【第5回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

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  • 2015.03.23

【第5回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

アイドル「いずこねこ」主演映画企画として進行しながら、撮影前にその「いずこねこ」の活動が突如終了するなど困難を乗り越え、3/7に公開となった映画『世界の終わりのいずこねこ』。メガホンを取った気鋭の映像作家、竹内道宏監督と共同で脚本を手掛け、語り部的な役どころ、ミイケ先生役として出演も果たしている漫画家(本作のコミカライズ単行本も3/7発売)の西島大介氏によるプロダクションノートを短期集中連載。映画の立ちあがりから撮影、先行イベント、コミカライズなどを経て、映画公開に至るまでの悲喜交々を綴った記録を、スチールを担当された少女写真家の飯田えりかさんによる劇中写真&オフショット写真と共に公開。

 

 

 

 

2014年8月某日

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生徒全員が地下アイドル、出演者で男性はミイケ先生役の僕一人だけという、異常事態の撮影は続行。今でこそ、コミカライズを経てすべての出演者を理解しているけど、撮影時は主要キャスト以外は全く判別がつかず。かろうじてゆるめるモ!とライムベリーは名前だけは聞いたことがあるという状態。当時誰一人として顔と名前が一致しなかった「関西新東京市第6高等学校」の生徒役は以下。

 

MC MIRI、MC HIME、DJ HIKARU(ライムベリー)
あの、ようなぴ、しふぉん(ゆるめるモ!)
コショージメグミ
レイチェル
姫乃たま
みきちゅ
篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)
木村仁美
宗本花音里
Classic fairy
桃香(Peach sugar snow)
月詠まみ(恥じらいレスキュー)
工藤千里、小室詩織、澤村まどか、髙城桃花、橋口唯、福田蘭奈、瑞野由佳(PIP)

 

控室の大会議室では、アイドル同士が楽しそうに談話し、楽しそうに顔を寄せ合い写真を撮り、ブログやツイッターにアップ。楽しげなムード(実は必ずしもそうでないことを後に知る)。その横で、僕はすることもなく、妻と「アイドル、みんな、若いよね」というような会話をして暇をつぶしていた。だから、楽屋にキャスティング協力のエピックソニー田口さんや、生徒役のアイドルPIPのプロデューサー濱野智史さんが現れた時はほっとした。田口さんは以前AZUMA HITOMIさんのアートディレクションで仕事をした相手、濱野さんはさらに以前、彼がまだ批評だけを手掛けている頃にクリエイティヴ・コモンズ関連のインタビューでお会いしている。それぞれにアイドルという重力に引かれて、こうして撮影現場で再会するなんて面白いなと思った。向こうからすれば「西島さんこそ何やってるんですか?」って感じかもしれない。 lineA

 

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クラスメイト (姫乃たま)

 

2014年8月某日

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学校での撮影続行。この学校に通っているらしい男子生徒が、チラチラと撮影風景を覗いている。男子高校生なら絶対にこの光景を「企画もののAVの撮影」と思ったはずだと確信したけど、アイドルに失礼と思って誰にも言わず。食堂で食べたケータリングのカレーが美味しかった。

 

撮影帰り新宿へ向かうロケ車のなかで、茉里さん小明さんと一緒になる。2人の会話が面白く、また、同じインディアイドルとして先輩たる宍戸留美さんへのリスペクトが印象的。とはいっても撮影現場は楽しいことばかりではなく、出演者が泣いている姿を見たこともあったし、実はギスギスした空気もあったと思う(女性が、しかも自意識の強いアイドルたちが集まればそういうこともあるよねと、今では思う)。

 

一方、脚本段階においては創作者としてのプロ意識を持って竹内監督と激しくやり取りをした僕だが、撮影現場においては「俳優は本業でないし、自ら望んだわけでもない」ということで完全にリラックス。正直何も考えておらず、演技することすらも頭になく、役作りもせず、ただそこにいただけ。プロである撮影スタッフさんには特に厳しいことは言われなかったけど、今思えば「大丈夫かこの人で?」と心配されていたと思うし、実際大丈夫ではなかった気もする。

 

ところで竹内監督は現場では全く高圧的ではなく、「はい、良いですね」というような柔らかい物腰。前作『新しい戦争を始めよう』では自身でカメラをぶん回していた印象だが、今回はプロの撮影班に撮影を任せ、一歩引いて静かに見守っている印象。静的な撮影を経た上での「配信コメント」を含む過剰にネット的な編集こそが竹内監督の本領発揮だろうな、と秘かに思う。 lineA

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クラスメイト (篠崎こころ(プティパ -petit pas!-))

 

2014年8月某日

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朝からスタッフ&キャスト車に乗って茨城県へ。運転してくれたメイクさんとの道中の会話が楽しい。二日間、都内私立学校の撮影を終え、映画の撮影隊というものは軍隊に似ているなと感じる。鬼軍曹的な照明さん、撮影さんがいて、ヘルプで入ったスタッフは檄を飛ばされ、メイクさん衣装さんは野戦病院のナースのように癒し系。ケータリングという食糧の確保によって現場の士気は上がりもするし下がりもする。まさに戦争。ふとフランシス・フォード・コッポラ『地獄の黙示録』に思いをはせる。

 

ロケ地は元製紙工場だった場所。いずこねこ『最後の猫工場』から「廃工場」という設定を発想したけど、ここまで広大な巨大廃工場が用意されているとは知らず、驚く。後に知ったことだが、この場所はももいろクローバーZ「Z女戦争」やCAPSULE「Another World」のMVにも使われた有名な場所で、あの映画『進撃の巨人』もここで撮影されるらしい。海外ロケを好まなかったスタンリー・キューブリックがイギリス本国でベトナム戦争を撮った『フルメタル・ジャケット』のエピソードを思い出し、「あ、日本でもベトナム戦争撮れるな」と思った。「アンドレイ・タルコフスキー『ストーカー』のゾーンの風景も撮れそうだな」とも。

 

巨大廃工場に気持ちが上がり、初めて「役作りだ」と工場を隅から隅まで歩くが、実は工場での西島の登場シーンはゼロ(既に脚本読んでいるのかどうかも怪しい事態)。僕と同じように撮影に同行したサクライケンタさんも、環境音を採取しているのか工場をフラフラ歩いていた。午後は工場に停めてあったボロボロの自転車を借りて海へ出る。この海岸線を北上すると、いわき市があって福島第一原発があるんだなと、海を眺めて思う。

 

初日の撮影を深夜まで粘り、夜中にゴルフクラブの宿泊施設に到着。みんなへとへと。蒼波純さんがマネージャーさんや保護者なしに宿泊するとのことで、同い年の娘を持つ身として急に心配になる。男部屋、女部屋と分かれ、僕は竹内監督、サクライさん、音響さんと同じ部屋に。さながら修学旅行のようだが、撮影班は翌日早朝出発なので、少しでも寝ないと体力が削られていく状況。サクライさんが、「脚本について思うところがあって」と修学旅行の告白タイムのように話し始めたが、とりあえず竹内監督には先に寝てもらい、僕が聞き役に。蒼波さんへの心配もそうだけど、なんとなく「父」のようにふるまっていることに気付く。僕は出演者の中で3番目に年上なのだ。 lineA

 

2014年8月某日

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朝方、西島の出演箇所の撮影は終了。お花をもらい、「おおー、映画ぽい」と思う。そういえば僕のセリフ覚えの悪さと、撮影時のトラブルで、茉里さんと僕の手が触れあうシーンが削られてしまった。この映画は誰かと誰かが抱擁するとかキスするとか手をつなぐとか、そんな映画らしいシーンが全くない。僕のせいか、竹内監督のせいか、サクライさんのせいか、例えば蒼波純というキャストも被りSNSとアイドルという題材も近い松居大吾監督『ワンダフルワールドエンド』と比べるとわかりやすいけれど、「童貞的潔癖さ」みたいなものが『世界の終わりのいずこねこ』の特徴だと思う。

 

本日から、緑川百々子さん永井亜子さんのレイニー&アイロニー木星人コンビと、いまおかしんじさんが合流。入れ替わりに挨拶だけして、僕はスーパーひたちで東京へ戻る。 lineA

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クラスメイト (桃香(Peach sugar snow))

 

2014年8月某日

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広島クアトロへでんぱ組.incのライブを中一になった娘と一緒に見に行く。ちょっと前までは見向きもしなかった娘が、「でんぱ組?行きたいー!」と好反応。シングル「ちゅるりちゅるりら」がリリースされ、小堺一機の「ごきげんよう」にも出演した時期。僕が思うに中学生は「みんなが好きなものが好き、イケてるものが好き」であり、でんぱ組もいよいよそうなってきたんだなと思った。

 

会場は男性席、女性席と分かれており、僕は柵をひとつ挟み男性席、娘は一段階段が上の女性席へ。チラチラ目線を送り安否を気遣う(が、うざがられる)。大盛況に、「本当に大きくなったんだな」と感動。でんぱ組を生んだお店「ディアステージ」シャッターに絵を描いたのは2011年震災直前の二月。その後、僕は実家のある広島へ一時避難したが、そんなことができる自由業は稀で、「ディアステ」という場所に縛られたアイドルたちはその場所で堪えるしかなかったはずで、当時僕は「こんな状況下でアイドルという職業は辛すぎる、いっそ全部捨ててどこかへ行ってしまえば楽なのに」と内心思っていた。

 

4月に薄暗い東京へ行くことがあったけど、節電のために渋谷の街が暗くて驚いたし、そのぶん二月の秋葉原は夢のように輝いていたなと感じた。三階のバーのお酒がたくさん割れたとも聞いたし、「節電ライブ」という感動的な試みもあった。MARQUEEから刊行された「でんぱブック」にコメントを求められた時にも、他の寄稿者のように「勇気をもらった」「元気が出た」とは書けず、「みんなどうか、お元気で」と言うような力ないコメントしか出せなかった。

 

ライブでは、その頃のことが思い出され、「みんな、それぞれの持ち場でがんばって大きくなったんだな」不覚にも涙がこぼれた。楽屋へ行き挨拶。娘を紹介すると、いつも強気な娘がガチガチに緊張。「テレビとおんなじだー!」と大興奮。娘に「アイドル観て泣いている」ところを見つからなくてよかった。男子席女子席、でんぱ組に感謝。 lineA

 

 

■第6回は3月25日更新

 

作品情報 『世界の終わりのいずこねこ』

 

 

監督・脚本・編集: 竹内道宏
共同脚本・コミカライズ: 西島大介
企画: 直井卓俊
原案・音楽: サクライケンタ
出演: 茉里(いずこねこ)、蒼波純、西島大介、緑川百々子、永井亜子、小明、宍戸留美、いまおかしんじ、蝦名恵、ライムベリー、みきちゅ、PIP、コショージメグミ、レイチェル、姫乃たま、あの / ようなぴ / しふぉん(ゆるめるモ!)、篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)、木村仁美、宗本花音里、Classic fairy、桃香(Peach sugar snow)、月詠まみ(恥じらいレスキュー)
配給: SPOTEED PRODUCTIONS
製作: ekoms+SPOTTED PRODUCTIONS
製作協力: CAMPFIRE
©2014『世界の終わりのいずこねこ』製作委員会

 

⇒公式サイトはこちら

 

★新宿K’sシネマにて、映画公開記念トークイベント開催決定!
■3月17日(火) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 森直人(映画評論家)、九龍ジョー(ライター)、西島大介(漫画家)
■3月19日(木) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 姫乃たま(地下アイドル/ライター)、直井卓俊(企画プロデューサー)、竹内道宏監督
■3月20日(金) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 西島大介(漫画家)、ささかまリス子(秋葉原ディアステージ)、竹内道宏監督
■3月22日(日) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 吉田豪(プロインタビュアー)、サクライケンタ(いずこねこプロデューサー)
■3月23日(月) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 宍戸留美(声優)、いまおかしんじ(監督)、竹内道宏監督

 

 

⇒コミックス版『世界の終わりのいずこねこ』全国書店&ECサイトにて発売中!
イベント情報 西島大介「世界の終わりのいずこねこ展」
期間: 2015年3月7日(土)~4月13日(月)
時間: 月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00
(イベントの際は異なる場合もございます。予めご了承ください。)
入場料: 500円 (開催中の展覧会共通)
会場: parabolica-bis[パラボリカ・ビス]
TEL: 03-5835-1180

 

【さやわか式☆現代文化論 #16】さやわか×西島大介×濱野智史
映画『世界の終わりのいずこねこ』――アーキテクチャ、アイドル、コミック、その先へ
日程: 2015年3月21日(土)
時間: 19:00~21:00 (開場:18:00)
PIPによるコミック単行本お渡し会も同時開催!
入場料: 前売2600円(1D付) / 当日3100円(1D付)
会場: ゲンロンカフェ
TEL: 03-5719-6821

 

「世界の終わりのいずこねこフェア」
日程: 2015年3月10日(火)~3月27日(金)
入場料: 無料
会場: BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿
TEL: 03-5312-2635
コミック版『世界の終わりのいずこねこ』単行本および西島大介さん過去作品、映画スチール担当の飯田えりかさんによる写真集、サクライケンタさんによるサントラ他関連CDなども販売予定。期間中、『世界の終わりのいずこねこ』ミニ原画展も開催! BIBLIOPHILIC & bookunion新宿限定・特製トートバッグ発売あり!

PROFILE 西島大介 Daisuke Nishijima
1974年東京生まれ、広島在住。漫画家。2004年に『凹村戦争』でデビュー。代表作に『世界の終わりの魔法使い』 『ディエンビエンフー』などがある。2012年に刊行した『すべてがちょっとずつ優しい世界』で第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭推薦作に選出。装幀画を多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義で音楽活動も行う。映画『世界の終わりのいずこねこ』脚本&出演など、活動は多岐に渡る。

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飯田えりか Erika Iida
1991年東京都生まれ。少女写真家。2011年から青山裕企氏に師事する。2014年に日本大学芸術学部写真学科卒業。自らの経験による少女性の考察をもとに少女に戻すポートレート作品を主に制作。ショートカット推進委員会公認カメラマン、アイドルグループ「hanarichu」メインフォトグラファー。