【第4回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

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  • 2015.03.16

【第4回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

アイドル「いずこねこ」主演映画企画として進行しながら、撮影前にその「いずこねこ」の活動が突如終了するなど困難を乗り越え、3/7に公開となった映画『世界の終わりのいずこねこ』。メガホンを取った気鋭の映像作家、竹内道宏監督と共同で脚本を手掛け、語り部的な役どころ、ミイケ先生役として出演も果たしている漫画家(本作のコミカライズ単行本も3/7発売)の西島大介氏によるプロダクションノートを短期集中連載。映画の立ちあがりから撮影、先行イベント、コミカライズなどを経て、映画公開に至るまでの悲喜交々を綴った記録を、スチールを担当された少女写真家の飯田えりかさんによる劇中写真&オフショット写真と共に公開。

 

 

 

 

2014年7月某日

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タワレコで買ってきた、いずこねこのライブDVD『猫と煙と赤いカーテン』を観る。弦楽器やマリンバを含む、生バンドを従えての東京キネマ倶楽部のワンマン公演、素晴らしい内容!アイドルとして地下から上がってきた茉里さんの堂々たるパフォーマンス。サクライさんへの照れにも似た、夫婦漫才的な雑な扱いにも笑う。茉里さんの魅力をこのDVDで初めて確認し、「あ、この娘はすごいんだな」と初めて実感。横で観ていた妻も「あ、この娘、歌好きなんだね」と一言。今までできるだけアイドルそのもの、つまり茉里さんを見ないようにして脚本をまとめていたけれど、ここからそれが少し変わっていくことに…。 lineA

 

2014年7月某日

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第四稿を受け、大幅な変更を加えた第五稿を竹内監督、直井さんに送る。コミカライズすることを前提に脚本を追うと、どうしても「よくわからないシーン、回収されない伏線、意味のない設定」が気になってしまうからゴリゴリ直す。さらに、ミイケ先生のこの台詞を僕が演じて話すのかとイメージすると、「説得力のない台詞」は喋れないと思ってしまう(役者でもないのに偉そう)。役をふられたことにより、脚本作業に当事者意識が生まれ始める。 lineA

 

2014年7月某日

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第五稿に竹内監督、直井さんともに難色。CAMPFIREパトロンさん向け上映会が10月19日に設定されていたので、スケジュールの問題もあると思うし、僕がアクセル踏みすぎたことも災いしている。以下はそれでもしつこく食い下がる僕のメール。

 

「今回の大改編は、DVD(『猫と煙と赤いカーテン』)を見たことにもよります。ま、僕はあれを見て「いずこねこすごいね」「よいね」と率直に思った。「なんで解散するんだよ、武道館くらいめざせよ」とも。ようやくにしてファンの心理と、彼女の魅力を理解できたので、後手後手になってすみませんと思いつつ、スケジュールぶっとばしても、ここは第五稿で行くしかない!」

 

「スケジュールぶっとばしても」はさすがに言い過ぎ。でも「なんで活動停止なんだよ、武道館くらいめざせよ」は今でもそう思う。

 

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2014年7月某日

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そうこうしているうちに、茉里さんは新ユニット「プラニメ」を始動。サクライさんは解散したBiS、コショージメグミさんを中心にユニット結成を告知。アイドルの動きは早い。みんなアイドルでいられる時間が短いと解っているからかなと思う。 lineA

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スウ子 (蒼波純)

 

2014年7月某日

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太田出版の村上さんと大阪在住の漫画家ai7nさんの新刊『ミミクリ』の推薦帯についてのやり取り。この映画への関わり同様、横川シネマの手伝いが縁で出会った新人マンガ家さんが雑誌「TRASH-UP!!」などで活躍するai7nさん。神戸ハーバーランドのヴィレッジヴァンガードでの「世界の終わりの魔法使い」グッズのサイン会で一緒に絵を描いてもらったこともいい思い出。これも縁と思い、最初に言ったこと(「もっと遠く、意外な場所で発表したほうがいいのでは?」)を覆し、ぽこぽこへ連載企画を持ち込む。公開までに一冊にまとめるというタイトなスケジュールなら、web連載が適しているとも思った。 lineA

 

2014年7月某日

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webコミックということで「やわらかスピリッツ」「となりのヤングジャンプ」などにも担当編集さんづてに話をふってみるが、特に反応なし。 lineA

 

2014年7月某日

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脚本について最終的なやり取り。静かに火花が散る。現状の脚本では映画にならない、撮影中に映画自体を疑うことになると言う僕に、「何が正解なのか、何が映画らしいのかは誰にも分かりません。ただ、僕は監督する以上、自分がイメージできる映画を作りたいと考えています」と答える竹内監督。それに対して、「これ(上記の返答)は非常に感覚的かつ、ちんぐ監督らしい言葉です。これでいいのかなとも思います。基本的に、映画はちんぐ監督のものだと思っているので、無理強いはしないので安心してください。ただ、僕としては「納得いくまで鬼の直し」or「素材としての世界観提供」の二択。後者でいくならそれでOK。物語作家としての責任感としては、つまり脚本&漫画家である僕の責任を果たすなら、「鬼直し!!」です」と僕。竹内監督に対して、今読むと完全に圧力、パワハラ…。でも気がつくと呼び方が「ちんぐ先生」から「ちんぐ監督」になっている。ここで消えた「鬼直し!!」の可能性は、コミカライズに引き継がれることに。 lineA

 

2014年7月某日

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コミカライズについて、この時点で、スウ子=蒼波純視点というアイデアが出る。『ツイン・ピークス』の小説編『クーパーは語る』ってあったなと、ふと思い出す。 lineA

 

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ヤマト先生 (小明)

 

2014年8月某日

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「MOOSIC LAB 2014」の審査。審査員として他人の映画を評しながら、脚本書いて映画に出るっていいのだろうか?とも少し思ったけど、そんなツッコミ何処からもないので気にせず続行。僕の総評は以下。

 

「MOOSIC LAB 2014」は、常連だった平波亘さんや、監督ではないものの常に関わり続けてきた大森靖子さんが卒業。と、同時に作り手の自意識こじらせ系男子映画が激減(横山真哉さん以外)。昨年の三浦直之(ロロ)さんの成功を受けてか、子供鉅人、ヨーロッパ企画、吉開菜央さんら演劇・ダンス勢が台頭。若手黒田将史さんや宮本杜朗さんら関西勢の人を食ったような作風が混沌を呼ぶ一方、ふぇのたす、カネコアヤノさんなど参加音楽家もポップ化。予算も役者陣も大幅に底上げされた感じ。メジャー感あります。

 

『おんなのこきらい』は、超絶カワイイ森川葵さんをズブズブと沈めていく手つきが恐ろしい作品。「こんな映画だろう」というこちらの先入観を底なしに更新していく作品で、加藤綾佳監督を「女ラース・フォントリアー」と呼びたくなりました。小さな女子議論に収まらない、突き放した視線が気持ちよい衝撃作。『あんこまん』は映画の中で口説き、騙し、濡れ場込みでやりたい放題やってしまう中村祐太郎という監督&俳優の圧倒的存在感にしびれました。まさに怪物。自ら演じて撮るさまは北野武のよう。黒際連盟同様に、「何かしでかしそうな気配」に満ちていて期待が膨らみます。

 

カネコアヤノさんはナチュラルな演技が素晴らしい。もちろん歌も。アカシックは音楽よりも理姫さんのお水っぽさが魅力。横山真哉監督はトラクター上の演技がツボ(いっそ俳優転向は?)。あと同業者(漫画家)としてタイム涼介さんの映画熱と実行力はすごいと思いました。ムーラボでVFXって!

 

昨年から今年にかけて「MOOSIC LAB」が生み出した最大の成果は山戸結希監督と、大森靖子さんだと思います。両者とも「映画」の枠を平気ではみ出して別の場所に届いてしまう才能。両者の活躍が今年のムードを一変させた気がします。参加作品の行く先がもしかしたらもう「映画」なくてもいいのかもしれないって気すらしてくるし、映画を「踏み台」にするくらいの度胸があるほうがいいかもしれません。

 

と、偉そうに講評してる西島ですが今年は竹内道宏監督の元で『世界の終わりのいずこねこ』で共同脚本参加することに。完全にスタッフ側に回ってしまいました。ムーラボに関わると予想しないことが起きますね…。さて、来年は?

 

と、一応自分で言い訳している。「もう映画でなくても良い」と書いているけど、実際竹内監督の映画『世界の終わりのいずこねこ』はそういう作品になった。「今までの映画ではない、新しい映画」と、完成版を観た今心からそう思う。よかった!(その「新しさ」については次回以降に) lineA

 

2014年8月某日

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太田出版の村上さんとメールのやり取り。参考にと、初期企画書と最新の脚本をメール。「『第9地区(あるいはエリジウム?)』 ミーツ 『マクロス』みたいな感触で、とても興味深く読ませていただきましたし、「関西新東京市」という設定にも大変そそられました」と好反応ながら、村上さんが細かく指摘する「脚本として気になる」点が、僕が気になっている部分とぴたりと重なる。 lineA

 

2014年8月某日

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脚本第五稿はボツに。スケジュールも考慮し、第四稿のシーンを変えないまま台詞を細部まで変えていく作業を納得いくまで徹底的に行うことにする。最終的にこの第六稿が決定稿となる。必要なやり取りだったと思うし、ここから先は僕の手を離れ竹内監督に一任することに。お互いやるだけやった、お願いします!という気持ち。 lineA

 

2014年8月某日

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脚本作業終了。この頃から撮影を意識してか、「ちんぐ組.inc」とか言い出す(僕が)。 lineA

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ミイケ先生 (西島大介)

 

2014年8月某日

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竹内監督、直井さんが珍しくツイッターで猛烈に怒っているが、脚本終えた余裕でスルー(実は出演者のドタキャンがあったそう)。 lineA

 

2014年8月某日

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撮影のスケジュールも確定。現場プロデューサー、前さんから「撮影は8月20日クランクインの27日アップ予定となります」とのメール。衣装合わせのスケジュールを調整。サクライさんからBGM、効果音も届く。 lineA

 

2014年8月某日

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東京某所にて衣装合わせ。妻も同行、「偉そうにフィッティングなんかしちゃって」という顔。初めて大勢のスタッフと会い、出演者にも会う。茉里さん、蒼波純さん、蝦名恵さん、いまおかしんじさんがいたが、衣装合わせは流れ作業なので軽い挨拶程度。竹内監督とも久々に再会。サクライさんがこの場にいたのかどうか…、あれ?覚えていない。 lineA

 

2014年8月某日

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世田谷区の私立校で撮影初日。脚本が手を離れているからか、旅行気分でリラックス。僕の撮影は学校二日間と、茨城県の廃工場の二日間を予定。関西や都心のシーンはない。撮影スケジュールを記した紙の隅に「今日は祭りです、はりきっていきましょう」というような妙に浮かれた一文があり何だろうと思ったら、なんと現場についたら生徒役全員がアイドルだった。関西新東京市や、ミュータントという設定は作ったけど、それが女子校だとは、生徒全員がアイドルだとは全く知らず、考えたこともなく、驚く。誰が誰だか顔の区別も所属グループもわからない。名前を観ても「あの」「しふぉん」「ようなぴ」「classic fairy」って人間なのかと思う。助監督の石井さんいわく、「『アイドル・イズ・デッド』、『五つ数えれば君の夢』に続く、アイドル三部作最終作。ここまで大勢のアイドルが出ている映画はないです!」とのことで、そういう意味で「祭り」だったらしい。やられたと思ったし、脚本にはないスケール感や面白さ、意味を作るのが映画なんだなと思った。広大な楽屋で仲良さそうにはしゃぐアイドルさん二人(誰が誰だかわからない)に、「(わたしたち)撮ってもらっていいですか?」とスマホを渡され、「はいチーズ」と事務的に写真を撮る。彼女たちが誰か知らないし、彼女たちもまた僕が誰か、脚本書いてるとも漫画家だとも知らない…。どんな顔してたらいいのか、わからない。 lineA

 

 

■第5回は3月23日更新

 

作品情報 『世界の終わりのいずこねこ』

 

 

監督・脚本・編集: 竹内道宏
共同脚本・コミカライズ: 西島大介
企画: 直井卓俊
原案・音楽: サクライケンタ
出演: 茉里(いずこねこ)、蒼波純、西島大介、緑川百々子、永井亜子、小明、宍戸留美、いまおかしんじ、蝦名恵、ライムベリー、みきちゅ、PIP、コショージメグミ、レイチェル、姫乃たま、あの / ようなぴ / しふぉん(ゆるめるモ!)、篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)、木村仁美、宗本花音里、Classic fairy、桃香(Peach sugar snow)、月詠まみ(恥じらいレスキュー)
配給: SPOTEED PRODUCTIONS
製作: ekoms+SPOTTED PRODUCTIONS
製作協力: CAMPFIRE
©2014『世界の終わりのいずこねこ』製作委員会

 

⇒公式サイトはこちら

 

★新宿K’sシネマにて、映画公開記念トークイベント開催決定!
■3月17日(火) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 森直人(映画評論家)、九龍ジョー(ライター)、西島大介(漫画家)
■3月19日(木) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 姫乃たま(地下アイドル/ライター)、直井卓俊(企画プロデューサー)、竹内道宏監督
■3月20日(金) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 西島大介(漫画家)、ささかまリス子(秋葉原ディアステージ)、竹内道宏監督
■3月22日(日) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 吉田豪(プロインタビュアー)、サクライケンタ(いずこねこプロデューサー)
■3月23日(月) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 宍戸留美(声優)、いまおかしんじ(監督)、竹内道宏監督

 

 

⇒コミックス版『世界の終わりのいずこねこ』全国書店&ECサイトにて発売中!
イベント情報 西島大介「世界の終わりのいずこねこ展」
期間: 2015年3月7日(土)~4月13日(月)
時間: 月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00
(イベントの際は異なる場合もございます。予めご了承ください。)
入場料: 500円 (開催中の展覧会共通)
会場: parabolica-bis[パラボリカ・ビス]
TEL: 03-5835-1180

 

【さやわか式☆現代文化論 #16】さやわか×西島大介×濱野智史
映画『世界の終わりのいずこねこ』――アーキテクチャ、アイドル、コミック、その先へ
日程: 2015年3月21日(土)
時間: 19:00~21:00 (開場:18:00)
PIPによるコミック単行本お渡し会も同時開催!
入場料: 前売2600円(1D付) / 当日3100円(1D付)
会場: ゲンロンカフェ
TEL: 03-5719-6821

 

「世界の終わりのいずこねこフェア」
日程: 2015年3月10日(火)~3月27日(金)
入場料: 無料
会場: BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿
TEL: 03-5312-2635
コミック版『世界の終わりのいずこねこ』単行本および西島大介さん過去作品、映画スチール担当の飯田えりかさんによる写真集、サクライケンタさんによるサントラ他関連CDなども販売予定。期間中、『世界の終わりのいずこねこ』ミニ原画展も開催! BIBLIOPHILIC & bookunion新宿限定・特製トートバッグ発売あり!

PROFILE 西島大介 Daisuke Nishijima
1974年東京生まれ、広島在住。漫画家。2004年に『凹村戦争』でデビュー。代表作に『世界の終わりの魔法使い』 『ディエンビエンフー』などがある。2012年に刊行した『すべてがちょっとずつ優しい世界』で第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭推薦作に選出。装幀画を多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義で音楽活動も行う。映画『世界の終わりのいずこねこ』脚本&出演など、活動は多岐に渡る。

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飯田えりか Erika Iida
1991年東京都生まれ。少女写真家。2011年から青山裕企氏に師事する。2014年に日本大学芸術学部写真学科卒業。自らの経験による少女性の考察をもとに少女に戻すポートレート作品を主に制作。ショートカット推進委員会公認カメラマン、アイドルグループ「hanarichu」メインフォトグラファー。