(撮影:木村高典 / 文・構成:川端哲生)
「神聖かまってちゃん」のドラマーとして有名なのはもちろん、近年、ご自身がリーダーとなっている「バンドじゃないもん!」の鈴姫みさことしても大活躍中。そのキュート過ぎる存在感で、バンドファンからアイドルファンまでを魅了する、まるで妖精さんのような方!本日のゲストはみさこさんです!!(根本宗子)
根本: 私、元々、異常にファンで。どうにか自分の劇団の公演にみさこさんを呼べないかと言い続けてるくらい只のファンなんです(笑)
みさこ: ありがとうございます。是非、公演観たいです。私、大学の時に劇団サークルに入っていて。
根本: え!そうなんですか?
みさこ: 脚・演したこともあるんです。役者志望ではなかったんですけど。劇は好きで、有名な劇団だと、大人計画とか好きです。
根本: 私も、大人計画が好きで演劇を始めたんです。ずっと中学の時から大人計画ばっかり観ていて。
みさこ: えー!羨ましい。私、知ったのが遅かったから、『ふくすけ』の再演の時に、この日だけは予定を空けなきゃいけない、映像でしか観た事ない作品が生で観れると思って、命懸けで予定を空けました。
根本: 来月初めて大人計画の方と共演するんです。
みさこ: どなたですか?
根本: 近藤公園さんです。超緊張します。
みさこ: すごーい。観に行きたいです。予定を死守しなきゃ。
根本: 是非。そういうわけなので、今日は本当に有り難い対談なんです。すごく聞きたかったんですけど、かまってちゃんの時は男性の中に1人だけ女性で、バンもん!は、女の子ばっかりじゃないですか、その違いってあるんですか?私は主宰として芝居を作る時に男の人とやるのが、すごく苦手で、いつもキャストは割と女の子が多いんですけど。
みさこ: グループ毎にテンションは全然違って、たぶん私がそんなに女の子、女の子してないからかもしれないですけど、男だから、女だから、という感じでそんなに違ったりはないですね。
根本: バンもん!は、年下の方が多いんですよね?まとめるの大変な時はないですか?
みさこ: みんな個性が強すぎるから、それはいいことだと思うんですけど、各々がちゃんと意見を言ってくれて、それを最終的に摺り合わせるのが大変な時はあります。最初、私がリーダー気質じゃなさすぎて、誰かを引っ張っていくというのが得意じゃないと思ったんで、逃げてたんですよ、リーダーになることを。だから、初期メンバーのかっちゃんが辞めてからは、リーダー不在でした。かっちゃんがリーダーだったのも、「私、リーダーやるから!」っていうんじゃなくて、Ustream の放送の中で、かっちゃんとパンスト相撲をやって勝ったのが、かっちゃんだったから、リーダーに決まっただけなんですけど(笑)
根本: (笑)2人だった時の山戸監督が撮ったPVのお芝居が素敵すぎて。
みさこ: 映像を撮ってもらう時って、意外とフラットになれなくて、ドラム叩いてる時だとステージ上の自分が出てくるから、素とはまた違うんですけど、その時のテンションが出てくるのかなぁとは思います。
根本: バンドをやって、アイドルもやって、次にやるなら何がやりたいですか?
みさこ: 私、劇がやりたいんです!以前、「Zipper」で連載をさせて頂いて、毎回ショートショートを書いていたんですけど、途中で自分は文才は無いなと気付きはじめて。お話を作るのは好きだけど、それを文章で表現するのは苦手かもしれないって。思ったより長く続けさせて頂いて、毎回読んでくれている方もいて有り難かったんですけど、お話を書くなら脚本の方がやりたいなと思って。誰かと一緒に何かそういうのをやりたいなって(笑)ステージに立つのは好きだけど、役者はサブキャラしかやりたくなくて。いい劇を作りたいけど、役者じゃなくて、裏方でも全然いいなって思っていて。脚・演でも音響でも制作とかもやってみたいんです。ポスター作ったり、チケット売ったりとかしたい。
根本: どれくらいやってたんですか?そのサークルは。
みさこ: 在籍してたのは実質2年間だったんですけど、なんだかんだお手伝いとかを在学中はしたりしていました。サークルはすごく掛け持ちしてました。
根本: 意外です。初めて知りました。その時からドラムもやられてたんですか?
みさこ: 劇団やりながら、軽音サークルにも入ってて。
根本: 多忙!
みさこ: 文化祭だけ多忙!みたいな(笑)複雑な話になるんですけど、私、1年生は軽音楽部にいたんですけど、2年生以降は軽音楽サークルにいたんですよ、別の。1年の時の軽音楽部は、通年バンドというのを組んで、それで1年活動して、イベント事には必ず出るって感じだったんですけど、サークルの方は、出たい時に出ればいいし、組みたい人と組めばいいみたいな感じで。その時はまだ教職を取ろうとしていて、自分のペースで出来る方がいいかなって選んだんですけど、毎回毎回、イベントに出まくってて、マリリン・マンソンも叩いたし、大塚愛も叩いたし(笑)1年生の時は典型的な邦楽ロックだったけど、サークルの方に移ってからは、本当にみんなバラバラで、時代的に栄えてないのに、GLAYやっていたり、布袋さんやっていたり、安定してレッチリ好きな人もいたし。私がやって2度と叩かないだろうなと思ったのは、ジミヘンとか(笑)でも、勉強になったので、あれはコピーして良かったです。
根本: 私、音楽も狭いところしか知らないので、洋楽があまり分からなくて、邦楽ばかりを聴いて育ったので。
みさこ: 私も基本はそうです。歌詞を重視するから邦楽の方が多いです。
根本: 大人計画が好きなので、ドラムと言えば、グループ魂の三宅(弘城)さんみたいな。すごい間違った基準で(笑)
みさこ: あー(笑)三宅さんは最初、ドラムじゃなかったのに凄いですよね。巧くて。かっこいいし、面白い。
根本: 私は映像も観るのは好きなんですけど、テレビだと規制が多くて出来ないことが多かったりして、最近ちょこちょこお仕事を貰うこともあるんですけど、「あれはやっちゃいけない、これはやっちゃいけない」とか言われて、すぐ喧嘩になるんです。結局、演劇が面白いなって思っちゃって。でも最近、同世代の人の演劇を観てて、演劇をやってるだけじゃ面白くないなっていうか、それこそグループ魂じゃないですけど、演劇をベースにしながら、違う事もやって、お客さんが楽しんでくれたらいいなって思って、色々やってみたりしてるんです。やらなきゃ良かったなって思うようなこともあるんですけど(笑)
みさこ:(笑)でも間口が広がりますもんね。
根本: この連載も、前回、プールイさんと対談させて頂いて、ちょうど自分の公演前だったので、それを読んで、プールイさんのファンが来てくださったりして、客入れ曲がBiSだったので、『nerve』を踊っている人がいるって、Twitterで呟かれたりしてて。そんなところにも繋がって有り難いなって思って。演劇みる人って限られてるので。
みさこ: 私もそれは良くないなって思ってます。
根本: どうにか普段観ない人も取り込めたらいいなって、いつも思ってます。
みさこ: ライブもたぶん同じで、みんながもっとお手軽になったらいいんだと思うんです。それを変えたいって、音楽については思ってます。
根本: 人を家から出すのって難しいですよね。
みさこ: 難しい。Twitterのフォロワーさんが3万人になるんですけど、の子さんみたいな奇抜なものを求める人が私をフォローすることはなくて、真面目に私のことを気にしてくれる方しかフォローしてくれてないと思うんだけど、実際にCDが3万枚売れてるかというと、そういうわけではないし、お金がないとか、後から買おうとか、そういう人も絶対いるとは思うんだけど、そういう人達に気軽にCDを買ってもらったり、気軽にライブに足を運んでもらうためにはどうしたらいいかなって、思ってます。
根本: 一大イベント感がまだあるんじゃないですかね。ライブに行くことに対して。
みさこ: ライブも本当に来てほしい。バンドじゃないもん!は、アイドル界でミクストメディアって言われてるんですけど、汐りんが洋服を作っていたりとか、ちゃんももがタレントとして活動してたりとか。そもそも楽器を演奏することと踊ったりすることも違う文化だと思うんですけど、そういうのを壊せたらなって思って。
根本: ファン層は違うんですか?
みさこ: 違いますね。かまってちゃんが好きで、バンもん!も見に来てくれた人ももちろんいるんだけど、そういう人が推しは、ぐみちゃんになったりとかして、それが私的には嬉しくて。バンもん!で楽しもうとしてくれてるんだなって。テラスハウスにも出てたちゃんももは、テレビを見る人はなかなか現場に来てくれないので、それで悩んでて。ちゃんもものステージングは、テラハで見れない熱量があるから、是非、観てほしいんです。全然、別物だから。
根本: 去年、キネマ倶楽部に2日間続けてかまってちゃんのワンマンと、バンドじゃないもん!とでんぱ組の対バンライブを観に行ったんですよ。お客さんの乗りが全然違うんですけど、どっちが良かったっていうのは全然なくて、2日間まったく別のライブを観た感覚で、それがすごく楽しくて、その時に自分のブログにも書いたんですけど、演劇を2日間続けて観ても、なかなかそういう体験できることがなかったので、変な話、チケット代は大体同じくらいなのに、ここまで楽しませる事が出来てるかなって思って、すごく刺激になったんですけど。
みさこ: わー。嬉しいです。そこまで思ってもらえるなんて。
根本: 記録として映像には残してはいるものの、生でみないと面白くなかったりして。大森靖子さんが「演劇は効率が悪すぎる」と言ってたんですけど、「1ヶ月も稽古して、1週間しかやらないんでしょ」って(笑)確かになーって(笑)
みさこ: それが私が演劇をずっとは続けられなかった理由です。やっぱりそこに戻りたいなってずっと思ってて。仕事も休んで、毎日毎日稽古して、公演したらライブ来てもらうのと同じくらいの値段だし、でも箱は全部押さえなくちゃいけないし。
根本: 短い公演期間中に予定を合わせて頂くのは難しいし、再演はなかなか出来ない。
みさこ: 暗転した時の臨場感を味わってもらえないのは残念ですよね。
根本: それをなんとか打破したくて、2年くらい前から四ッ谷にある小さいバーで、2ヶ月とか同じ演目を土日だけやるというのをやっていて。ももクロが流行りだした頃で、「週末ヒロイン」と同じことが出来ないかなって思って(笑)週末だけ2ヶ月ずっと同じ演目をやっていれば、観てもらえる幅も広がるのでやってみたりはしているものの、やっぱりその瞬間にしか観れないという問題はどうにも出来ないっていうのはあって。
みさこ: そうなんですよね。難しいですよね。
根本: 1ヶ月間くらいの長い期間、公演出来るぐらい売れるしかない(笑)
みさこ: それな〜(笑)それな〜(笑)
根本: (笑)
みさこ: まず売れなきゃいけないっていうのが、一番難しい。売れてれば、宣伝できるから知ってもらえるけど、結局のところ、まだ売れていない人がどうやって知ってもらうというのが課題ですよね。いまだに、神聖かまってちゃんのドラムと、バンドじゃないもん!のメンバーが同じ人だって知らない人がすごくいるので。そもそも新しいアルバムを出したことがそこまで知れ渡ってるわけでもないし。テレビ向きではないというか、そういうイメージが付いちゃったのかもしれない。
根本: 私は発売日に買いました(笑)
みさこ: ありがとうございます!(笑)知ってもらうのが一番難しい。
根本: 難しいですよね。
みさこ: どんなにいいものが作れる自信があっても、それをどうやって人に伝えるかが永遠の課題ですよね。それを考えることが中身を考えることと同じくらい必要。
根本: 作ってる期間、私の場合は稽古をしている期間ですけど、作ることに一杯一杯になっちゃって、それを考える時間がないうちにもう幕が開いてしまうみたいな。
みさこ: あとはファンの人達に出来るだけ協力してもらうっていうのを思ってて。アイドルさん全般に言えるんですけど、需要と供給が本来のアートのあるべき姿になってる。いいものを広めてくれるっていう形が出来ているというか。これはアイドルだけに限らず、そうなってくれたらいいなって思います。自分がいいなって思ったらそれで終わりじゃなくて、広めようと思えば、今は一個人が誰でも広められる環境にあるので。バンもん!を始めた時には、そういう思いはなかったんですけど。
根本: きっかけは何だったんですか?
みさこ: 最初はアイドルじゃなくて、ギャルバンをやりたかったんです。女の子と協力して、何か一歩一歩努力をしながら、着実に人に認めてもらいたいなっていうのがあって。かまってちゃんは元から良いものがある中で、チャンスに恵まれて、押し出されるように知ってもらう形だったので、それは有り難かったんですけど、自分で努力したって感覚がそこまで無くて。バンもん!ではそれを実感したいなっていうのがあったんです。プラス、女の子と協力しながら、礼儀正しくやりたいなっていう(笑)バンもん!って、バンドと一緒っていうか、自分達で何をしたらどうなるかを考えながらやってます。だから意見がぶつかったりもするんですけど。
根本: みんなが意見を出して、個々に主張があるのはいいですよね。
みさこ: そういう形になればいいなって思ってたんで。あとは、それを摺り合わせるのが私の役目っていうか。
根本: 私が普段一緒にやる人は、割と意見を言わない人が多くて、思ってることはあるし、何かがあった時に話せば出てくるんですけど。基本は自分が思い描いたものをやってもらうことの方が多いので、例えば、10人なら10人を1ヶ月間引っ張り続けることに折れそうになる瞬間があるんです。
みさこ: それこそ、大人計画さんの『ふくすけ』の再演を観た時に、キャストが違うのに、キャラの色は前と同じなんだなって、それって勿体ないなって、私は思っちゃったんです。
根本: すごく分かります。私は客演として役者だけもやらしてもらってるんですけど、再演の芝居に呼ばれる率がすごく高くて、新作じゃないなら前に同じ役を演じた人がいるので、同じ事はやりたくないし、どうにか違うラインで私がやるから面白いってことをやりたいんです。でも、そう思う役者の方って意外と少なくって。それが良くもあるんですけど、私みたいに我が強すぎるとうまくいかないこともあるので。
みさこ:(『ふくすけ』の再演での)大竹しのぶさんのインタビュー読んでいて、「何を考えてるか分からないキャラクターだから難しい。行動は起こすんだけど感情を吐露してる場面がない」みたいなことをおっしゃってて、大竹さんがそういうキャラクターをやるとそうなるのかと思って、なるほどなと思いつつ、勿体ないなって思ったんです。それこそ、その時にしか見られないをもっともっと作ってもいいのかなって思いますね。劇だと難しいのかもしれないですけど。
根本: 男優さんの方が巧い人が売れるなっていう感じが私はしていて、女優さんの方は、その人ならではの面白さがちゃんとあればいいような気がします。私が女だからかもしれないですけど。私は基本、当て書きなので、出来ることだけ女優さんにやってもらって引き出せればいいというか。再演する時に誰も代わりが出来ないキャラクターを書きたくて、その人じゃないと出来ないような。もちろん自分が正しいわけじゃないですけど、他の劇団もそういうことを多くやっていれば、演劇を観る人が増えるんじゃないかなって。初めて観るものが面白ければまた観てくれると思うので。
みさこ: 1回観てくれる人は、少なくとも一度は足を運んでくれた人ですからね。
根本: そうですね。逃したくないですね。宣伝方法も(かまってちゃんとバンもん!では)違うんですか?
みさこ: かまってちゃんは、インターネットでの露出がメインで、だからそうじゃないところに出た時にギャップが面白いって感じてもらえてると思うんです。バンもん!はTwitterがメインかな。詳しい事はブログできちんと考えてることをみんなで書いたりしてますけど。
根本: ブログを書くのは好きですか?
みさこ: 私は宣伝活動がそもそも好きじゃないんです。Twitterでのファンとのコミュニケーションは有り難いし、励みになるけど、いわゆる自分を曝け出す作業というのは表現の中でだけでいいという考えだったので、すごく苦手でした。でもそれじゃいけないなって思って。
根本: Twitterもじゃあエンタメ要素と言えば、エンタメ要素ってことですか?
みさこ: お客さんとコミュニケーションは取るようにしてます。リプもちゃんと返すようにしてます。
作・演出:岩松了
東京公演
大阪公演
名古屋公演
神奈川公演
⇒詳細は[公式WEB]にて
神聖かまってちゃん『英雄syndrome』
10月14日(火) 広島 CLUB QUATTRO
⇒詳細は公式サイトにて
2018.08.31
Collaboration Talk Series vol.7 tofubeats...
2018.05.17
Collaboration Talk Series vol.6 犬童一心 × 沖田...
2018.01.25
Collaboration Talk Series vol.5 前野朋哉 × 吉田...
2016.11.04
Collaboration Talk Series vol.4 志磨遼平 × 山戸...
2015.12.11
Collaboration Talk Series vol.3 横浜聡子 × 松居...
2015.06.06
Collaboration Talk Series vol.2 三浦直之 × 豊崎...
2018.08.31
Collaboration Talk Series vol.7 tofubeats...
2018.08.31
『きみの鳥はうたえる』 石橋静河 & 三宅唱監督 インタビュー...
2018.07.06
『君が君で君だ』 大倉孝二 & 松居大悟監督 インタビュー...
2018.05.17
Collaboration Talk Series vol.6 犬童一心 × 沖田...
2018.05.09
『四月の永い夢』 朝倉あき & 中川龍太郎監督 インタビュー...
2018.01.25
Collaboration Talk Series vol.5 前野朋哉 × 吉田...
2017.11.01
『南瓜とマヨネーズ』臼田あさ美 & 太賀 & 冨永昌敬監督インタビュー...
2017.10.06
『月と雷』 初音映莉子 & 高良健吾 インタビュー...
2017.05.05
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』 石橋静河 & 石井裕也監督 インタビュー...
2017.02.24
『退屈な日々にさようならを』 カネコアヤノ & マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)...