【第3回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

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  • 2015.03.14

【第3回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

アイドル「いずこねこ」主演映画企画として進行しながら、撮影前にその「いずこねこ」の活動が突如終了するなど困難を乗り越え、3/7に公開となった映画『世界の終わりのいずこねこ』。メガホンを取った気鋭の映像作家、竹内道宏監督と共同で脚本を手掛け、語り部的な役どころ、ミイケ先生役として出演も果たしている漫画家(本作のコミカライズ単行本も3/7発売)の西島大介氏によるプロダクションノートを短期集中連載。映画の立ちあがりから撮影、先行イベント、コミカライズなどを経て、映画公開に至るまでの悲喜交々を綴った記録を、スチールを担当された少女写真家の飯田えりかさんによる劇中写真&オフショット写真と共に公開。

 

 

 

 

2014年4月某日

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映画『世界の終わりのいずこねこ』、制作予算をクラウドファンディング「CAMPFIRE」で集めることに。出資先がなくなったという内部事情もあったみたいだけど(それが活動休止のせいかどうかはわからない)、アイドル商法とクラウドファンディングは相性がいいだろうなと思う。コミカライズの要素を告知に盛り込むも、いずこねこの活動も含め不確定要素が多すぎるので、「パンフに数ページ描いてもコミカライズ」という解釈の余地を残すようにしてもらう。映画の撮影のスタッフも徐々に集まり始めている様子。キャスティングについても動いているらしい。 lineA

 

2014年4月某日

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下北沢B&Bで、アニメーションのデザイナーとして活躍するコヤマシゲトくんと、西島の短編集『夏の彗星』『ディエンビエンフー0』刊行記念イベント。コヤマくんとはずっと昔に「黒人コンピューター」と称して自主アニメーションを一緒に作っていた経緯があり、その頃作っていた映像を上映。コヤマくんがディズニー映画『ベイマックス』に関わっているとはこの時全く知らず、後に僕は自分の映画とのスケールの差に打ちのめされることに。 lineA

 

2014年5月某日

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CAMPFIERの準備が着々と進む。僕はTシャツなどのグッズでサポート。 lineA

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イツ子(茉里)

 

2014年5月某日

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CAMPFIERサイトの準備。ダミー画像として最近手がけた装丁、前島賢さん著『セカイ系とは何か』のカバーを使用。関西新東京市、隕石落下、世界を救うアイドル、今回の映画はどこを切っても「セカイ系」だとひとり思う(その言葉は監督とも直井さんとも共有していない)。また「アイドル」という僕にとっては未知な題材を物語化すると、僕が本来の好きなもの「SF」になるんだなとも実感。『セカイ系とは何か』が星海社文庫ということで、星海社のweb「次世代」にもコミカライズ掲載を編集部へ行き直接相談してきたが、「インディー映画と地下アイドルでメディアミックスして効果があるか判断できない」との反応。「いっそ西島さんオリジナルなら」とも。アニメやメジャーアイドルはともかく、地下アイドル、しかも活動停止が前提なら判断できないのも当然だと思う。僕だって判断つかない。とにかく、この映画については説明すればするほど、「?」という顔をされてしまう。僕だって「?」だ。 lineA

 

2014年5月某日

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CAMPFIREで映画の詳細が告知される。コミカライズのためのラフも公開。レイニー&アイロニーのラフに僕が描いた「きゃりーぱみゅぱみゅ的な?ぱみゅっぱみゅっ」という言葉が消されていて仕事が細かいと思った。CAMPFIREサイトの告知文は以下。

 

「たくさんのファンに愛されながらも、8月31日を持って「活動終了」が決定しているアイドル「いずこねこ」の最終プロジェクトは何と最初で最後の主演映画、その名も『世界の終わりのいずこねこ』に決定!そこで、本映画の制作及び関連のイベントなどの応援プロジェクトがここに始動します!本作の監督・脚本には、神聖かまってちゃんのライブ動画などでお馴染みの気鋭の映像作家、竹内道宏。本作の企画及び、関連イベントの総合プロデュースは『5つ数えれば君の夢』(監督:山戸結希/主演:東京女子流)、『アイドル・イズ・デッド』シリーズ(監督:加藤行宏/主演:BiS)、『劇場版 神聖かまってちゃん』(監督:入江悠/主演:二階堂ふみ)など話題作を次々と手がけるSPOTTED PRODUCTIONS。原案・主題歌・劇中音楽には、「いずこねこ」生みの親である音楽プロデューサー・サクライケンタ。さらには共同脚本を手がけた漫画家・西島大介が自ら本作の漫画ヴァージョンを制作予定。皆様と、あらゆる角度から、いずこねこ最終プロジェクトを多いに盛り上げていきたいと思っています。ご支援の程、どうぞ宜しくお願い致します!」

 

よく足並みが揃ったと思う。目標金額は200万円。募集期間は約二ヶ月。 lineA

 

2014年5月某日

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直井さんから断片的に「いずこねこ」の現状と「映画」の現状が伝えられるが、よく分からないのであまり深く考えず。いずこねこ茉里さんの撮影時の髪形は何がいいですか?と訊かれ、以下のように返信。「事情よくわからないですが…、やっぱ、黒髪っしょ!」もう、テキトー! lineA

 

2014年5月某日

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思いついて、木星人衣装は東佳苗さん(縷縷夢兎)がいいのではないかと直井さんにメール。 lineA

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クラスメイト(コショージメグミ)

 

2014年5月某日

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CAMPFIREにて出演者として「西島大介」「緑川百々子」が告知される。僕はキャスティングには関わっていないけど、「あのサイン会に来てくれたモデルの女の子!」と縁を感じる。「レイニー&アイロニー、学校に潜入して制服着るっていうシーン作れますか?」と直井さんからメール。出演者と衣装ありきで映画の絵面を考えシーンを足すという行為が、「脚本家っぽいやり取りだな」と思う。 lineA

 

2014年6月某日

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サクライケンタさんのSOUNDCLOUDを見つける。「jun_0001」というインスト曲がアップされていて聴いてみると映画音楽的でいい感じ。APHEX TWINのような孤独さも感じる。実際この曲は映画に使用される。あとからわかったけど「jun」とは蒼波純さんの意味だそう。以下はCAMPFIREのブログに西島更新回として寄せた文章。

 

いずこ活動報告blog
「始めようといってもすでに始まってた」西島大介
よっしゃにゃんこー!

 

「いずこねこの映画を作りたいので、西島さんプロットお願いできますか?」と、最初に声をかけてくれたのはプロデューサーの直井さんでした。「いずこねこ」の名前はどこかで聞いたことはあったけど、実際の活動に触れたこともなく、Youtubeのライブ映像を観たものの混沌として正直理解できず、「 よっしゃにゃんこー?」と戸惑いました。直井Pのご依頼も正式なものか冗談なのかどうか判断がつかずなんとなく放置・・・。

 

しばらくして「じゃ、とにかく音源聴いてください」と直井P。送られてきたのは『最後の猫工場』。改めて音楽だけに耳を澄ますと、廃工場、木星、雨、偽物の街、捨てられた猫、音楽から『ブレードランナー』のような退廃的なSF風景が見えてきました。サクライケンタさんの楽曲は悲痛で未来がない印象があって、でもそのぶん深く刺さるもの。そしてそんな絶望の中に「にゃんにゃん」とか言いながら一筋の光を放つのが茉里さん。楽曲を聴き込んで初めてあの「よっしゃにゃんこー!」の必然に気づきました。

 

一方の竹内道宏監督。処女作『新しい戦争を始めよう』は、器材も予算も何もかもがチープなのにふと『クローバーフィールド』級の壮大な終末を感じてしまう大傑作。ネット的な自閉性と現実世界への不安しかないはずなのに、映画全体に漂う「よっしゃにゃんこー!」的なヤケクソな生命力。この時はまだ誰が監督か決まっていませんでしたが、いずこねこ×たけうちんぐ、この組み合わせはいいだろうなと心のどこかで確信していました。

 

いずこねこの音楽が描き出す風景を、たけうちんぐ監督が撮るなら? そんなイメージができてからプロット執筆は快調、意外なことにすんなりと企画会議を通過、直井Pが各方面の協力を取り付け、ちんぐ監督と往復書簡で脚本作業を開始、配役も徐々に決定、タイトルは直井Pが冗談めかして言った『世界の終わりのいずこねこ』に正式決定。ちんぐ監督の別の作品のタイトルになぞらえるなら映画が「始めようといってもすでに始まってた」という感じ。もう、やるしかない。よっしゃにゃんこー!(今ここです)

 

ところで、先ほどから何度も「よっしゃにゃんこー!」と書いていますが、実は僕、今日までいずこねこのライブを観たことも、サクライさん&茉里さんにお会いしたこともありません。iPodを経由して頭の中に流れる音楽と物語だけで繋がっている関係。映画が完成したらライブ観れたりするのかな。その時は叫んでみよう。よっしゃにゃんこー!

 

この時点ではまだ僕は、いずこねこ茉里さんの魅力に気づいておらず、脚本家として距離を置こうとしている。そのくせ「よっしゃにゃんこー!」と無責任に叫んでいる。 lineA

 

2014年6月某日

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東京出張。オンサンデーズで、竹内監督、直井さん、緑川さんと会う。スタッフ打ち合わせ的なものは初めてだったが、良い意味で雑談に終わる。助監督、石井さんは欠席。 lineA

 

2014年6月某日

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竹内監督より脚本第三稿届く。以下はそれを読んでの僕のメール。

 

「良い点は、やはり終盤のちんぐ監督らしいエモい展開。架空の設定である関西新都心が実際の新宿であるという、フィクションを突き抜けて現実に対峙する展開は本当に良いと思います。レイニー&アイロニーが地球に降りてくる感じもOKと思います。その上でいくつか設定上で不合理というか、変だなと感じる部分がいくつかあって、それは脚本レベルで直るものですが、そこを僕の方からチェック入れていいのか、それとも入れ過ぎないほうがいいのか、悩み中。よくわけが分からない部分も、映画の魅力になったりするので、ちょっと悩ましいところです」 lineA

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クラスメイト(橋田唯(PIP))

 

2014年6月某日

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CAMPFIREの支援、目標の200%を達成し460万円以上が集まる。まるで「活動休止」の騒動がそれを見越した炎上商法みたいに思えるけれど、事実はそうではない。そうではないけど、それは予算集めのためにはすごくプラスに働いたんだなと思う。「西島大介が出演」で集まったお金は間違いなくゼロ! lineA

 

 

■第4回は3月16日更新

 

作品情報 『世界の終わりのいずこねこ』

 

 

監督・脚本・編集: 竹内道宏
共同脚本・コミカライズ: 西島大介
企画: 直井卓俊
原案・音楽: サクライケンタ
出演: 茉里(いずこねこ)、蒼波純、西島大介、緑川百々子、永井亜子、小明、宍戸留美、いまおかしんじ、蝦名恵、ライムベリー、みきちゅ、PIP、コショージメグミ、レイチェル、姫乃たま、あの / ようなぴ / しふぉん(ゆるめるモ!)、篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)、木村仁美、宗本花音里、Classic fairy、桃香(Peach sugar snow)、月詠まみ(恥じらいレスキュー)
配給: SPOTEED PRODUCTIONS
製作: ekoms+SPOTTED PRODUCTIONS
製作協力: CAMPFIRE
©2014『世界の終わりのいずこねこ』製作委員会

 

⇒公式サイトはこちら

 

★新宿K’sシネマにて、映画公開記念トークイベント開催決定!
■3月17日(火) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 森直人(映画評論家)、九龍ジョー(ライター)、西島大介(漫画家)
■3月19日(木) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 姫乃たま(地下アイドル/ライター)、直井卓俊(企画プロデューサー)、竹内道宏監督
■3月20日(金) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 西島大介(漫画家)、ささかまリス子(秋葉原ディアステージ)、竹内道宏監督
■3月22日(日) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 吉田豪(プロインタビュアー)、サクライケンタ(いずこねこプロデューサー)
■3月23日(月) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 宍戸留美(声優)、いまおかしんじ(監督)、竹内道宏監督

 

 

⇒コミックス版『世界の終わりのいずこねこ』全国書店&ECサイトにて発売中!
イベント情報 西島大介「世界の終わりのいずこねこ展」
期間: 2015年3月7日(土)~4月13日(月)
時間: 月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00
(イベントの際は異なる場合もございます。予めご了承ください。)
入場料: 500円 (開催中の展覧会共通)
会場: parabolica-bis[パラボリカ・ビス]
TEL: 03-5835-1180

 

【さやわか式☆現代文化論 #16】さやわか×西島大介×濱野智史
映画『世界の終わりのいずこねこ』――アーキテクチャ、アイドル、コミック、その先へ
日程: 2015年3月21日(土)
時間: 19:00~21:00 (開場:18:00)
PIPによるコミック単行本お渡し会も同時開催!
入場料: 前売2600円(1D付) / 当日3100円(1D付)
会場: ゲンロンカフェ
TEL: 03-5719-6821

 

「世界の終わりのいずこねこフェア」
日程: 2015年3月10日(火)~3月27日(金)
入場料: 無料
会場: BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿
TEL: 03-5312-2635
コミック版『世界の終わりのいずこねこ』単行本および西島大介さん過去作品、映画スチール担当の飯田えりかさんによる写真集、サクライケンタさんによるサントラ他関連CDなども販売予定。期間中、『世界の終わりのいずこねこ』ミニ原画展も開催! BIBLIOPHILIC & bookunion新宿限定・特製トートバッグ発売あり!

PROFILE 西島大介 Daisuke Nishijima
1974年東京生まれ、広島在住。漫画家。2004年に『凹村戦争』でデビュー。代表作に『世界の終わりの魔法使い』 『ディエンビエンフー』などがある。2012年に刊行した『すべてがちょっとずつ優しい世界』で第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭推薦作に選出。装幀画を多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義で音楽活動も行う。映画『世界の終わりのいずこねこ』脚本&出演など、活動は多岐に渡る。

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飯田えりか Erika Iida
1991年東京都生まれ。少女写真家。2011年から青山裕企氏に師事する。2014年に日本大学芸術学部写真学科卒業。自らの経験による少女性の考察をもとに少女に戻すポートレート作品を主に制作。ショートカット推進委員会公認カメラマン、アイドルグループ「hanarichu」メインフォトグラファー。