【第7回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

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  • 2015.03.28

【第7回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

アイドル「いずこねこ」主演映画企画として進行しながら、撮影前にその「いずこねこ」の活動が突如終了するなど困難を乗り越え、3/7に公開となった映画『世界の終わりのいずこねこ』。メガホンを取った気鋭の映像作家、竹内道宏監督と共同で脚本を手掛け、語り部的な役どころ、ミイケ先生役として出演も果たしている漫画家(本作のコミカライズ単行本も3/7発売)の西島大介氏によるプロダクションノートを短期集中連載。映画の立ちあがりから撮影、先行イベント、コミカライズなどを経て、映画公開に至るまでの悲喜交々を綴った記録を、スチールを担当された少女写真家の飯田えりかさんによる劇中写真&オフショット写真と共に公開。

 

 

 

 

2014年11月某日

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カバー絵を担当した『ももクロニクル2011-2012 全力少女が駆けぬけた秋冬春夏』発売。実はイラストはずっと以前に仕上がっており、「もう出ないかも」とあきらめかけていた本。 lineA

 

2014年11月某日

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コミカライズ版『世界の終わりのいずこねこ』が、太田出版WEBコミック「ぽこぽこ」にてスタート。第一話は「fake town」。1ページ目には「失われた東京の文化」の象徴として秋葉原ディアステージのシャッターを配置。主人公をスウ子(蒼波純)に据え、映画とは世界を共有しながらも、視点の異なる内容に。映画出演アイドルを全員出すことや、宇宙戦闘や猫缶配給シーンを描くこと、SF設定やオチを明確にすること、スチル写真を配置し「実写感」を出すことなど、映画を補完することを強く意識した。ネームはペン入れ前に全話ぶんを完成。単行本刊行を映画公開日の3月7日と決め、ギリギリのスケジュールで連載スタート。年末年始は体調崩さないぞと誓う。 lineA

 

2014年12月某日

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渋谷WWWにて、いずこねこラストライブ「世界の終わりのいずこねこの終わりの始まり」開催。イベントタイトルはサクライケンタさんが命名。らしいなと思う。ライブと映画上映の間にコミカライズの告知タイムを作ってもらえたので、ぽこぽこ連載から切り抜いた出演者の似顔絵パネルを持参し、この日出演する生徒役のアイドルの皆さんにそれぞれに宣伝してもらうことにする。

 

告知タイムの内容についてイベント担当の岡島紳士さんと相談する中、直前にアイデアを思いつき、急遽「ミイケ先生」として清竜人25「Will You Marry Me?」を歌うことになる。

 

 

一方、広島神イベで距離が縮まった飼い主一同からラストライブに際して送るお花に添えるイラストを依頼され、もちろん快諾。そのやりとりの中で、逆にWWWラストライブイベントの構成に関してどう思うかと彼らに訊いてみたところ、「ワンマンの方が良かった」「必然性のない出演者もいる」などの反応。ならば明確に「ここからは茉里さん主役のライブだよ」という流れを作ったほうがいいなと考え、アイドルとプロデューサーの困難な関係性を「一夫多妻制」とうい発想で幸せに更新した清竜人25の曲を選び、「Will You Marry Me?」を「Will You 茉里 Me?」と読み替えて、イベント出演者20数名を従えて歌うことを思いついた。この内容については事前に一部飼い主に確認。もちろん出演アイドルにも。

 

果たしてそれが成功したか否かはわからないけれど、生徒役のアイドルの皆さんのご協力もあって、やりきった感はあり、「Will You Marry Me?」を歌う中で「どうして解散するんだよー」と本音めいたアドリブも決める。物販で隣り合わせたプロデューサー小林清美さんとCDを交換したり、同じく隣にいた姫乃たまさんとチェキを撮り合ったり、物販も楽しく、DJまほうつかいのCDも勢いで沢山売れた夜。ステージで歌い踊る茉里さんも印象的だったけど、ミキサー卓で曲を出すサクライケンタさんの後ろ姿も忘れがたかった。

 

しかし、ここから先はいずこねこ本体には話題がない、公開までコミカライズを淡々と更新し話題を繋げればと考える。 lineA

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クラスメイト (あの(ゆるめるモ!))

 

2014年12月某日

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WWWラストライブ翌日、誘われて担当編集の村上さんとライムベリーワンマン公演へ。昨日のいずこねこの「終わり」と反対に、「伸びしろ」しか感じない幸せいっぱいのライブを堪能。僕よりも村上さんが感動したようで「初めてアイドルにハマったかもしれません」と一言。もちろんこの時は、約二か月後にライムベリーを待ち受ける運命を知らない。

 

その足で夜、ストゥディオ・パラボリカにてデザイナーのミルキィ・イソベさん、ギャラリー・オーナーの今野裕一さんと打ち合わせ。今野さんのギャラリー「パラボリカ・ビス」での展覧会の開催も具体化。ミルキィさんの装丁は、2003年の東浩紀 編・著『網状言論F改―ポストモダン・オタク・セクシュアリティ―』以来。感慨深い。 lineA

 

2014年12月某日

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集中してマンガの作業を進める中、ふいに今この世界で「いずこねこ」のことを考えているのは僕だけかもしれない。そんな孤独な気分になる。撮影現場でぼんやりとしていたサクライケンタさんの気持ちが少しわかった気がした。 lineA

 

2014年12月某日

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コミカライズ第二話「jupiter girl」更新。「ホメられて伸びるタイプのweb連載空間」とは「ぽこぽこ」のキャッチコピーだが、フキダシによってマンガの上からコメントが書ける変わったシステム。これは人気投票に使えるなと思い、登場アイドルそれぞれの人気を測ってみることに。PSS桃香さんとclassic fairyさんが茉里さんや蒼波さんを抑えて目に見えて大人気。強い「推し」を感じ、後に登場回を増やすことに。 lineA

 

2015年1月某日

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コミカライズ第三話「rainy irony」更新。レイニー役の緑川百々子さんは桁外れの再生数をはじき出したミスiDコンテスト号泣動画を参照して盛大に泣かせ、映画では「ふんふん」としか言わないアイロニー役の永井亜子さんは皮肉屋(アイロニー)を超えて毒舌キャラに再設定。ディアステージの看板もそうだが、「いずこねこ」という一アイドルを超えて、映画と現実を混ぜ込んでいくことが楽しい。スケジュールはぎりぎり。 lineA

 

2015年1月某日

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ラストライブを経て、出演者のプロモーション稼働について、うまくいっていないことが伝わってくる。元BiSコショージメグミがサクライケンタプロデュースのMaison book girlに加入し、いずこねこ茉里さんが元BiSカミヤサキさんとBiSを手掛けた渡辺プロデューサーの元でプラニメとして活動しているのだから、状況は複雑(当時の関係者のツイートを読めば部外者でもわかること)。

 

一方、ももいろクローバーZが「史上最大のプロモーション大作戦」を発表。『幕が上がる』全上映映画館で舞台挨拶をするという。シネコンというメジャーな場所で、ド地下なアイドル商法を慣行することが発表され、完全にお手上げと感じる。米軍の本土空襲を知った竹やり部隊の気持ちってこれかな、とも思う。あのトップアイドル「ももクロ」が、地下戦法でプロモーションをやりきることに恐怖を感じたし、だったら『世界の終わりのいずこねこ』も、せめて茉里さんが全上映舞台に立つとかそういうことできないのか?とも思ったけど、「終わっている」のだから仕方ないし、その「終わり」こそが、映画やコミカライズを他にはない作品にしているとも思う。また僕がそれを言う立場でもない。「アイドル不在のアイドル映画」をしみじみと感じる。 lineA

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クラスメイト (ようなぴ(ゆるめるモ!))

 

2015年2月某日

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娘が僕の頭を見て「あれ?パパ禿げてない?」と騒ぐ。妻も「あ!禿げてる」と。割と毛量が多い僕だけど、アイドルのストレスで禿げてしまったのだろうか? 「おでこから来る派と頭頂から来る派があるっていうけど、あなたが頭頂派ってことはわかった」と妻。 lineA

 

2015年2月某日

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コミカライズ第四話「last summer」更新。WEB連載とはいえ、3月7日には単行本を出すので結局紙のスケジュールに縛られ、とてもタイト。 lineA

 

2015年2月某日

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コミカライズ最終話「e.c.l.s」更新。実は単行本のスケジュールがWEB連載を追い越し、校了したのは紙の本が先。 lineA

 

2015年2月某日

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後藤まりこ、活動休止。アイドルの魔を感じる。 lineA

 

2015年2月某日

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ライムベリーからメンバー二名が脱退。担当編集村上さん落胆。この映画の制作、公開中に、いずこねこ茉里、ライムベリーのDJ HIKARUとMC HIME、Maison Book Girlの宗本花音里がアイドルを辞めることになる。 lineA

 

2015年3月某日

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SPOTTED直井卓俊さんからK’s cinemaレイト上映でトークイベントを組めないかとの相談。僕は映画スタッフは監督以外前に出ず、出演者のみなさんが交代で舞台挨拶や取材に応じてくれることがベストと考えていたけど、そうも言っていられなさそうな気配。予算を配給と版元で組んでもらい、関連展示と個展を含め、6日ほどのプロモーション出張を組む。

 

コミック版の特典としては、サントラ盤を限定販売しているタワーレコード、そしてHMVでだけ茉莉さん、蒼波純さんの写真をあしらった特製帯を配布。新宿タワーレコードでお二人による「お渡し会」を考えていたが、編集、営業サイドのアイドル商法の不理解もあり、足並みそろわず実現せず。特製帯まで作ったのに痛恨。「こうなったら西島が単独でサイン会してDJまほうつかいで滑り倒します」と申し出るも、基本200人の集客が必要とのことで断られてしまう。アイドル系インストアイベントの聖地新宿タワレコのスケール感を思い知る。 lineA

 

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イツ子の母 (宍戸留美)

 

2015年3月某日

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3月7日、新宿K’s cinemaにて、映画『世界の終わりのいずこねこ』公開。同日コミック版『世界の終わりのいずこねこ』無事刊行。既に、いずこねこではない茉里さんの舞台挨拶は初日のみ。それでもコミック単行本にサインをして笑顔で売ってくれたそうで、ありがとうと広島から思う。満員御礼だったそう。

 

翌日はレイニー&アイロニー役の緑川百々子さん、永井亜子さんによる舞台挨拶。満員御礼。でも劇場が満員になったのはこの二回の上映とレイトショーの最終上映だけだった。明らかに映画のピークは渋谷WWWのラストライブであり、ピークアウトしているのが今の状態だなと感じる。アイドルは一瞬、でも映画は永遠と、自分に言い聞かせる。 lineA

 

 

■第7回は3月27日更新

 

作品情報 『世界の終わりのいずこねこ』

 

 

監督・脚本・編集: 竹内道宏
共同脚本・コミカライズ: 西島大介
企画: 直井卓俊
原案・音楽: サクライケンタ
出演: 茉里(いずこねこ)、蒼波純、西島大介、緑川百々子、永井亜子、小明、宍戸留美、いまおかしんじ、蝦名恵、ライムベリー、みきちゅ、PIP、コショージメグミ、レイチェル、姫乃たま、あの / ようなぴ / しふぉん(ゆるめるモ!)、篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)、木村仁美、宗本花音里、Classic fairy、桃香(Peach sugar snow)、月詠まみ(恥じらいレスキュー)
配給: SPOTEED PRODUCTIONS
製作: ekoms+SPOTTED PRODUCTIONS
製作協力: CAMPFIRE
©2014『世界の終わりのいずこねこ』製作委員会

 

⇒公式サイトはこちら

 

★新宿K’sシネマにて、映画公開記念トークイベント開催決定!
■3月17日(火) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 森直人(映画評論家)、九龍ジョー(ライター)、西島大介(漫画家)
■3月19日(木) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 姫乃たま(地下アイドル/ライター)、直井卓俊(企画プロデューサー)、竹内道宏監督
■3月20日(金) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 西島大介(漫画家)、ささかまリス子(秋葉原ディアステージ)、竹内道宏監督
■3月22日(日) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 吉田豪(プロインタビュアー)、サクライケンタ(いずこねこプロデューサー)
■3月23日(月) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 宍戸留美(声優)、いまおかしんじ(監督)、竹内道宏監督

 

★地方上映スケジュール
■3月28日(土)、29日(日)【広島】 広島南区民文化センター(広島あにこむ2014)
■4月11日(土)〜17日(金)【大阪】第七藝術劇場
■4月18日(土)〜24日(金)【神戸】元町映画館
■5月1日(金)〜14日(木)【広島】横川シネマ
■5月2日(土)〜8日(金)【京都】立誠シネマ
■5月2日(土)〜8日(金)【愛知】シネマスコーレ

 

 

⇒コミックス版『世界の終わりのいずこねこ』全国書店&ECサイトにて発売中!
イベント情報 西島大介「世界の終わりのいずこねこ展」
期間: 2015年3月7日(土)~4月13日(月)
時間: 月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00
(イベントの際は異なる場合もございます。予めご了承ください。)
入場料: 500円 (開催中の展覧会共通)
会場: parabolica-bis[パラボリカ・ビス]
TEL: 03-5835-1180

 

【さやわか式☆現代文化論 #16】さやわか×西島大介×濱野智史
映画『世界の終わりのいずこねこ』――アーキテクチャ、アイドル、コミック、その先へ
日程: 2015年3月21日(土)
時間: 19:00~21:00 (開場:18:00)
PIPによるコミック単行本お渡し会も同時開催!
入場料: 前売2600円(1D付) / 当日3100円(1D付)
会場: ゲンロンカフェ
TEL: 03-5719-6821

 

「世界の終わりのいずこねこフェア」
日程: 2015年3月10日(火)~3月27日(金)
入場料: 無料
会場: BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿
TEL: 03-5312-2635
コミック版『世界の終わりのいずこねこ』単行本および西島大介さん過去作品、映画スチール担当の飯田えりかさんによる写真集、サクライケンタさんによるサントラ他関連CDなども販売予定。期間中、『世界の終わりのいずこねこ』ミニ原画展も開催! BIBLIOPHILIC & bookunion新宿限定・特製トートバッグ発売あり!

PROFILE 西島大介 Daisuke Nishijima
1974年東京生まれ、広島在住。漫画家。2004年に『凹村戦争』でデビュー。代表作に『世界の終わりの魔法使い』 『ディエンビエンフー』などがある。2012年に刊行した『すべてがちょっとずつ優しい世界』で第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭推薦作に選出。装幀画を多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義で音楽活動も行う。映画『世界の終わりのいずこねこ』脚本&出演など、活動は多岐に渡る。

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飯田えりか Erika Iida
1991年東京都生まれ。少女写真家。2011年から青山裕企氏に師事する。2014年に日本大学芸術学部写真学科卒業。自らの経験による少女性の考察をもとに少女に戻すポートレート作品を主に制作。ショートカット推進委員会公認カメラマン、アイドルグループ「hanarichu」メインフォトグラファー。