『ワンダフルワールドエンド』 松居大悟監督 & 稲葉友インタビュー

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  • 2015.01.23

『ワンダフルワールドエンド』 松居大悟監督 & 稲葉友インタビュー

1月17日に東京・新宿武蔵野館にて公開初日を迎えた映画『ワンダフルワールドエンド』は満席立ち見も出る大盛況での幕開けとなった。この日、ダブル主演を飾った女優の橋本愛と蒼波純、2人に翻弄される彼氏役を演じた稲葉友、この映画の起源ともなる音楽を手掛けた大森靖子、そして松居大悟監督による舞台挨拶が行われ、壇上では、本作がベルリン国際映画祭のジェネレーション14プラスコンペティション部門に正式出品されることも発表された。これは松居監督が、或るホテルを映画祭のディレクターがチェックアウトする際を見計らって、手渡しした事が実を結んだもの。これに対し、「これを機に、日本全国に観てもらえないと話にならない。まず観てもらえるように計画を立てようと思っています。」と冷静に話す橋本愛。数少ない男性キャストである稲葉友は「松居監督と2人で盛り上がったんですけど、橋本さんのおっしゃる通り、2人ではしゃいでいたなと思い、深く深く反省しております。」と話し、場内の笑いを誘った。

 

ちょうど1ヶ月前の昨年12月に行われた先行上映イベントの直後、監督の松居大悟と現在放送中の『仮面ライダードライブ』にて仮面ライダーマッハである詩島剛も演じる稲葉友の2人に、「さよなら、男ども」というコピーに「絶対少女ムービー」とも銘打たれた本作における男どもの気持ちを聞いた。

(撮影: 朝岡英輔 / 取材・文: 川端哲生)

 

 

 

最初は本当にどうしようって思いましたね。俺が追っ付いてなくて。初日に撮影してて、「2点!」って言われて。(稲葉)

 

 

———既に、松居監督と橋本愛さんに、作品内容について話を聞いていて。

 

稲葉: はい、見させて頂きました。

 

———ありがとうございます。この映画において、稲葉さん演じる浩平は脇に回る役回りなのかなって思っていて。男性である松居監督も交えて、稲葉さんに男側の気持ちを聞けたらなっていう今回は取材で。この後、映画パンフレットに掲載される「さよならできない、男ども対談」というのをやるらしいので、それのウォーミングアップだと思って頂けたら(笑)

 

松居: いやいやいや(笑) 本気でやります。

 

稲葉: 手を抜けないんで。

 

松居: 手抜けないんだよな、お前。そういうとこあるよな(笑)

 

———ありがとうございます(笑) では、最初に出演経緯と、松居監督、稲葉さんのお互いの印象を。

 

松居: 橋本さんと純ちゃんの出演が決まって、橋本さんの彼氏役で、悪意のないイケメンをずっと探していたけど、なかなか見つからなくて苦戦していて。前に池松(壮亮)と話した時に「稲葉友はとにかくマジでいい奴。」って言ってたのを思い出して。企画プロデューサーの直井さんに提案したら、「バンもん!のMV にも出てるし、いいかも。」って話になって。出演中の舞台の役柄で金髪だったんですけど、逆に有りだって思って、決めた感じですね。

 

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———前回の橋本さんとのインタビューで、稲葉さんは現場を気に入って、出番以外もずっと現場にいたというような話をされてましたよね。

 

稲葉: その当時、東京に居る間は休みで、地方に行ってる間は舞台やってるって状態で。東京にいる期間がたまたま4日くらいあって、そこで撮影したんです。

 

松居: 先に撮影したMV部分はそんな感じで。逆に追撮の時は稲葉のスケジュールはがっつり押さえられたんです。でも今度は橋本さんと純ちゃんの方のスケジュールが大変で。稲葉だけ朝に撮影して、次の撮影は深夜みたいな。中空きが半端なかった(笑)

 

稲葉: 単純に好きな現場だったのもあるけど、居たかったら居ていいし、退屈だったら居なくてもいいよっていうような空気だったので。

 

松居: そうそう。現場を出ようとしたら、「え、出るんだ?」みたいな(笑)

 

稲葉: 結局、居ていいなら居させてもらいますって感じで(笑)

 

松居: 女性を立てる映画ですけど、やっぱりスタッフは男が多いわけじゃないですか。稲葉は男のスタッフ達と仲良くなって、撮影終わった後もダラダラしてましたね。浩平の部屋の撮影現場は、実際の僕の自宅だったんで。

 

———演出も含め、現場での松居監督の印象はどうでした?

 

稲葉: 最初は本当にどうしようって思いましたね。俺が追っ付いてなくて。初日に撮影してて、「2点!」って言われて。酷かったんですよ、僕。

 

———それは厳しいですね。どのあたりのシーンだったんですか?

 

松居: 『君と映画』の三軒茶屋の映画館です。財布忘れたみたいなことを言うシーンなのに、全然財布忘れた感じじゃなくて(笑)

 

———どこで勘を掴んだ感覚がありましたか?

 

稲葉: 僕が松居さんを好きだったし、(池松)壮亮君からっていう経緯もあって、壮亮君には初現場でお世話になっていて、この現場で応えられなかったら嘘だなって思って。

 

松居: でも初日終わって、池松に電話したらしいんですよ。泣き言を。

 

稲葉: 「知らないよ」って言われました。そうだなって思って次の日、撮影行きました(笑)

 

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———比較的、真面目なトーンでの駄目出しだったんですか?

 

稲葉: 敢えて厳しくみせてるわけではなく、本気で言っているというか。柔らかく包むとかではなく、裸の2点で(笑)

 

松居: (笑)

 

稲葉: 本当に2点なんだって疑いがなくて、心底、凹んで。

 

松居: 瞬時に分かったんですけど、この人は厳しく言った方がいいタイプだって。言う必要まったくない人とかもいるんですけど。稲葉は悔しくて燃えるタイプなのかなって。あとは、この作品は女性をガンガン追い込むようなものじゃなかったから、フラストレーションをすべて稲葉にぶつけたっていうのもありました(笑)

 

———劇中で、橋本さん演じる詩織に「何、気持ちよくなってんだよ!」って、殴られるシーンとかすごく良かったですけど。あの撮影は序盤ですよね?

 

松居: 2日目ですね。MVを撮ったあの2日間は濃かった。

 

———現場への戸惑いが出て、状況的に良かったんですか?

 

稲葉: 初日と2日目で濃度が変わったので。別物でした。

 

松居: でも、期間を挟んだ後の追撮の時の芝居は大丈夫だったんですよ。元に戻ってたらボコボコにしてやろうと思ってたんですけど(笑)

 

稲葉: それだけは嫌だと思って。そうなっちゃ駄目だし。

 

———ゴジゲンでの時も含め、厳しい演出をするタイプですか?

 

松居: 人によるんですよね。現場の感じとかを見て。ゴジゲンで言うと、休止前はゴチャゴチャ言ってたんですけど、この前の公演は全然そんなことなくて。

 

———稲葉さんは、先日のゴジゲンの公演はご覧になりました?

 

稲葉: 行けなかったんです。ちょうど同時期に下北沢で舞台やってて。共演してた人がたまたま松居さんの後輩で、その人は観に行けたみたいで、ゴジゲンの公演のパンフレットを松居さんからって渡されて。それで元気出て。写メを撮って松居さんに送るっていう。

 

松居: 結構メールするんですよ。

 

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———絆は今も続いてるんですね。メールは例えば、「今日のご飯は…」とか?

 

松居・稲葉: (笑)

 

稲葉: さすがにそれは(笑)

 

松居: そんな関係じゃないです(笑) この前も雑誌のJUNONにお洒落な顔して写ってたから、腹立って、写メ撮って送ったんです。

 

稲葉: これはこれで仕事ですって(笑)

 

松居: (自身のスマホを取り出して確認する)あ、「これがスタンダード」って送ってきてる。

 

稲葉: 違うんです(笑) その記事の見出しに「これがスタンダード」って書いてあるので、それをそのまま引用して送ったんです。

 

松居: あーそういうことね。

 

稲葉: あと、壮亮君が『情熱大陸』に出た時に、熱いメールし合ったりしましたね。

 

松居: あれは悔しくて、冷静に見られなかった。

 

 

ちゃんと詩織を思いやって台詞を言ってないと、川島浩平は成立しないんですよ。嫌な奴をやろうとしたら、うまくいかない。(松居)

 

 

———稲葉さんは、大森靖子さんの音楽についてはどうですか?

 

稲葉: 未だに覚えてるんですけど、出演決まってから、舞台の地方公演で富山から新潟に向かうバスで初めて聴いて。東京アイドルフェスと『新宿』の弾き語りの動画をYouTubeで見て、とんでもない人がいるんだなって。

 

———いきなり最初から鳥肌モノの動画を見ましたね。

 

稲葉: ずーっと聴きながら東京に戻るって感じでした。逆に松居さんのことは知っていたから、松居さんと出来るんだって感じで。

 

松居: 元々、近いんですよね。僕の事務所の主催する舞台に出たりとか。

 

稲葉: それこそ、松居さんが演出して、壮亮君が出演した舞台も観に行ってたりして。

 

———そこで挨拶したりは既にあったんですか?

 

稲葉: ないです。この映画の衣装合わせで、はじめましてって感じでした。

 

松居: お前が稲葉友かって。

 

稲葉: でも、松居さん、目を見てくれなかったんですよ。

 

松居: 人見知りなんで。

 

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———最初の「2点!」って経緯はあったと思うんですけど、稲葉さんが救いにはなったんですか。男性キャストって、他に利重剛さんしかいないじゃないですか。松居監督の中で存在感は大きくなっていきました?

 

稲葉: 大きくなったとかではないと思います。

 

松居: 現場でどうこうは正直覚えてなくて。

 

稲葉: 松居さんの頭の中、どうなってるのかなって感じで。

 

松居: 理屈がもうぶっ飛んでて、このシーンをこう見せるために、こうやって撮ろうとか、そういうのが全く分からなくて。何故なら映像としてどう見せるかとか考えてなかったから。

 

———編集時に決めていくタイプなんですか?

 

松居: この作品に関してですね。成り立ちが特殊だったので。だから、現場行って、俳優部が芝居して、スタッフと相談して、そこで出た言葉を信じて撮るみたいな感じで。訳が分からなかったです。

 

———映画監督として、新しい体験だったんですね。

 

稲葉: 厳しい演出家と言われる方達っていると思うんですけど、松居さんをどんな監督だったって聞かれて、厳しい人とは少しも思わないんです。あまり嘘をつかないから。助かるというか有り難かったです。

 

松居: 撮影の前に、稲葉と渋谷の飲み屋で飯を食べる機会があって、お前は何が出来んの?って、酔っ払って言ったんです。そしたら、「逆立ちが出来ます」って言ったんです。その日の夜に、逆立ちを2シーン増やしました(笑)

 

稲葉: 俺も何で逆立ちが出来るって言ったんだろう(笑)

 

———逆立ち、良かったです(笑) 驚きはありました。

 

松居: 冒頭の橋本さんがメイクしてるところで、逆立ちしてるシーンも、逆立ちして着地して歯磨くって、ちゃんとうまくいくシーンだったんですよ。うまくいくまで、5、6回やって、頭に血が上っちゃって、フラフラになって、バタンって倒れたりして。成功したのがあったんですけど、面白くないなって思って、結局は逆立ち失敗してケツからこけるやつを使いました(笑)

 

———何回もやったんですね。

 

松居: 逆立ちしながら、橋本さんを見なきゃいけないから、結構大変で(笑)

 

稲葉: 逆立ちして、よーいで歩き始めて、一旦静止して、見て、倒れるっていう(笑)

 

———この詳細な説明は一体何なんですかね(笑)

 

稲葉: あのシーンの肉体的疲労は意外とエグいです(笑)

 

松居: みんな橋本愛のことしか見てないですけど(笑)

 

稲葉: 橋本さんと純ちゃんの2人が走ってるシーンより、あのシーンの方が疲れてるんじゃないかってくらい(笑)

 

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———そんな浩平ですけど、さっきもありましたけど、無自覚に無神経な男じゃないですか。私生活と照らしてみて、どうですか?

 

松居: 僕、超敏感なんですよ。自分のことを客観視できてない人に対して。だから、そういう人を描こうっていうのがあって。実際は僕も客観視できてないのかもしれないけど。よく分からない。

 

———でも、もし浩平の状況に置かれたら、分からないですよね。

 

稲葉: 演じてる時は、嫌なこと言ってるとか、イライラさせてるとか一切思わなくて。

 

松居: ちゃんと詩織を思いやって台詞を言ってないと、川島浩平は成立しないんですよ。嫌な奴をやろうとしたら、うまくいかない。

 

———悪気ない感じが出てて、それが余計に腹が立ちますよね。

 

稲葉: そこへ向かっていかないと成立しないって思ってから、詩織と亜弓に向き合えるようになりましたね。

 

———詩織が亜弓に惹かれてるのにも浩平は全く気付いてないですからね。

 

松居: ただ純粋なだけなんですよね(笑) ホンの段階での狙いなんですけど。

 

稲葉: その狙いみたいなものを演じ手としては狙っちゃいけないと思って。あとは松居さんが何とかしてくれるから。

 

———橋本さんや蒼波さんとのお芝居の呼吸はどうでした?

 

稲葉: 愛ちゃんには本当に助けて頂いて、ありがとうございますって感じで、ひたすら。純ちゃんは、従兄弟の子供みたいで。とにかく可愛かったな。この人の初映画にご一緒出来て良かったなって感じでした。この蒼波純は、二度と見れんぞっていう確信もあって。

 

松居: 見ちゃ行けないものを見た感じがありますね。よく見るとカメラの方を見たりもしてるんですよ。絶対にやっちゃいけないことを軽々とやってのけちゃうような今しか切り取れない感じとかが凄くて。現場でも気付いてたし、編集でも切ってはいるんですけど。

 

 

何回観ても、浩平が出てないシーンは、浩平のことを完璧に忘れられる映画だと思います。一瞬も思い出せないと思うんで(笑) (稲葉)

 

 

———ゴジゲンや、『アフロ田中』『男子高校生の日常』みたいなダメ男が主人公の物語とは今回違うじゃないですか。松居監督の資質って稲葉さんはどちらだと思いますか?

 

稲葉: すごく臆病だとは思うんです。それはそうあるべきだし、それでこそ松居さんだと思うんです。自分のためにやってんだよって顔をしながら、人のためにやってたりするから。

 

———何ですか、それいいですね。名言ですね。

 

松居: 太字、太字。北野武みたいじゃん(笑)

 

稲葉: 扱いも雑だけど、もっと大きい側で俺の事を見てくれてるから。(松居監督に伺うように)こんな感じで大丈夫ですか?

 

松居: (笑)

 

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———時間が迫っているようなので、まとめさせて頂きたいんですが、これは映画公開直後の記事になると思うんですけど、この映画を観てくれる男性の観客に向けての言葉ってありますか?

 

稲葉: 俺もまだまともに観られないっていう感じが正直あるというか。

 

———橋本さんも言われてましたね。映画と判断できないというようなことを。

 

稲葉: 男なんて要らないんじゃないかって思わせてくれますね。

 

松居: それ狙ってなくて、結果的なことで。「さよなら、男ども」ってコピーをつけられて、そうなんだって思って。全く考えてもないですね。そんなこと言うなよって思って(笑)

 

———ピッタリなコピーだと思います。じゃあ皆で作り上げたというか現象的なものもあるんですね。受身とはいかないまでも。

 

松居: 男性、女性はあまり考えてなくて。今回は、橋本さん、蒼波さん、大森さんが輝けば勝てると思ったんで。

 

———無神経な浩平への苛立ちがあってこその輝きですよね。

 

松居: 男が主張したら邪魔なんですよね。この映画では。

 

稲葉: 浩平、うるせーって結果的になれば(笑) ぶっ飛ばしたいタイミングで、橋本さんがぶっ飛ばしてくれるんで、割とお客さんは忘れられるというか。ある種のチグハグな部分は観た方が補完してくれると思うので。後付けですけど、浩平がゾンビで帰ってきたのは、こいつはさよなら出来なかったんだって感じだし。

 

松居: 何とでも解釈できるんで。

 

稲葉: 逆立ちにしても、松居さんの中では設定があるみたいで。

 

松居: 浩平は冒頭で失敗してるように逆立ちがあまり得意じゃなくて、最後、詩織が立ち去る時にやったらちゃんとうまくいって、なのに「なんだそれ」って詩織に貶されるみたいな。

 

———飲み屋で話したことがきっかけの逆立ちが浩平のストーリーになっているんですね。誰も気付かない裏設定かもしれないですね。

 

稲葉: 気付かなくていいんですよね。

 

———ゾンビは、ファンタジーパートでいいんですよね?(笑)

 

松居: ゾンビに見えました?僕はどっちでもいいかなって(笑)

 

稲葉: 撮影入る前に、松居さんに電話して、イメージとかありますかって聞いたんです。参照してほしい映画のゾンビとかありますかとか聞いたら、「そういうの要らない。お前のゾンビ持って来い」って言われて(笑)現場で、どっちなのか分からない稲葉友のままでいいよみたいに言われて。

 

松居: 浩平自体が、自分がゾンビかそうじゃないのか計りかねてる感じがよくて。

 

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———では、この映画は、2回観て頂いて、2回目は是非、浩平を注視して観て下さい、ということで。

 

稲葉: でも何回観ても、浩平が出てないシーンは、浩平のことを完璧に忘れられる映画だと思います。一瞬も思い出せないと思うんで(笑)

 

———(笑) 女性はもちろん、男性にも隔てなく届けばいいなと思いました。ありがとうございます。

 

 

作品情報 『ワンダフルワールドエンド』

 

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監督・脚本:松居大悟
音楽・劇中歌・主題歌:大森靖子(avex trax)
企画:直井卓俊 / プロデューサー:片平学、山本玲彦、紙上養一 、林武志
音楽プロデューサー:直枝政広
出演:橋本 愛、蒼波 純、稲葉 友、利重 剛、町田マリー / 大森靖子
製作:avex music creative inc.
制作プロダクション:CONNECTS LLC
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
©2014 avex music creative inc.

 

1月17日(土)〜 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

 

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