。もうすぐ東京上映は終わり。しかし、地方上映は続く。アイドルは一瞬の生き物、映画やコミックは永遠を生きる作品。映画が歴史化され記憶されていくのはここから。とにかく僕はこの映画をとっても気に入っているのだ。意味はわからなくても、声には出さず叫ぶ。よっしゃにゃんこー。
作品情報
『世界の終わりのいずこねこ』
監督・脚本・編集: 竹内道宏
共同脚本・コミカライズ: 西島大介
企画: 直井卓俊
原案・音楽: サクライケンタ
出演: 茉里(いずこねこ)、蒼波純、西島大介、緑川百々子、永井亜子、小明、宍戸留美、いまおかしんじ、蝦名恵、ライムベリー、みきちゅ、PIP、コショージメグミ、レイチェル、姫乃たま、あの / ようなぴ / しふぉん(ゆるめるモ!)、篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)、木村仁美、宗本花音里、Classic fairy、桃香(Peach sugar snow)、月詠まみ(恥じらいレスキュー)
配給: SPOTEED PRODUCTIONS
製作: ekoms+SPOTTED PRODUCTIONS
製作協力: CAMPFIRE
©2014『世界の終わりのいずこねこ』製作委員会
⇒公式サイトはこちら
★新宿K’sシネマにて、映画公開記念トークイベント開催決定!
■3月17日(火) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 森直人(映画評論家)、九龍ジョー(ライター)、西島大介(漫画家)
■3月19日(木) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 姫乃たま(地下アイドル/ライター)、直井卓俊(企画プロデューサー)、竹内道宏監督
■3月20日(金) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 西島大介(漫画家)、ささかまリス子(秋葉原ディアステージ)、竹内道宏監督
■3月22日(日) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 吉田豪(プロインタビュアー)、サクライケンタ(いずこねこプロデューサー)
■3月23日(月) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 宍戸留美(声優)、いまおかしんじ(監督)、竹内道宏監督
★地方上映スケジュール
■3月28日(土)、29日(日)【広島】 広島南区民文化センター(広島あにこむ2014)
■4月11日(土)〜17日(金)【大阪】第七藝術劇場
■4月18日(土)〜24日(金)【神戸】元町映画館
■5月1日(金)〜14日(木)【広島】横川シネマ
■5月2日(土)〜8日(金)【京都】立誠シネマ
■5月2日(土)〜8日(金)【愛知】シネマスコーレ
⇒コミックス版『世界の終わりのいずこねこ』全国書店&ECサイトにて発売中!
イベント情報
西島大介「世界の終わりのいずこねこ展」
期間: 2015年3月7日(土)~4月13日(月)
時間: 月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00
(イベントの際は異なる場合もございます。予めご了承ください。)
入場料: 500円 (開催中の展覧会共通)
会場: parabolica-bis[パラボリカ・ビス]
TEL: 03-5835-1180
【さやわか式☆現代文化論 #16】さやわか×西島大介×濱野智史
映画『世界の終わりのいずこねこ』――アーキテクチャ、アイドル、コミック、その先へ
日程: 2015年3月21日(土)
時間: 19:00~21:00 (開場:18:00)
PIPによるコミック単行本お渡し会も同時開催!
入場料: 前売2600円(1D付) / 当日3100円(1D付)
会場: ゲンロンカフェ
TEL: 03-5719-6821
「世界の終わりのいずこねこフェア」
日程: 2015年3月10日(火)~3月27日(金)
入場料: 無料
会場: BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿
TEL: 03-5312-2635
コミック版『世界の終わりのいずこねこ』単行本および西島大介さん過去作品、映画スチール担当の飯田えりかさんによる写真集、サクライケンタさんによるサントラ他関連CDなども販売予定。期間中、『世界の終わりのいずこねこ』ミニ原画展も開催! BIBLIOPHILIC & bookunion新宿限定・特製トートバッグ発売あり!
PROFILE
西島大介 Daisuke Nishijima
1974年東京生まれ、広島在住。漫画家。2004年に『凹村戦争』でデビュー。代表作に『世界の終わりの魔法使い』 『ディエンビエンフー』などがある。2012年に刊行した『すべてがちょっとずつ優しい世界』で第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭推薦作に選出。装幀画を多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義で音楽活動も行う。映画『世界の終わりのいずこねこ』脚本&出演など、活動は多岐に渡る。

飯田えりか Erika Iida
1991年東京都生まれ。少女写真家。2011年から青山裕企氏に師事する。2014年に日本大学芸術学部写真学科卒業。自らの経験による少女性の考察をもとに少女に戻すポートレート作品を主に制作。ショートカット推進委員会公認カメラマン、アイドルグループ「hanarichu」メインフォトグラファー。