【第2回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

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  • 2015.03.12

【第2回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~ 西島大介

アイドル「いずこねこ」主演映画企画として進行しながら、撮影前にその「いずこねこ」の活動が突如終了するなど困難を乗り越え、3/7に公開となった映画『世界の終わりのいずこねこ』。メガホンを取った気鋭の映像作家、竹内道宏監督と共同で脚本を手掛け、語り部的な役どころ、ミイケ先生役として出演も果たしている漫画家(本作のコミカライズ単行本も3/7発売)の西島大介氏によるプロダクションノートを短期集中連載。映画の立ちあがりから撮影、先行イベント、コミカライズなどを経て、映画公開に至るまでの悲喜交々を綴った記録を、スチールを担当された少女写真家の飯田えりかさんによる劇中写真&オフショット写真と共に公開。

 

 

 

 

2014年1月某日

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竹内監督のプロットに返信。「どのくらいのものになるのかわからないけれど、大きい映画だなと感じました。ちんぐフィールドが展開されており、とても面白そう、疾走感あり。巨大すぎて映画にならなくても、僕が挿絵を描いてちんぐ先生が小説描いて、ラノベになりそう。早川(書房)紹介しますよ!」と、今思うと、とてもご機嫌なメール。「ちんぐフィールド」とは「ATフィールド」のようなものだと思われる。さらに脚本を待つ。 lineA

 

2014年1月某日

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竹内監督より脚本初稿が届く。タイトルが『終末のいずこねこ』と変更されていたが、SEKAI NO OWARIと間違えられることを危惧したとのこと。「間違えて映画観に来てくれればぜんぜんOK」と僕は思う。タイトルは変更せず。また、映画の冒頭や要所に僕のイラストを挿入することについての依頼も。プロット執筆の段階では、敢えてイメージボードなどの「絵」の作業をしなかったが(脚本は絵に頼らず言葉の強さだけでまとめるべきと思っていた)、コミカライズも想定に入れ、少しずつ「絵」の作業もスタート。 lineA

 

2014年2月某日

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竹内監督、直井さん、サクライさん打ち合わせ。僕は伺えず。この頃は、とにかくアイドル「いずこねこ」には距離を置いて寄り添わないスタンスが良いと考えていた。キャスティングに「ミスiD 2014」グランプリの蒼波純さんの名前が上がる(ミスiDが何か僕はよくわかってなかったが)。2001年生まれというプロフィールを読んで、「とうとう自分の娘と同い年と仕事をする日が来た」と驚く。茉里さん&蒼波さんの二人組、青く新世代の感じがしていいなと思う。 lineA

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スウ子(蒼波純)とイツ子(茉里)

 

2014年2月某日

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「第17回文化庁メディア芸術祭」の審査員推薦作に『すべてがちょっとずつ優しい世界』が選出されたので、飛び入りでライブ&パフォーマンスイベント「Sound and Vision」にピアノで出演。会場は六本木スーパーデラックス。吉田隆一さん、MOE(Moe and Ghosts)さん参加。ライブ映像を竹内監督に撮影してもらう。この日の演奏は後に、DJまほうつかい『Ghosts in the Forest EP』に収録。限定公開のMVにもなった。 lineA

 

2014年2月某日

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映画制作費についてのプランが直井さんから届く。正直、インディー映画の作られ方や予算規模はよく分からず、そもそも『世界の終わりのいずこねこ』への関わり自体が広島の個性的ミニシアター「横川シネマ」をボランティアで手伝い始めたことに起因しているので、お金の話がピンと来ない。2011年に広島市に引っ越してきて、最初はドキュメンタリーを観に足繁く通っていたお客の一人だったのが、「実は支配人一人で切り盛りしている」ことを知り、「身近な助け合いこそが大切」と考えて申し出たことが横川シネマを手伝うようになったきっかけ。チラシ配りやモギり、ピーク時には上映まで任されたことも。東京の吉祥寺に住んでる頃は、インディー映画に接する機会も興味もそんなになく、地方に暮らしてから、こんなふうに「映画」と近くなるなんて不思議なものだと思う。 lineA

 

2014年2月某日

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一時期は「ラノベとして早川から刊行」などと言っていたが、このあたりからコミカライズについて意識。映画から使える予算はなさそうだから、僕が自力で媒体を探すことに。太田出版のwebコミック「ぽこぽこ」ではどうかと直井さんから提案されるが、「やりやすい場所は安易だと思います。もっと遠く、意外な場所で発表したほうがいいのでは?」と一度お断りする。 lineA

 

2014年2月某日

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コミカライズの掲載媒体探し。早川書房「SFマガジン」や、新潮社「yomyom」、星海社「最前線」にも打診。こんなふうに「持ち込み」をすることは実は初めて。しかし、なかなかうまくいかず、婚活で相手にされないのってこういう感じだろうな…とふと思う。 lineA

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イツ子(茉里)とクラスメイト

 

2014年2月某日

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竹内監督の第一稿を大幅手直し。代案として提出。コミカライズ、つまりマンガとして描くことを念頭に浮かべるとどうしても現状の脚本の論理の不備が気になってしまう。修正意図として以下のようにメール。

 

「僕のプロットが正解というわけではないのですが、たぶん前のままだと、なんとなくあるコンセプトと勢いだけになってしまうかも知れないと思って、いったん頭を整理するために書きました。今ある「アイドルブーム」すら過去で、やがて終わるものであるという世界設定が「現在」を描き、それでもアイドルをやる意味、見出される意味みたいなものを「いずこねこ」本人に問う、かつ、その問いに対してYESもNOもないまま状況は進んでいく、そんな修正になっています。また、高次元の存在として「飼い主」を設定することによって、ファンムービーとしての機能を強化。観客が「ああ、いずこねこともいずれ別れるのかな」というセンチメンタルを感じてくれれば、一体感は生まれるし、映画にする意味あるかなと。でも「飼い主」は「飼い主」のまま。あとサクライさんは映画の外にいるので、「音楽」は隕石のように不意にもたらされる外的なものでいいかなと。理屈で言うとそんな感じです。山戸(結希)さんとかは多分こういうロジックで作品を作っていて、僕も割とそういうタイプ。凹村戦争とか、せかまほ(世界の終わりの魔法使い)とか、マンガにする前に、こういう風に一度整理をしています。ちんぐ先生には、僕が「哲学」「ルール」を設定した上で、エモーショナルにそれをぶっ壊してもらうのが良いかなと思います」

 

ちなみに「飼い主」とは、いずこねこファンの総称。 lineA

 

2014年2月某日

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脚本は竹内監督、直井さんとのやり取りだけだったが、たまに身内(妻)に見せていた。妻への転送メール以下。

 

「西島プロット→ ちんぐ脚本→ 西島ダメだし脚本(いまここ) 暇なとき読んでね」

 

結局妻は読まず。 lineA

 

2014年3月某日

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突然、いずこねこプロデューサー、サクライケンタさんが活動休止の発表。一部抜粋してまとめると以下。

 

「いずこねこというプロジェクトは只今決まっているスケジュールで活動終了」「仮に楽曲提供のみを僕がしたところで、トータルプロデュースをしなければ、いずこねこには、ならないし、なれない」「今後、茉里ちゃんは、アイドル活動は続けたい意思がある」「いずこねこ終了後、茉里ちゃんが僕(サクライケンタ)の楽曲を歌う事も無い」

 

サクライさん、茉里さん共に企画始動からこの時まで「いずこねこ」側には会ったことも話したこともなかったけど、さすがに非常事態と思い、初めてサクライさんと、TwitterのDMで連絡を取る。 lineA

 

2014年3月某日

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どうなるか分からない騒動の最中、直井さんに「『ホドロフスキーのDUNE』、テリーギリアムの『ロスト・イン・ラマンチャ』を見倣って、どう転んでも(最悪映画が潰れても)コミカライズまでは持っていきたいですね」とメール。しかし意外なことに、いずこねこ茉里さん、サクライさんともに、アイドル活動は終了しても映画のプロジェクトは続けたいという意思があるという。不思議。ちなみに僕はこの頃、まだ「いずこねこ」が茉里さんだけを指すのか、茉里&サクライの二人組なのか、判別ついていない。 lineA

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クラスメイト(木村仁美、あの(ゆるめるモ!))

 

2014年3月某日

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映画の企画は継続できそうだと連絡が飛び交う。しかし活動停止は決定事項とのことで、ますます不思議。作家側は落ち着いて開き直るしかないよねと思い、「今回の騒動も含め作品に刻むのが良いなと思います」と直井さん、竹内監督に返信。結果そうなる。直井さんは修羅場慣れしていて落ち着いており、さすがプロデューサーと思う。BiSの映画『アイドル・イズ・デッド』、『アイドル・イズ・デッド2』で鍛えられたっぽい。 lineA

 

2014年3月某日

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「活動休止、でも映画は続行」という事態について考えていたら、ふと「映画がなければ活動終了ってことは、この映画だけがいずこねこの最後の関係性、絆だ!」と気づき、茉里さんサクライさんを少しだけ理解した気持ちになる。本当のところはわからないけれど…。 lineA

 

 

■第3回は3月14日更新

 

作品情報 『世界の終わりのいずこねこ』

 

 

監督・脚本・編集: 竹内道宏
共同脚本・コミカライズ: 西島大介
企画: 直井卓俊
原案・音楽: サクライケンタ
出演: 茉里(いずこねこ)、蒼波純、西島大介、緑川百々子、永井亜子、小明、宍戸留美、いまおかしんじ、蝦名恵、ライムベリー、みきちゅ、PIP、コショージメグミ、レイチェル、姫乃たま、あの / ようなぴ / しふぉん(ゆるめるモ!)、篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)、木村仁美、宗本花音里、Classic fairy、桃香(Peach sugar snow)、月詠まみ(恥じらいレスキュー)
配給: SPOTEED PRODUCTIONS
製作: ekoms+SPOTTED PRODUCTIONS
製作協力: CAMPFIRE
©2014『世界の終わりのいずこねこ』製作委員会

 

⇒公式サイトはこちら

 

★新宿K’sシネマにて、映画公開記念トークイベント開催決定!
■3月17日(火) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 森直人(映画評論家)、九龍ジョー(ライター)、西島大介(漫画家)
■3月19日(木) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 姫乃たま(地下アイドル/ライター)、直井卓俊(企画プロデューサー)、竹内道宏監督
■3月20日(金) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 西島大介(漫画家)、ささかまリス子(秋葉原ディアステージ)、竹内道宏監督
■3月22日(日) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 吉田豪(プロインタビュアー)、サクライケンタ(いずこねこプロデューサー)
■3月23日(月) トークショー (本編上映終了後)
登壇者: 宍戸留美(声優)、いまおかしんじ(監督)、竹内道宏監督

 

 

⇒コミックス版『世界の終わりのいずこねこ』全国書店&ECサイトにて発売中!
イベント情報 西島大介「世界の終わりのいずこねこ展」
期間: 2015年3月7日(土)~4月13日(月)
時間: 月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00
(イベントの際は異なる場合もございます。予めご了承ください。)
入場料: 500円 (開催中の展覧会共通)
会場: parabolica-bis[パラボリカ・ビス]
TEL: 03-5835-1180

 

【さやわか式☆現代文化論 #16】さやわか×西島大介×濱野智史
映画『世界の終わりのいずこねこ』――アーキテクチャ、アイドル、コミック、その先へ
日程: 2015年3月21日(土)
時間: 19:00~21:00 (開場:18:00)
PIPによるコミック単行本お渡し会も同時開催!
入場料: 前売2600円(1D付) / 当日3100円(1D付)
会場: ゲンロンカフェ
TEL: 03-5719-6821

 

「世界の終わりのいずこねこフェア」
日程: 2015年3月10日(火)~3月27日(金)
入場料: 無料
会場: BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿
TEL: 03-5312-2635
コミック版『世界の終わりのいずこねこ』単行本および西島大介さん過去作品、映画スチール担当の飯田えりかさんによる写真集、サクライケンタさんによるサントラ他関連CDなども販売予定。期間中、『世界の終わりのいずこねこ』ミニ原画展も開催! BIBLIOPHILIC & bookunion新宿限定・特製トートバッグ発売あり!

PROFILE 西島大介 Daisuke Nishijima
1974年東京生まれ、広島在住。漫画家。2004年に『凹村戦争』でデビュー。代表作に『世界の終わりの魔法使い』 『ディエンビエンフー』などがある。2012年に刊行した『すべてがちょっとずつ優しい世界』で第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭推薦作に選出。装幀画を多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義で音楽活動も行う。映画『世界の終わりのいずこねこ』脚本&出演など、活動は多岐に渡る。

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飯田えりか Erika Iida
1991年東京都生まれ。少女写真家。2011年から青山裕企氏に師事する。2014年に日本大学芸術学部写真学科卒業。自らの経験による少女性の考察をもとに少女に戻すポートレート作品を主に制作。ショートカット推進委員会公認カメラマン、アイドルグループ「hanarichu」メインフォトグラファー。